幼馴染は天才軍師02

 

 興奮気味なゆのが作戦について力説を始めて1時間が経つ。


「——って感じなんだけど」

「……すげぇよ! めっちゃいいよこの作戦!」


 ゆのが提案する文化祭の作戦は大胆すぎるけど、これでダメなら後悔はないと思えるくらいの作戦だった。


「俺たちがお下劣なことをしなくても人が寄ってくるし、本来の目的から逸れることもない」

「お下劣なことするつもりだったの……」

「まぁ、場合によっては。尻で箸割ったり」


 自信満々に言ったのだが、ゆのの真顔から察するにあまり面白くないのか……? え、面白いじゃん尻で箸割り。


「とにかく! ここから我々心理学実験同好会は文化祭で勝負に出る!」

「珍しく同好会って言ったな」


 鬼才桔川ゆのの提言によって、俺たち心理学実験同好会は動き出す……はずだった。


「……でも一つ欠点があるの」

「欠点?」


「——文化祭の、資金がありませんっ」


 そ……っそうきたかァ……っ!


「資金がありません!」

「天●●希みたいに言われても」

「そこで、部員であるわたしたち2人で折半しましょう! もきゅもきゅ」


 ゆのは納豆巻きを頬張りながら話す。


「どーせ、お前のことだから折半とか言いながらも俺に払わせるんだろ?」

「そんなことはしない! ……とは言い切れないっ」

「松●寺の返しすんな」

「じゃん負けが8割! どう?」


 ほぉ〜? 

 モテ期で運気最高の俺にじゃんけんを挑むとはなんたる愚行。


「ケッ、ゆのも落ちたものよのう」

「運ゲーだから負けても文句なし。分かった?」

「ああ乗ったぜ!」


ただでさえサ●ーンのせいで今月豆腐生活が決まってるんだ。ここで負けたらもやし生活になっちまう。


「じゃあさっそく……。わたしはグーをだすよ」

「おい心理戦はずるいぞ!」

「私は心理学者なんだから当たり前でしゅー」


 出たな、でしゅー野郎ッ!

 よく考えろ、天才のこいつがバカ真面目にグーを出すわけない。

 だからここは敢えて対抗グー、か?

 ——いや、待て。

 ここはそれすらも読んでチョキッ! これが最善だ。


「……覚悟はいいか? 俺はでき」


「じゃーんけーん、ぽいっ」


 俺がドヤ顔チョキを決め込んだ瞬間、ゆのは堂々とグーを差し出した。


「はいわたしの勝ち。わざわざチョキで負けてくれるなんて孔太くんやさし〜」

「…………俺、さ。優しいゆのが本気で8割とか言ってると思えねーんだよ。だってゆのは島にいる時から俺の隣にいて、俺はずっと、お前のこと本気で相棒だと思って」


「8割」


「……ゆのの誕生日さ、毎年欠かさずプレゼント送って」


「8割」


「お前の母さんを交通事故から助けてあげた時もあるよな。あの時お前の母さんには『こうちゃんが婿に来てくれたら』って言われちまってさ。だから俺とお前の通帳ってもう一心同体みたいなもんだと」


「9割」


「しれっと上げんな!」

「わたし、落語も人情噺は嫌いなの」

「せめて! せめて7割で手打ちにしてくれ!」

「ったくしょーがないなぁ」


 ゆのは俺がお母さんを助けた話に弱い。

 俺はこの話を擦りまくっていずれはゆのの胸を……。(ゲス顔)


「孔太くん、ありがとねっ」


 こいつの笑顔を見てると邪な心さえも浄化されちまう。

 俺、良いように使われてるなー。

 そう思っても憎めないのがゆのなんだよな。(洗脳済み)


✳︎✳︎


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 新作がスタートしました!

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