ある神のお話 2
こちらに来て、色々と学んだ。
そして、創造主によって違う者が掛け持ちしていた星を割り振られた。
創造主の元で学びながら、星の様子を見守る。
創造主は、皆等しく愛していた。
人間だけではなく、全てのものに。
なので、なにかを特別扱いする事が無い。
故に、時に残酷にも見えた。
一人で管理出来るようになれば、星を何個か割り振られ、”天使”と呼ばれる幼い頃にこちらへ来た者に教授を行う事が出来、一つのグループが出来る。
意外にも沢山する事が有って驚いたし、本当に楽しかった。
また、自然の理に反して自分の感情が天候として出てしまうので心の管理は気を付けなければならなかった。
自然を邪魔してはいけない。
元々、そんなに喜怒哀楽の激しい方では無いので殆ど自然のまま天候に任せている。
人の汚い部分も、綺麗な部分も見ようと思えば見れた。
見ないようにする事も出来たのだが、出来るだけ色んなものを見た。
創造主がどうしてそうなったか分かった気がするからだ。
だが、いつまでもその域に達することは出来ない。
仕事は楽しいが、いつだって何かを贔屓しようとする自分を律する事に少し疲れてしまっていた。
すると、地球という星に面白いものが有った。
それはゲームと呼ばれ、人間が作り出す最高峰の代物だ。物語や音楽、絵が動き自分自身で息を吹き込む沢山のエンターテインメントが凝縮したかの様なそれに夢中になった。
休みの日はひたすらにゲームをした。
そして人間の考えた”乙女ゲーム”というものに、すっかりハマってしまった。
時に感情移入しては怒ったり、泣いたり、笑ったりした。自分にこんなにも感情が有った事に驚いた。
誰を贔屓しても、良い。
何よりもそれが嬉しかった。
だが、公私混同はいけないと仕事には持ち込まない様に感情をコントロールした日々を送っていた。
そんな時だ。
「近くに越してきたアズノエル男爵が娘、サラと申します!今日こそは一言物申させて頂きます!
乙ゲー乱立し過ぎて世の中おかしな事になってるんですけど!??一番お気に入りのヒロイン見つけ出して、その悪役令嬢に忠告しまくってフラグ全折りするぞ、出て来いや!!」
彼女、サラと出会った。
教会や、神を祀る所からの声は天界へ届き易い。名や住所等を言うと尚更だ。
彼女の声は多く有る声の中からとても掬いやすい、純粋で強烈なものだった。
そして、まさか。と思った。
緊急事態だった為、サラの魂のみをこちらへと呼び込み事情を聞いた。
慌てて”地球”を直轄しているミルルを呼び、彼女の資料に目を通すと、前の生の記録が所々残されたままだった。これは生まれ変わる際に手作業でちゃんと書き換えないといけないのに。
資料は生きている。今の状況も随時更新されていくのだが、サラの資料の備考欄には”神、エルダーンとの因果”と書かれていた。
つまり、僕とサラは知らない内に強く繋がっていたのだ。
複雑に絡まってしまったそれは、多方面に渡る。
まさか、自分の星が局所的に乙女ゲーム化していたなんて誰が気付けるだろうか。
早く記憶を消さなければ、という気持ちと
焦る中で、むくむくと興味が湧いてしまった。
僕は、特別に誰かと縁が結ばれた事が無かった。
僕の資料は家族の事が少し書いてあっただけで、なんの面白みも無いものだった。
自分の資料を見たのは既に遠い昔で、簡素だな。としか思わなかった。
そこに一つの彩りが添えられた様な感覚だったのだ。
神に直接文句を言える彼女が、どんな人か知りたかった。
彼女の役に立てるなら、サラと話をしてみたい。
何処かでそう思ってしまった。
サラは記憶を消さなければならないなら、少しずつ消したいと言った。
気付けば思った事を口に出していた。
まさか、彼女が食い付いてくるとは思っていなかったのだ。
サラとの会話は、穏やかだった。
神に物申す人だ、気の強い人かと思えばそうでも無かった。だが、自分の周りの世界の異常を「異常だ」と真っ直ぐ言える人なのだ。
会話するのは、幼少期から”高校生”までの何気ない日常。
彼女は本や小説を沢山読んでいたからか、話を纏める事がとても上手で聞いていて苦じゃない。
ライトノベルと呼ばれる小説も、読んでみたらとても面白いものが多かった。サラがハマるのも分かる。
彼女と毎日、同じ時間に話をした。
彼女は僕を呼び、鏡に映る僕を見て嬉しそうに笑う。
それが何だかむず痒くて、でも、嬉しかった。
無意識なのだが、無理矢理にでも自分がサラとの時間を取っている事に気付いたのはいつだろう。
そして、彼女の想いに気付いてしまったのはいつだったか。
絡まった因果は、思ったよりも深く僕達に絡んでいた。
サラの想いに気付いているのに、僕は見て見ぬフリをした。
誰かを贔屓する事はいけない事だ。
だけど、サラの悲しむ顔を見たくなくて、言わなければならない事を先延ばしにした。
僕はこんなにもズルい奴だったのか。
彼女の前世の記憶達を、少し羨ましいと思った。
次の生を受けても、覚えていて貰えるなんて。
君は、僕の事を忘れてしまうのに。
こんなにも、覚えていて欲しいと願うのに。
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