第16話 Lonely Sufferer Ⅳ
着信はイグスタ市の保護施設からで、内容は「クリスの行方が今朝方から分からない」というものだった。少女はその連絡を受けて急ぎセブンティーンをかっ飛ばし、大急ぎでイグスタ市に向かっていった。
キキーッ
「ねぇちょっと、どういう事?」
そこには昨日対応してくれた受付の女性がおり、直ぐに詳しい話しを聞く事が出来た。
その話しを聞き終えると少女は再びセブンティーンに飛び乗り、エンジンを低く
クリスは保護施設の者が部屋に朝食を持っていった時には既に、部屋からいなくなっておりそこには書き置きがあったそうだ。それを見付けた者はその書き置きの文字が読めなかった事から、急ぎデバイスで確認したところ「世話になった」とだけ書いてあったと言っていた。
そこで大急ぎで少女に着信を入れた。……という流れだったようである。
少女は急ぎセブンティーンを
そこで報告も兼ねてマムに連絡を取る事にした。
「なんだいなんだい?こんな朝っぱらから一体どうしたんだい?」
「マム、昨日のケンカの仲裁で保護した
「あの人は言葉が通じないから、何かあれば直ぐにトラブルになってしまう。だけど問題をこれ以上起こさせるワケにはいかないの。なんとかならない?」
「はぁぁ。アンタはそれでも星持ちのハンターなのかい?そんなの自分1人の力でなんとかおしッ!」
「それともまだガタガタ言うなら星を奪うよ!あたしゃ眠いんだッ!」
がちゃッ つーつーつー
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
少女は
深く溜め息を吐きたかった。 / 否、既に深く吐いている
だけど取り敢えずそんな時間は無い。 / 否、既にし終わっている
そんな時間があるなら有意義に使うべきだ。 / 否、既に無意義に使った後だ
結局のところ必死に考えるしかなかった。
『やっと見付けたわよッ!』
『こんな所にいたのね?ホントに探したわよ、クリス』
少女は根性でクリスの事を見付け出し、言の葉を紡いでいった。本当は嫌味の1つでも言いたかったが、焦りやら疲れやら喜びやらでそれは吹き飛んでいた。
少女はブーツを使って空から探した。セブンティーンは自動走行で走れる場所を探させた。
更には帰巣本能で屋敷に戻りデバイスの中でカードに戻っていた
要するに
結果としてそれが功を奏し、クリスを無事に発見し今に至る。
クリスはイグスタ市郊外の小高い山の上に
それを発見したのは空から探していた少女だった。
『何で1人で勝手に出ていったの?今日ちゃんと手伝うって言ったじゃない。忘れたの?それともアタシが信じられない?』
『すまない。これ以上、貴殿に迷惑を掛けたくなかった』
それから
2人の間に重たい空気が流れていく。
『クリスの村で何が起きたの?教えて貰えないかしら?』
『貴殿の迷惑になるかもしれないからあまり言いたくはないのだがな……。だが、仕方ない』
『あれは今から約1ヶ月前になる。此の身が村の狩り場から帰ると村は一面、焼け野原になっていた』
『辺りには同朋達は1人もおらず、何が起きたのか分からなかった』
クリスの長く長い語りを所々割愛し要約するとこんな感じになる。
・クリスの住む村は約1ヶ月前に何者かに襲われた
・クリスが生き残りを探すと近くに生き残りが隠れていて、その時の詳細を教えてくれた
・詳細によると
・それからその
・村の生き残りは過去に村を救ってくれた者に、「もう1度助けて欲しい」と頼もうと考えた
・その者を探す役割をクリスが担う事になったが、手掛かりは何1つとして無い
・そして約2週間かけてこの地に辿り着いた
と、そんな感じの内容だった。
少女は手掛かりが何も無いクリスに対して、1つだけ確認の為に聞く事にした。
それは手掛かりが
『ねぇ、過去にクリスの村を助けた人は何から村を救ったの?』
『魔獣?災害?それとも……』
少女は村を救った「誰」かを調べるなら、その「誰」かの名前が分からないなら、その村を襲った「事件」や「事故」
『
その愁いを帯びたクリスの口から紡がれた言の葉は、クリスに対して掛ける言葉を失わせていた。
暫く経ってから少女はクリスに『付いて来て』と話すとブーツに火を
クリスは背中の翼を羽ばたかせると宙を舞い、空を飛び少女に付いていく事にした。
少女は自分の屋敷までクリスと共に空を行きながらも、言葉を何1つとして交わさないままだった。
そして屋敷に着くとそのまま屋敷の中に入り、やはり何も言わないまま地下へと降りていく。クリスは見ず知らずの屋敷に勝手に入った上に、しかも堂々とその屋敷の地下に降りていく少々に対して
しかし、『ここは、アタシの屋敷だから』と言った少女の言の葉に驚きながらも納得し、黙って後に付いていった。
『ここよ。これがクリスに見せたかった物よ』
屋敷の地下にある一室。その部屋の地面には家具の一切も置かれていない。
部屋自体はそこまで広くはないが綺麗に掃除が為されており、何も無い部屋の正面の壁に一振りの刀だけが掛かっている。
少女は部屋に入り壁に掛かっている一振りの刀を手に取るとクリスに渡した。
クリスは渡された刀を手に取ると、『これは?!』と驚いた表情を見せただけだった。
『その刀は
『そして、何よりもその刀は
『な、なんとッ!?』
『やっと、やっと、やっと、村の救世主に会う事が出来る』
『これで同朋達の生命が救われる!』
クリスは少女から渡された刀を抱き締めたまま、その場に崩れ落ちていった。クリスの髪と同じ色をしたその瞳からは、涙が溢れ頬を濡らしていく。
『貴殿のお父上様に会わせて頂きたい!』
少女はこうなる事を当然の事ながら予想していた。だからこそ「真実を隠したままではいけない」と考え、希望に瞳を輝かせているクリスに対して残酷な言の葉を紡いでいく。
『父様は4年前にとある
『そ、そんなウソだッ!』
『それじゃあ、村はッ、同朋達の生命はどうなるッ!?』
『此の身は村の救世主を連れて帰ると約束したのに、同朋達を見殺しにしか出来ないのかッ』
少女から告げられた衝撃の真実に対しクリスはその内容を信じられなかった。
何故ならそれは同時に故郷と同朋の両方を
「お嬢様?この様な所で一体何を…ん?おや?お客様と御一緒でしたか?」
『これはこれは珍しいお客様で御座いますね。
「あれ?爺?」
『貴殿よ、あの執事の男は何者なのだ?何故、此の身を見ただけで
『あ、うん。それはある程度の知識があれば分かる事よ。ってかアタシも最初からクリスが
『それでは何故、あの者はそれ無しで此の身の郷里の言葉を話せるのだ?』
クリスは少女のバイザーを指差していた。
そう言えば昨夜の
今まで不思議に思った事もなくて聞いた事も無かったが、言われてみれば不思議な事と言える。
然しながら一方で爺の乱入は、半ば取り乱し掛けていたクリスに落ち着きを取り戻させていた。
「今度時間があったら、そこんトコを爺に聞いてみよっかな」
「でもはぐらかさないで教えてもらえるかしら?」
少女はクリスを連れて広間に来ていた。先に戻っていった爺は、紅茶を入れ
『では、昔話を致しましょうか』
2人が席に着くと爺は開口1番そう紡いだのである。
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