文化祭準備開始!01
やっとコーポまで帰って来れた。
飲み屋街で出会った小悪魔ゲロイン(ゲ●を吐くヒロインの俗称)に巻き込まれ、陰キャにとって唯一の外着を失った。
仕方ないので、ブルー●・リーみたいに上半身裸でコーポに帰ってきた。
そんな半裸の俺が、今思うこと——
「……乳首が蚊に刺されて痒いんだが」
それに尽きる。
「ぐずっ。ごめんなさい佐野くんっ!」
「分かりましたから。これ洗濯するの手伝ってもらいますからね」
「ごめんねぇっ、ごめんねっ、佐野くん」
面倒なほどに泣き上戸の安西先生。
どうせ洗うから、ゲ●付きの上着で涙を拭いてあげよう。(ただの腹いせ)
それにしても半裸でロリと手を繋ぎながら夜道を歩くってのは……色々ヤバいな。
警察にでも見つかったら間違いなく人生ゲームオーバーだった。
「ほら先生、コーポに着いたんでさっさと中入ってくださいっ……ゆのに見つかったら面倒だ」
まだ酔っててボヤボヤしてる先生を部屋に連れ込んで、ため息を漏らす。
俺は上着を洗濯機の中にぶち込んで、先生の靴を脱がす。
「先生水飲みます?」
ボーッと虚脱状態みたいにどこかを見つめながら、こくりと頷いた先生。
「……ったく、手間のかかる26歳だ」
流し場に乾かしていたコップに水道水を注いでから、玄関に座る先生に差し出した。
さっきからやけに無言だけど……どうしたんだ?
先生の顔を覗き込む。
「ね、寝とる」
先生をおぶってベッドの上に運んでからエアコンをつける。
「すぅ……」
あんま褒めたくないし認めたくもないけど、黙って寝てれば……可愛い、もんだな。
「……おしゃけっ」
この人、夢の中でも酒呑んでる……やっぱ前言撤回で。
さて、俺は洗濯するか。
俺は一度、洗濯機の中の服を取り出して軽く手洗いするために風呂場へ向かう。
私服姿の玉木先輩を抱いた貴重な上着が先生のもんじゃで上書きされてしまうとは。
俺は血涙を流しながら洗面器にお湯と洗剤を入れる。
今夜は先輩を抱いた時に籠った残り香で愉しむつもりだったのに。
「はぁ……」
なんかやる気が失せて服をつけ置きにして風呂から出る。
肩を落としながら部屋に戻ってくると、先生が変わらず寝ている。
腹いせに頬を突くと「へけっ」と声を漏らした。
「一緒に呑む友達がいないのに、呑み潰れたらダメじゃ無いですか」
もう一回突くと、にやけ顔に変わる。
「そんなんじゃロリ●ンおじさんに見つかってあれこれされちゃいますよ」
「んー、しゃのくーん」
先生が俺の指を掴む。
「……しゅき」
……まだ酔ってるみたいだな。
とりあえず酒くさいから風呂入って欲しいんだが……。
「先生、そろそろ起きてください」
「……ん、んん?」
先生の目が薄らと開く。
「……なんで佐野くんがここに」
「ここは俺の部屋なんすけど」
「佐野くんの……部屋⁈」
酔いを覚ました先生が飛び起きる。
白のブラウスから少し胸がはだけており、それを手で隠しながら、先生は目をかっ開く。
「ま、ままま、まさか私! 佐野くんとシちゃったんですか⁈ 大切な初めてなのに!」
「(シて)ないです」
「……じゃあなんで佐野くんのベッドに」
「酔った先生が飲み屋街で、もんじゃぶち撒けてきて、いかにも普通じゃなかったから仕方なく連れてきたんすよ」
先生は数秒記憶を探っていたらしく、やっと思い出すと顔を真っ赤にした。
「あ、あの……」
先生は申し訳なさそうに懐から諭吉を2枚取り出すと、床に膝をつき土下座を見せる。
「申し訳ございませんでした」
それはそれは綺麗な土下座で。
この人謝り慣れてるなぁ。
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