自殺オフに参加した時の話

 

自殺オフに参加した時の話

 今から3年前、私は自殺オフに参加しました。でも、参加したという言い方は少しおかしいですね。これを主催したのは、私なので。まぁ、わかりやすく説明すると、SNSで死にたいと書き込んだ男子中学生にメッセージを送り、一緒に死なないかと私から持ちかけました。すると、その子はすぐにその話に乗ってくれ、カラオケで自殺オフすることになりました。


 これを読んでいる方は、お気づきかも知れませんが、私は別に希死念慮も自殺願望もありません。じゃあ、なぜ自殺オフをしたのか。ただ、人間観察がしたかったからです。そして、なぜ彼は死を望んでいるのか知りたかったのです。だから、カラオケの個室に入るとすぐ彼に質問しました。


「君はどうして死にたいの?」


「母さんと性格が合わなくて辛いんだ」


「……へー、そうなんだ」


 正直、反応に困りました。そんなことで人は死にたくなるのか。驚きでした。でも、いろいろと話を聞いてみたところ、彼の母は今で言うところの毒親で、私は彼に心底同情しました。そして、彼に向かってこう言いました。


「じゃあ、早く殺しちゃえばいいのに。君、今13歳なんだよね?だったら、まだ死刑にならないよ。早くその母親の喉でも掻き切って殺しちゃえば?」


 すると、彼は俯き、黙り込んでしまいました。そして数分経った後、こう言いました。


「でも、僕にはそんな勇気ないよ。それに、僕が悪いんだ。母さんの期待に応えられない僕が悪い」


「そんなことないよ。君は悪くない。大丈夫。女子高生が母親と祖母を殺した事件でも、死刑にはなってなかったし。私が君の話を聞いた限りだと、同情の余地はあると思うけどな」


「本当?」


「うん。本当。大丈夫、君なら出来るよ」


 それから、私たちは別れました。そして、その日の夜、彼は母親を殺すことなく、首を吊って自殺してしまいました。私は、この出来事を今でも後悔しています。彼は、自殺なんてすべきじゃなかった。私が彼の代わりに母親を殺してあげていれば、こんな結果にはならなかったんじゃないか。あのカラオケに行くたび、私はいつもそんなことばかり考えてしまいます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自殺オフに参加した時の話   @hanashiro_himeka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