第7話 Midnight Strangers Ⅰ
現時刻………22:00
場所………アワキア町郊外、エサガイーム湖周辺
「遅いいぃッ!」
「もうッ!とっくに時間は過ぎてるじゃないッ!とっとと始めてくれないかしら?」
「こんな所で潜んでる身にもなって欲しいものよねッ!」
少女はどうやらご立腹の様子だ。マムから貰った依頼書には「18:00頃に、この地で闇取引がある」といった告発文めいた内容が書かれていた。それ故に、イグスタ市から急ぎセブンティーンを
しかし更にそれから
周囲には魔獣の気配もある。気温はそこまで下がっていないがそろそろ肌寒くなる季節でもあった。
そして何よりもお腹が空いていた。
少女は魔獣対策はちゃんとしていた。だが寒さ対策や空腹対策は実施しておらず、それがより一層少女をご立腹にしている。
少女は
ちなみに、
「ガセだったのかしら?」
「はぁ、ちょっと寒いな。はぁ」
セブンティーンは魔術的結界を幾重にも張り巡らせて近くに隠しておいた。闇取引の為に来た者が気付かないようにする為の対策と言える。
その結果として少女は肌寒くなるこの季節に単身で外にいるのであった。
「ガセならガセで帰りたい」
「お腹すいたなぁ。それにお布団が恋しい…。ふわぁ」
少女の泣き言である。だがそうは言っても帰る事など出来はしない。
公安のハンターとして受けた
「あの時マムに他のクエストの
「なんで、あの時あんなコト言っちゃったんだろう?もう、アタシのばかばかッ!」
後悔先に立たず…だ。少女は無為な時間経過という
空腹感か寒さのどちらかでも解決出来ていたら
「このまま朝まで
「もう本当にこてんぱんのぼこぼこにしてやるんだからねッ。覚えておきなさいよねッ!」
少女は
状況が変わったのはそれから1時間が過ぎた頃だった。少女が潜んでいる辺りを人工的な光が照らしたのだ。
その光は最初、付近の峠をハイビームにして走っていた。だがそもそもの話しだが国の方針で夕方以降は外出規制がある。
その為に
更にその不審車は少女が潜んでいる場所に近付いて来ていた。だが残念な事に不審車は停車した後もハイビームにしたままでそこに留まっていた。
拠って車内の様子は
付近に棲息している魔獣を警戒してなのか、それとも取引相手がこの場にいない事を警戒してなのかは分からない。
しかし誰も不審車から降りて来ない様子だった。
少女は何もアクションが起きない事から車のナンバーを念の為に確認していく。光の加減でナンバーが見辛いが下手に動いて逃げられてしまっては、元も子もない。
もしも仮にこのまま何も起きず車が立ち去ったとしたら、「後日調べる為の情報」としてナンバーを控えるのは至極当然の保険だ。
でもまぁ実際のところ
そして動きがあったのは車が停車してから十数分が過ぎた頃だった。
がさがさッ
「よぉう、待たせたなあ?」
ハイビームで照らす不審車の前に誰かが現れ声を投げていた。多少、変な
だが念の為にバイザーは翻訳機能をオンにしておく。
現れた影は2つ。光の加減でかなり分かり辛い。
しかしその影の内の1つは大きな袋を左右の肩に1個ずつ担いでいるような様子が少女からは見えていた。
然しながらハイビームに照らし出されているシルエットを見る限りでは、ヒト種には到底思えなかったのだった。
何故ならば頭の
少女はそのシルエットを見て、取引相手の片方は獣人種であると結論付けた。
何故ならばヒト種や亜人種で尻尾を持つ種族は、
頭の
そう考えると該当するのはやっぱり獣人種のみだ。
逆に不審車の中にいる者達の姿はまだ見えていない。その為に目の前で行われていくであろう取引が、一体何の取引かはまだ分かっていなかった。
「獣人種と取引する種族って一体どんな種族なのかしら?」
「それにあの肩に担いでいるのが取引されるブツだろうけど…一体?」
然しながらこちらは特徴的なシルエットが何1つ見えない為に、人種までは分からなかった。
「取引の時間を
「それにこんな時間だ、仮に目を付けられていてももう帰ってると思うしな。はっはっはっ」
スーツケースを持っている者の横にいる者が、なにやら話している様子だ。その声を聞く限りでは男性であり、聞こえて来る言語の中に変な訛などがない事から恐らくはヒト種が取引相手と理解出来た。
更には会話の内容から察するに違法な薬物か、人身売買の類だろうと少女は
一方で少女は話しの内容に対し「もう公安は目を付けているし、アタシはここでずっと待ってたのよ!」と心の中でツッコミを入れてたが、それは飽くまでも余談である。
「そぉんなコト、こっちはどうぉでもいいさ。貰えぇるモン貰えれば問題は
「まぁ、それはこっちも同感だな」
「だぁが、平気なのか?こんな時間じゃ、魔獣達の
「なぁに、ここら辺を
「逆にそんなのが出て来たら返り討ちにしてやるさ」
取引相手同士の会話。確かに
若しくは武装がなくても銃火器さえあればなんとでもなる。
だが少女はその会話の内容に、
「
「ちょっと何言ってるんだろ?さっきいたのはそんなのじゃなかったわよ?」
「ま、アタシとしてはそいつらが出て来ないコトを祈るだけだけど……」
少女は聞こえて来る違和感だらけの会話の内容を聞き、本人達にツッコミを入れたくなっていた。何故ならばここには
「コイツ、凄く高い確率で
「まぁ、実際にそんな魔獣が昔はいたのかもしれないけどね。でも自業自得には変わりないわ」
少女は呟きながらも、
どうせなら一網打尽にする手段を講じたかったと言える。
男達の
獣人達はその言葉に渋る様な態度を示していた。だが、ガンとして「先に見せろ」の一点張りで言い放つ、不審車の男に根負けした様子だった。
拠って担いでいた袋を2つとも地面に置くと、両方の袋の
「約束通りちゃんと
「注文通りでボスもお喜びになるハズだ」
そんな言の葉が少女の耳に入って来ていた。更にはその聞こえた言の葉に少女は、激しい怒りを覚えた。
何故ならこの闇取引は
今やこの惑星には様々な種族の者達が住んでいる。2種類(
先のクリスが属する
然しながらその全ての種族が好戦的であったり、戦闘に於ける
それ故に密猟に遭いやすい。
そして更に付け加えるならば、
それなのに密猟は起こる。
一般的に密猟の大多数の被害者は、若い獣人種の女性だ。
少女にとってその事は同じ女性として当然の事ながら許せない事だった。
取引された若い女性達がどのよつな事をされているかは実際に見た事があるワケでは無いし、どのような待遇なのかも分からない。
だからこそ少女はこれ以上放っておく事をせずに、ここで動く事を決めた。
だがここで、話しの流れは妙な方向に向かっていった。
少女は動く事を決めた矢先に出鼻を
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