第14話 Lonely Sufferer Ⅱ
この男は神奈川国のマフィアの構成員であり、今回はそこのボスから、
「あ、アネさんがでっけぇ犬っころに刺されて、地面に落ちた後、アネさんは急に立ち上がったんでさ」
「立ち上がると、何て言ってたかは分からなかったんすけど、変な雄叫び?みたいなのをアネさんが上げて、それから犬っころ共の様子が可怪しくなったんでさ。なんか、ビビってる?みたいな感じで」
「ふぅん、それでそれで?」
少女は自分が「死んだ」時から先程目が覚めるまでの記憶が全く無い。だからこそ記憶が無い間の事を知りたくて話しを聞いていた。
「そしたら急にアネさんの手から何かがにょきにょき生えてきて、よく見えなかったんすけど、アネさんが消えたら、でっけぇ犬っころが真っ2つになったんでさ」
「分かってもらえやしたか?」
「うん、サッパリ。えへっ」
少女は黙って男の話しを聞いていたが、話しの内容はさっぱり分からなかった。まったく理解できる内容では無かった。
「もう少し
然しながらどうやら、
何かが自分の手から
そして、それを認めてしまうと自分が
なんて言うか存在証明がなくなる的な感じとでも言えば伝わるだろうか?
結果として少女は「なんか自分でもよく分からない力が自分の中にはあるのだろう」と割り切る事にしたが、そんな意味不明な力は怖い以外のナニモノでもない。だがそんな意味不明な力のお陰で、「致命傷を負ったにも拘わらずこうして
「と、ところでこれから、あっしはどうなるんでさ?」
「ん?いまさら?そっか、そういえば言ってなかったわね。じゃ、見せてあげるッ」
「えぁ?」
「アタシは公安から来たハンターよ。今日ここで、さっき行われようとしていた闇取引を押さえる為に来たの。これで分かったかしら?」
生命をギリギリのところで救われた男は、少女の言った
ハンターとはライセンスを取得後にそれを所持しており、「公安」か「ギルド」のどちらかに所属している者を指し示す。
・ハンターは所属している所から
・「公安」と「ギルド」では
・「公安」に所属するハンターは常設報酬として月額の給与と宿舎が与えられる
→その為に所属するハンターの生活は安定してると言える。
・「公安」の
→
・「公安」のハンターには1ヶ月当たりの
・「ギルド」は所属するハンターに常設報酬を一切支払わない
→その為に所属するハンターの生活は不安定である。
・「ギルド」の
→過程に於いて
・「ギルド」に所属するハンターに
・「公安」「ギルド」共に素材の買取額に差はない
これらのハンターへの待遇以外に「公安」と「ギルド」の違いは山程ある。然しながらその中で1番大きい事は、組織としての「公安」は国としての三権(司法、立法、行政)の全てを保有しているという事である。
拠って「公安」のハンターへの
その結果ハンターに捕らえられた犯罪者は、「公安」の中にある「司法」が裁く事になるのだ。
即ち今回捕縛された3名は通称「公安送り」と呼ばれ、それぞれの罪状が明らかにされた上で刑罰に処せられる事になる。
結果として犯罪者達は裁かれるのが決定しているが、その一方で密猟に遭った被害者達の対応はそう簡単にはいかない。
男からの聴取が終わると少女は現在時刻を確認した。時計は「3:13」を示している。間違っても午後では無く午前である。
従って今は真夜中と言える。
「今日は
「あぁぁ、眠いよぅ。お腹空いたよぅ」
現在時刻を見て少女は
だからそこからの少女の行動は非常に迅速だった。先ず夜中ではあるが、屋敷にいる爺に連絡を取り自分が
更にはついでに捕縛した3人を、公安まで連れていく段取りも取ってもらう事にした。
最後に自分が
「さてと、これでこっちは大丈夫そうね?」
「後は、アタシが眠気に完全に飲まれる前にやらなきゃね。ふわぁ」
少女は少し疲れた気がしていた。ずっと気を張っていたからかも知れない。だからこそ少し休みたかった。少し休むどころか直ぐにでも寝たかった。
柔らかいベッドに今すぐ埋もれて、
だが一方で
だから
そんな事はさておき、少女は自分の側にセブンティーンを呼んだはいいものの、気を失っている被害者の獣人達を起こすべきか迷っていた。
屋敷に連れて帰る途中で起きて暴れられても困るし、獣人種の個体差を鑑みれば狭い車内で暴れられた時に確実に制圧できる保証はどこにもない。
それに事故を起こす可能性だってある。
一方で気持ち良さそうにスヤスヤと眠る姿を見ていると羨ま……ではなく、ここまで辛い思いをさせられ連れてこられたのだろうから、
然しながら前者の意思を尊重し先ずは説得という考えに至った事から、被害者の女の子達に近付き声を掛ける事にした。
寝ている2人に声を掛けても中々起きず、起こすのを半ば諦めようとしていた時に2人の内の1人の目が覚めたのだった。
先に起きたのは
『こ、ここは、どこですか?』
『サラをおうちに帰して下さい!い、痛い事をしないで下さい!』
その見た目にはまだ幼さが残っており、声からはあどけない様相が見て取れた。
そして話す言語は
『アタシはハンターよ、サラちゃん。アナタを保護したの。ところでどこか痛い所はない?』
『は、はい、大丈夫…です。あ、あの、サラはおうちに帰れるんですか?お母さんに会えますか?』
『それならば良かったわ。うん、そうね。サラちゃんのこれからの事は明日になったら話しましょう。だけど今はもう怖い人はいないから安心して』
『はい……』
『いい子ね。まだ眠いかしら?サラちゃんを保護する所に着いたら起こしてあげるからそれまでそこの車の中で安心して寝てて』
サラはそれに従い少女に促されるままセブンティーンの後部座席に入り、再び丸まってスヤスヤと寝息を立てていた。
「後はこの子だけど、どうしようかしら?」
「なかなか強情なコね。どうやったら起きてもらえるのかしらねぇ?」
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