第5話
1年たち2年たってもレインは村に帰ってこなかった。
変わらず手紙のやり取りは続いている。
王都での日常や、俺の魔物退治はすぐやめるべきだという苦言、村での日々が恋しいという愚痴が綴られている。そして最後には村へ帰りたいと締めくくる。
俺は街で冒険者として活動していた。
同じような駆け出しパーティの一員として魔物退治をしている、かなり危険な仕事もあったがほかに仲間いるのは心強い。
結構忙しくあちこちへ言っているためなかなか村に戻ることがない、時折レインの手紙を受け取りがてら顔を見せに戻るくらいだ。
たまたま村に戻っていたある日、レインの両親が話があると言ってきた。
「レインからの手紙がきているとおもうのだが…」
レインの親父さんは歯切れが悪そうに言い出す。
「レインの婚約については知っているのか?」
俺は呆然とその言葉をきく。
なにを言っているのだ、この人は? レインが婚約?いったい誰と?そんなことはレインからの手紙には一言もなかったじゃないか、そんなばかなことがあるわけが…
「…やはりしらなかったのか。レインからの手紙には自分で連絡するからきみにはいわないでくれと書いてあったから言わなかったのだが…」
「それはいつの手紙ですか!」
俺がつめよるように聞くと、親父さんは気まずそうに1年以上前だと明かした。
なんでレインは俺に知らせなかったんだ、いやそもそもなんで婚約なんてしているんだ。
頭がぐるぐるまわって足元がふらついてくる。
しばらく気持ちを落ち着けたあとで、手紙を書いた。
レインの親父さんから聞いたこと、本当に婚約をしたのかということ。できるだけ簡潔に詰問口調にならないよう気を使って書いたつもりだ。
しかし、1月たっても2月たってもレインからの手紙は届かなかった。
俺は呆然と過ごしていた。なぜレインからの手紙がこないのかと考える。
レインは綺羅びやかな王都の生活で心替わりしてしまったのだろうか。
確かに王都での生活は村とは比べ物にならないほどの豊かで刺激に満ちた生活なのだろう。
それらに魅入られて村の暮らしを捨ててしまったのだろうか。
その捨ててしまった中には俺も含まれるのか。
王都になんて行かせるべきではなかった。しかし神官様が連れて行ったのだ、拒否できるはずもない。
あきらめきれない俺は王都へ向かいもう一度レインに会うことにした。
わかっている。
再び俺と会ったとしてもレインが再び心変わりするわけでもないであろうことくらいはわかっている。
それでも最後に一度だけでも会いたい。
神官様へ王都の神殿への取次の手紙を頼んだ。仮にもレインは神殿付きの聖女らしいから神殿経由であれば面会ができるだろう。
神官様渋い顔をしながらも手紙をしたためてくれる。
手紙を書きながら知っていることを神官様は教えてくれた。
レインが婚約したのは王族であること。
王家は常に異才の血を王族に取り込みその血を強化していること。
レインの治癒能力はまさしく異才であり王家の血を強化する血になりえたこと。
それらのことを神官様はゆっくりと教えてくれる。
「私はレインに再び会うことを勧めません。おそらくお互いつらい思いをするだけです。
レインを王都へ連れて行った私に責任があります。私を恨むことですべてを飲みこみ忘れてはどうですか」
神官様は諭すように繰り返しいう。
俺はその言葉に横へ首を振る。
「…最後に一目だけでも会いたいのです」
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