文化祭準備開始!02
酒臭い先生を風呂に入れてる間に、つけ置きしておいた服を手洗いして洗濯機に放り込んだ。
さらば、玉木先輩の温もり。
敬礼しながらスタートボタンを押す。
「……佐野くん、そろそろお風呂から出たいので、隣の部屋に行ってもらっても」
——と、風呂の引き戸の奥から先生の声がした。
「ここは俺の家なんでぇ。どこにいるかは俺の勝手ですよねぇ(ゲス顔)」
「もー! このままじゃお着替えできないです!」
先生はちょっとだけ引き戸を開けて、片目で訴えかけてくる。
「もしかして、私の裸を見ようとしてるんですか?」
「別に見たくないですけど」
「なんで真顔で言うんですか! そんな嘘付くなら堂々と裸で出てやりますからっ!」
有言実行とばかりに、先生はタオルで前を隠しながら出てきた。
タオル一枚だから身体のラインがハッキリ見えており、先生の小さな身体がより小さく見える。
「ちょ、ずるいっすよ先生! いくら俺でもそれは……」
俺は右手で目を、左手で股間を隠す。
ロリの安西先生とはいえ、生の裸は童貞陰キャにとって刺激が強すぎるッ!
「おやおや佐野くん? タオルしてるのになんで動揺してるんです? モテ期の男なら余裕ですよねぇ?」
「このメスガキがッ」
「ふふふっ、それで私の服は——って、あれ? どこに置きましたっ……け⁈ あわわわ!!」
先生は急に大声を出して慌てる。
泣いたり吐いたり驚いたり、感情が忙しいなこの人。
「もー、どうしたんすか?」
「いつもの癖で脱いだ服を洗濯機の中に入れちゃいましたっ!」
「ええ⁈」
俺はすぐに洗濯機の蓋を開く。
「あー、ゲロの服と一緒に洗っちゃってますね」
さっき入れた時、玉木先輩のことばかり考えてたからうっかりしてた。
先生はタオルを押さえながらその場に崩れ落ちる。
「私、着る服ないです」
「まぁまぁ、そんな時のために買っておいたものがあるんすよ」
「買っておいたもの?」
俺はベッドの下からあるものを引っ張り出してきて、先生に渡す。
「なんですかこのフリフリしたコスプレ服。なんかベレー帽もあるし」
「クロ●カード編のさ●らの変身セットです」
「着るかッ!」
先生が変身セットを投げ返してくる。
珍しくブチ切れる安西先生。
そんなに怒らなくてもいいのに。
「先生の年代に合わせたつもりだったんですが」
「いつの話ですか! それよりなんで平成の終わりに生まれた佐野くんがさ●らの変身セット持ってるんですか!」
「嫌ならさ●らが作中で着てたセーラー服のもありますけど」
「どっちも着ませんから!」
ったく贅沢なロリだなぁ。
俺は仕方なく『働いたら負け』と書かれたTシャツを引っ張り出してきて、先生に渡した。
「ズボンは俺の体操着のやつでもいいっすか?」
「はい、ありがとうございます。……あと、ついでに絆創膏を貰えるとありがたいのですが」
「絆創膏? 怪我でもしたんすか?」
「ち、違っ……。モテ期の男を自称してるならちょっとは察してください」
「は?」
「だからそのー、下着も洗濯機に入れちゃったので……」
俺が首を傾げていると、先生は小声で何かを呟いた。
「お、おっぱいの、アレを隠すために、貼りたいので」
「……ほう(哲学)」
だ、ダメだ、ロリで興奮したら負けだ。
落ち着け俺の中の"カウボーイ"ビルワット。
「ふぅ……」
「あの、だから絆創膏もらえます?」
「あげないと言ったら?」
「隣の部屋にいる桔川部長を呼びます」
「はい、こちら絆創膏です」
速攻で差し出した。
✳︎✳︎
「お風呂、お先に失礼しました」
俺が部屋で寝転びながらスマホをいじっていたら、先生が着替えを済ませて戻ってきた。
「先生お茶でも飲みます? あと、今から出前取るんすけど何か食べたいっすか?」
「……私のことはお構いなく」
ぐったりとした様子の先生は、俺の隣に座るとちゃぶ台の上に突っ伏した。
