第18話 Reckless Adventurer Ⅱ
『旦那様は先程、お嬢様が仰っておられたように、もう既にこの世にはおられません』
『ですが、お嬢様はそんな旦那様の御意志を、過去を知らずともちゃんと受け継ぎ、立派なハンターになられたと思っております。ですから、その涙をお拭きになって下さい』
爺はそう言うと1枚のハンカチを渡した。真っ白く汚れの無いハンカチはクリスの涙を満足そうに吸い上げていた。
既に太陽は頂点を超え西の空に傾きつつある。窓から入る日差しは部屋を明るく照らしている。
その暖かい日差しに少女は目を向けて1人で今は亡き父親の事を思い出していた。
少女は自室に籠もり必死に書類を書いていた。勿論の事だが自身が引き受けた
-・-・-・-・-・-・-
それは昼過ぎの事。捕縛した3人の身柄と共に送られてきた、魔獣の
その為に少女は爺の話しを聞いた後で、
「はーい、もしもーし。忙しいから緊急じゃなければ後に……」
「ちょっとアンタ!一体どうなっているんだいッ!!」
忙しさのあまり誰から掛かってきた着信かは確かめず話し始めた、
少女は正直なところお怒りモードのマムの声にビビっていた。然しながら少女にはマムをご立腹にさせている心当たりが無い。
「えッ?マム?え、えっと何の事?」
「「何の事?」じゃないだろアンタ!あたしゃ朝は着信で起こされてその後の報告はな~んにも無い」
「それにドクから連絡が来てまだ報告書が上がって来てないから魔獣の処理が出来ないだの、イグスタ市の保護施設からは
「そ~ん~な~の~知るかあぁぁぁあ!!!!がっしゃーん。ふーっふーっふーっ』
マムは早口で
そんなマムの荒ぶりに少女は一言「ゴメンナサイ」と言うのが関の山だった。さすがに「どーどーどー」とは言えなかった。
ホウ・レン・ソウはいついかなる時も大事という事を、改めて理解させられた少女だったと言える。
だけども「てへっ」とかは敢えて言わない。
「さてと、スッキリした所で、報告書はどうすんだい?」
「うぇぁ!うん、それなんだけど………」
マムの話し方は元に戻っていた。少女は事情を説明する為に、
「分かった。報告書は後日で構わないから、今はその内容に沿った形でこっちで適当に対処しておく」
「素材の取り分はアンタからドクにちゃんと伝えておかないとアンタの分は余り物だけになるから早くなさいな。それじゃあね」
「あ、あのねマム。ちょっといいかしら?」
「ん?神妙な声だけど何かあったのかい?」
「えっと、その、凄く言い辛いんだけど…
「炎龍うぅぅぅぅぅぅぅ?」
深刻そうな少女の声に多少なりとも心配になったマムは、切ろうとしていた通話を切れなくなり少女から突拍子もない単語を聞かされた。
そのせいでマムの声は裏返りその奇声は公安に響きわたったという。
炎龍ディオルギアは通常の「
そもそも
拠って
それら「
分類上の「
また過去から現在に至るまでの間に最上位と上位の
然しながらもしも仮に討伐対象となったとしても、
ちなみに下位の
「今のところ、炎龍ディオルギアについてのクエストは上がって来てないが、その話しは本当に信用に足るモノなのかい?」
「うん、多分だけど、おそらく間違いないと思う」
「アンタねぇ、あたしゃ思うんだが、「多分」やら「おそらく」やら、「思う」やらじゃ、信憑性ないって言ってるようなモンだよ?」
「あはははは。うん、ごもっともです」
最低でも「
拠って国を上げて早急な対処が必要になる。
従ってこの神奈川国に於いて国家元首であるマムにそんな大事の話しがあるならば、入ってきていないのは可怪しいという結論に繋がる。
「国内で話しが上がっていないなら恐らく、発生しているのは、周辺国家の山梨国か静岡国だと思うわ。だからマム!
「そもそもその
「それもそうなんだけど、その、なんて言えばいいのかな?」
「なんだいなんだい、シャキっと話しなさいな!」
「クリスの話しに拠ればどこの国とも関わっていないみたいなの。だから正確な村の位置は地図には記載されていないのよ」
「獣人種特別なんたらってヤツかい?全く難儀なモンだねぇ」
これが通話だった事からマムがどんな表情をしているか少女には分からないが、恐らくは苦々しい表情を作っていそうな事だけは理解出来た。
それくらい今回の件は、
「だけどそれならば、
「だけどもし近隣諸国から
つーつーつー
「あ、マム!切られちゃった。でもま、いっか。近々公安に行くからその時でも」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます