文化祭デートγ 02
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今日の話はちょっと長いですがよろしくお願いします。
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まず手始めに向かったのは空き教室。
空き教室は決まって盛り場になるらしい(玉木先輩が言ってるだけ)。
空き教室への道中、俺が玉木先輩の隣で彼氏面しながらドヤっていたら、玉木先輩に無言で腹パンを食らった。
「その顔やめて」
「せっかく優越感に浸ってたのに」
「ちょっとあたしに贔屓して貰ってるからって調子乗んな」
「乗るしかねぇ、このビッグウェーブに」
「乗るなって言ってんのに」
玉木先輩はため息をつくと、呆れ顔で容赦なく腹パンをキメ込み、俺は腹を抱えた。
「次やったらこの前見せたあたしの真空波で腹ぶった斬るから」
「うわぁグロっ。も、もし内臓が出ちゃったら、俺の臓器を玉木先輩に食べて欲しいです」
「庭に捨てるから」
「そんなぁ」
周りにいた生徒たちが俺たちの会話を聞いて青い顔をしていた。
変なこと言ったかな俺?(異端児)
「着いたよ佐野くん」
3階の一番端にある空き教室。
普段は説教部屋とか言われてる教室だ。
すると突然、玉木先輩は可愛らしく鼻をひくつかせる。
「くんくん……。中に2人いる」
「え、先輩の鼻ってそんなことまで分かるんすか?」
「それだけじゃないよ。微かに香るクロ●とエル●スのフレグランス」
「エ●メス? なんすか? ガンダ●の話っすか?」
「どっちの香水も女性モノだし、男の匂いもしない。つまり……」
玉木先輩は野獣の眼光をこちらに向ける。
「まさか、ゆ……百合ですか?」
「そうなるね」
「うほぉぉ(歓喜)てか、先輩も百合の意味がわかるんすね」
「……とにかく、佐野くん行ってきてよ」
「え、俺すか? 男が百合に挟まるのは宗教的にちょっとなぁ」
「さっさと行け」
「い、イクゥぅぅ」
「やかましい」
「さっきの『さっさと行け』を後で録音してもいいなら行きます」
「分かったから」
イラつき気味の玉木先輩に促され、俺は空き教室の引き戸をゆっくり開く。
窓を締め切った空き教室。壊れた机や椅子が散乱している。
少し埃が舞っていることから、誰かがいるに違いないと思ったが、部屋の中には誰もいない。
「生徒会でーす。空き教室の見回りできましたー」
間違いない。隠れてやがる……。
俺は忍び足で歩きながら、怪しい箇所を見て回ることにした。
まずは掃除用具のあるロッカーの中。
ガチャンという鈍い金属音が静かな教室に響く。
——いない。
次は汚らしいカーテンの裏。
両手でブワッとカーテンを開くと埃が舞った。
——いない。
最後は教卓……。
ラブコメで定番の隠れスポット。
前黒板に近づくにつれて、俺はあることに気づいた。
待て。
こ、この匂い……どこかで。
玉木先輩ほど鼻が利くわけではないが、俺にも分かる。この香水は。
「……そうか、そうだったのか」
俺は全てを
「そこに居るの"エリ先"なんすか?」
そう言うと、教卓がガタゴトと音を立て、そこから白衣姿のエリ先と知らない女子生徒が姿を見せた。
「……あなたは先に帰っていいわ。この男はワタシが始末しておくから」
女子生徒は頷くと教室から出て行った。
「え、エリ先、まさかあんた。ただの保健室のエロい先生じゃなくて、百合属性持ちだったなんて」
「まさかあんたにバレるなんて。最悪」
エリ先はバツの悪そうな顔をして、ため息を漏らす。
「そうよ。ワタシは、女の子が好きなの」
「……お、俺は! いつかエリ先の靴に踏まれたいと思ってたのに……!」
「は? キモ」
「じゃあ、エリ先がやけに安西先生と仲良いのも」
エリ先は舌打ちした。
「そ、そうよ! ワタシはね、まほろちゃんのことが好きなのよ!」
やっぱ、そうだったのか。
「言えたじゃねぇか」
「え?」
「俺は、応援するっすよ」
「なんで……? あんたまほろちゃんとあんなに仲良いのに」
「……俺は百合の間に挟まっちゃダメなんだ」
「は?」
安西先生の引き取り先が決まったので、これにて一件落着。
