第3話

『ロイへ

 始めての手紙でなんか照れくさいです。

 

 まず帰れなくてごめんなさい。教会で聖女の修行することになりました。

 

 私はそんなことはしたくないといったのだけど、教会の人たちや神官様がどうしてもというし、なにより自分しかない力で人々を救いたいと思ったの。

 

 私のもつこの癒しの力はささやかなものだけど、修行すれば力が強くなるというし、そうなれば多く困っている人たちを救えるはずなの。

 

 だからもうしばらくここで修業してみようと思います。

 

 ロイに会えないのはさみしいけど、ものすごく悲しいけどここで頑張ってみます。

 

 帰るときは約束通りお土産をいっぱい買っていくので期待していてください。

 

 心配させないようできるだけ早く帰ります。

 

 大好きなロイへ レインより』

 

 レインからの手紙は簡潔な手紙だったが、書きなれない手紙を一生懸命書いたのが伝わってきてほほえましい。

 

 レインがいないのはさみしいがこれがレインの思いなら仕方ない。別にずっと王都で暮らすわけでもない、しばらくしたらかえって来るのだその時は暖かく迎えてやろう。

 

 お土産なんて必要ないから、早く帰ってくるようにと連絡したほうがよいだろうか。

 

 しかし手紙を書いてだすのは結構な金額がかかる。

 紙代はともかく配達してもらうのにかなりのお金がかかったはずだ。

 

 たしか近くの街までいき、冒険者へ依頼を出して届けてもらわなければならない。複数まとめて届けるはずだから単独依頼ではないがそれでも結構お金がかかる。

 

 現金収入に乏しいこの村では、レインへ連絡したいが諦めるしかなさそうだ。俺ができることはレインが早く帰ってこられるように祈るだけだ。

 

 早く帰ってこい…

 

 

 あれかれ3か月たった。

 まだレインは帰ってこないが、手紙は月に一度のペースで届けられる。

 内容はこちらの状況を尋ねる話、季節の話、お気に入りの丘に咲いてる花の話。

 病気などはしていないかと気遣う話。

 

 王都での生活、モノがあふれている王都の市場の様子、劇場へ劇を観に行ったことを興奮して伝えてきたり、王城の舞踏会へ出たりといろいろ忙しいらしい。文面では華やかな王都の暮らしにすっかり魅了されている印象を受けた。

 

 正直手紙を読むたびに心配が募る。

 王都の生活が楽しくてこのまま帰ってこなくなるのでないか、俺との約束のことを忘れていってしまわないだろうか。

 

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