色々とお疲れのようだな。
俺は適当に出前を注文してから、先生にお茶を出してあげた。
「……この前の傘といい佐野くんは、私のこと嫌いなくせになんでそんなに優しくしてくれるんですか?」
「な、なんでと言われましても……」
考えてもみなかったな。
先生がウザいくらい付き纏ってくるから仕方なく……ってだけなんだが。
「これまで佐野くんみたいに構ってくれる人はいませんでした。学生時代から素を出したら、いつの間にか孤立していて……男子には身体が小さいからいじめられて、女子からも嫌われる……ずっとその繰り返し」
先生が『ゲロ』より重い『闇』を吐き出してくるので、俺は口封じのために飴を差し出す。
「ヴェ●ター●オリジナ●です」
「わぁ、特別な飴だっ」
「暗い話しないならあげますけど?」
「もうしないので飴ください」
さすがヴェル●ー●オリジナ●だぜ。
先生は飴を舐め始めてやつと大人しくなった。
いい歳してほんと子供っぽいんだからこの人は。
「……俺、別に先生のこと嫌いじゃ無いっすよ。話も合うし、いつもクソ暑い屋上のフリーハグに付き合ってくれるし、色々と感謝してます」
「しゃのくん……」
「それに今日だって、先生が俺の上着にもんじゃをぶち撒けてなかったら、今夜俺は興奮が止まらなくて死んでたかもしれないし」
「こ、興奮って……その上着に一体どんなヤ●が入ったんですか」
「玉木パウダーという名の至高のヤ●ですよ」
それを言った瞬間、先生が白い目で見てくる。
「玉木生徒会長と会ってたんですか?」
「まぁね。俺、玉木先輩の下僕になったんで」
「下僕……? それって嬉しいんですか?」
「当たり前だ! 玉木先輩の都合の良いフリーハグ相手だった俺が、やっと下僕まで成り上がれたんだ! この上ない幸せ!」
「ふーん」
「お? まさか先生、玉木先輩に嫉妬しちゃってるんすか? いやぁ、モテ期の男は辛いなぁ」
「してないです! 呆れてただけですっ」
いかにも不機嫌そうな先生をイジっていたら部屋のドアベルが鳴った。
ちょうど出前の到着時間になっていたので、俺は返事をしてから立ち上がる。
「メシ届いたんで。ちょっと待っててくださいね」
ドアを開けて、玄関前に置かれたメシを取ったら部屋に戻る。
「先生、回鍋肉と青椒肉絲どっちがいいっすか」
「え、私も食べていいんですか?」
「あれだけ吐いたら腹も減るだろうと思って、2つ頼んでるんで」
「……じゃあ、回鍋肉で」
先生の前に回鍋肉弁当と割り箸を置き、俺も座って青椒肉絲弁当を食べる。
その後もそんな感じで2人で弁当を食いながら談笑していた。
「そういえば先生、ゆのがすげぇ作戦思いついたんすよ」
「本当ですか⁈」
「はい。内容は」
先生に話していて思ったが、この作業を残り2日でやるのは相当大変だ。
でも、不可能じゃない。
「そうですか……残り2日、忙しくなりますね」
「ちょっといつもとは違う形になるけど、先生は変わらず俺の隣にいてくれればいいんで」
「……分かりました。文化祭、絶対成功させましょうね」
先生も良い顔に戻っていたので安心した。
俺も、頑張らないとな。
✳︎✳︎
気がつけば夜の11時。
そろそろ寝ないと明日起きれないからな。
俺と先生は風呂場に洗濯物を干して、乾燥モードをオンにしてからベッドに入る。
「佐野くん、電気消しますよー」
「はーい」
そしてそのまま寝——ちょっと待て。
なんかおかしくないか。
「むにゃむにゃ……おしゃけー」
隣で寝る先生の寝顔を見ていたら、なんか瞼が重たくなって……。
あれ? 何かツッコミ忘れてるような……まぁ、いいか。
俺を起こしに来たゆのが発狂するまで、残り6時間——(チックタック)
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