これで安西先生もやっと結婚できるのか。
「あんた不思議ね。ワタシが女好きって知ったらみんな軽蔑するのに……」
「俺は性別とか気にしないんで。俺だって、可愛いならオトコの娘でもラブコールしますから」
「……ほんと、変わり者よ、あんた」
エリ先はスッキリした顔でいつになく柔らかい笑顔を見せると、教室から出て行った。
それと入れ違いになるように玉木先輩が部屋に入ってくる。
「佐野くん、お掃除は終わった?」
「玉木先輩、全部分かってやってますよね? エリ先がここに居ることだって匂いで分かってたんじゃ」
「だって注意したいけどエリーは親戚だからしにくかったんだよねぇ」
「要するに、生徒会の仕事を手伝わせたのも、俺を上手いこと使いたかっただけすか?」
「半分正解で半分間違い。これからが本番だから」
✳︎✳︎
次にやってきたのは体育館裏。
いかにもヤバめな雰囲気が漂う体育館裏にはいかにも不良な人がうろうろしていた。
「あたしの見えないところで他校の不良がカツアゲしてたらしいの。それでここを溜まり場にして山分けしてるって通達があったから」
「カツアゲって、ここだけ昭和なんすか? 令和とは思えないんすけど」
「今回は主導の文化祭実行委員会があんなんだから他校に舐められてんの。でもさ、虹村咲高校の生徒を守るのがあたしの役目だから生徒会が尻拭いしてあげないとね」
玉木先輩の顔が猛虎の顔に変わった瞬間、身体中から覇気が現れる。
「あたしの強さ、見せてあげる」
「え、でも危ないんじゃ」
玉木先輩は一歩、また一歩と不良たちの方へ歩み寄る。
それに気づいた不良たちが身構える。
「あたしは生徒会長の玉木若葉だ。オメェら、奪った金は置いてけ」
「う、うっせー。お前ら! ついに玉木若葉が出てきたぞ、ヤルぞ!」
10数人の不良たちが玉木先輩に向かってものすごい勢いで突進してくる。
いくら玉木先輩でも不味いんじゃ。
だが、勝負は刹那的に決着する。
玉木先輩は殴りかかってきた大きな腕を巧みに往なし、背中に目がついているかのように背後からの攻撃も手足で払い退ける。
神速と言わんばかりのその瞬発力。顔を的確に仕留める回し蹴りと腹部に重い1発。
大柄の不良たちが次々と気絶していく。
最初にイキってた不良も玉木先輩のグーパンを顔に喰らって歯が吹っ飛び吐血していた。
「か、勝てねぇ……ば、化け物」
それを聞いた玉木先輩は、容赦なく歯の落ちた不良の腹にパンチを入れてダウンさせる。
「ふぅ……。乙女に向かって化け物とか、キモい男」
玉木先輩は男のポケットから財布と学生証を抜く。
「佐野くんも、こいつらのポケットから財布抜いといて」
「…………」
「佐野くん?」
「あ、は……はい!」
つい唖然としてしまった。
ものの数秒で敵を蹂躙する圧倒的な強さ。
強さと可憐さを兼ね備えた
「先輩」
「なに?」
「めっちゃカッコよかったです」
「そ? でも、さ」
玉木先輩は俺の肩に自分のおでこをグリグリと擦りつけてくる。
「なんすか? 甘えたいんすか?」
「……ちょっと疲れたから休ませて」
またまたそんなこと言っちゃって。
「先輩のそーゆうところ。可愛いっすよ」
「……っ」
玉木先輩は無言でハグしてきた。
ほんとこの人は読めん。
甘え上手なのか甘え下手なのか。
強いけど寂しがり屋だし、強さと弱さのバランスが絶妙だから玉木先輩に惹かれちまうんだよなぁ。
✳︎✳︎
すっかり日も暮れて、校舎に戻った時には文化祭が終わっていた。
「あのー、玉木先輩?」
「なに?」
「文化祭終わっちゃいましたけど、特別な場所ってのは一体……」
玉木先輩はチッチッチッと人差し指を振ると、俺の手を取る。
「文化祭はこれからが本番だから。あたしのとっておきを教えてあげる」
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次の話で長かった2章も終了です。
3章をどうするか悩み中。
ここまでの感想とか貰えると今後の参考になるので、ぜひぜひ。(最終的にどのヒロインにするのかも考え中)
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