第57話 中級冒険者ベクトル
「この卑怯者が。俺が居ない時でも狙っているのか?」
【名前=ベクトル・リングベルト 種族=人間(男)
レベル=45(最大レベル) HP=3571/3571 MP=944/944
力=152 体力=152 知性=134 精神=152 器用さ=152 素早さ=126】
宿屋に呼びに行った冒険者三人と一緒に、青髪、口髭の褐色の男が現れた。
街一番の冒険者で、その実力はルセフの三倍近くもある。
鍛え上げられた力は、下級冒険者では手も足も出ない。
「やっと現れましたね。私が勝ったら、エリックさんと私は冒険者ギルドに戻ります。文句ありませんよね!」
現れたベクトルに人差し指を向けて、カノンは堂々と宣言した。
もう勝つ気しかない。
「ああ、文句はねえ。ただし、こっちも条件がある。俺が勝ったら装備を置いて、素っ裸で家に帰れ」
「いいですよ! そっちも素っ裸で街を一周してくださいよ!」
「ああ、逆立ちしてやってやるよ」
子供の喧嘩だが、敗者には辱めが待っている。
ただし、この勝負は最初から勝者が決まっている。
才能と努力で勝てない相手がいる。
「良いねぇ~♪ 流石はベクトルさんだぜ!」
「安心しろよ! 俺達が家までお見送りしてやるよ!」
【名前=カノン・ネロエスト 種族=人間(女)
レベル=100(最大レベル) HP=7524/7524 MP=2310/2310
力=286 体力=286 知性=352 精神=352 器用さ=286 素早さ=264】
カノンの力はベクトルの約二倍だ。
二人は手を握り合うと、始めの合図で左手が動いた。
「ラアッー‼︎」
「タアッー‼︎」
二人とも最初から腕相撲をするつもりがなかった。
お互いの顔面に左拳を叩き込もうとした。だけど、素早さはカノンが上だ。
ベクトルの拳が届く前に、カノンの左拳が炸裂した。
「ふんがあっー‼︎」
手加減を知らない素人の全力パンチが、ベクトルの頭を激しく打ち抜いた。
気絶したベクトルが、フラフラ揺れながらテーブルに倒れて、テーブルを破壊した。
あとでカノンが修復するから、お店の迷惑にはならない。
「う、嘘だろ……ベクトルさん?」
「痛たたたっ。殴るの痛いです」
冒険者達がベクトルが小娘に倒されて驚いている。
父親も殴ったことがないカノンは、左手を振って痛がっている。
極上回復薬を飲んで治療すると、カノンは残りの冒険者に聞いた。
「他に腕相撲する人はいますか?」
「…………」
挑戦者は誰もいないようだ。そして当然、敗者には罰ゲームが待っている。
気絶したベクトルは服を脱がされた後に、馬小屋の馬に乗せられた。
逆立ちは出来ないので、街一周だけで許された。
「ふぅー。冒険者カードを取り戻せました」
ベクトルに奪われた、金色の冒険者カードを無事に取り戻した。
カノンはパトラッシュに乗って、家に向かっている。
明日からはまた冒険者の仕事が待っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます