会長と委員長とゲーム02
テレビ前のソファで二人が談笑している間に、俺はサ●ーンの接続を終わらせる。
「セッティング終わりましたよー。3
「ご苦労さま。……頭撫でてあげようか?」
「きゃいーん」
——はっ! 今は委員長の前なんだからキモい面を出すわけにはいかない。
「ご、ごほんっ、揶揄わないでください。そんなの嬉しくないので……」
「……ふーん」
玉木先輩はさりげなく俺の頭を撫でた。
「ほんとは好きなくせに……もしかしてお嬢の前だからカッコつけてる?」
「カッコつけてなんか……っっ!」
自分の頬が赤くなっていくのを自覚するくらい身体中から熱が込み上げてくる。
撫で撫でなんて至高のご褒美なんだから好きに決まってんだろ!
玉木先輩の撫で撫でなら1日中されたいッ……でもな、委員長の前では別だ。
「は、早くやりましょう。ソフトも入れておいたので」
俺はstay cool でゲームを起動させる。
先輩と委員長はソファに座りながらで、俺はその隣で正座しながらコントローラーを握る。
起動と同時に長編映画の始まりみたいに引き込まれる起動音が流れた。
同●生麻●をやるためにP●を買ったことがあったが、P●の起動音はミステリアスな印象がありトラウマになる人が多い反面、サ●ーンの起動音はグッと込み上げ来る感じが自然とゲーマーの気持ちを昂らせてくれる。
やはり時代はSE●●だぜ!
ソフトの読み込みが終わるとすぐにOPが流れ出す。
ゲームタイトルに平成初期の年数が刻まれているようにその当時がテーマだと見て取れたが、思った通りOPからドット絵で昔っぽい街が再現されていて、画面が変わると都会のどこにでもあるような高層ビルの日常が流れ始めた。
「まさかビル経営ゲームが先輩のオススメとは思わなかったっすよ」
ヤンキーの玉木先輩のことだから、如くとか番長みたいな無双バトル系統のゲームをイメージしてた。
ってか、なんでよりにもよってビル経営……?
「RPGとかアクションだとある程度やればストーリーも終わるし、なんなら飽きるでしょ?」
「それは……一理あるな」
「ビルを経営するゲームって、具体的にどんなことするんですか?」
「テナントや設備をビルの中に好きなように導入して、自分のビルが盛えるようにしていくの。もちろん資金が無くなったらゲームオーバー。ね、面白そうでしょ?」
「昔のゲームなのに結構リアルなんですね。若葉さんはクリアしたことあるんですか?」
「違う機種のやつならクリアしてるよ。ゆーてそんなに難しくないしあたしみたいなゲーム初心者でも初見でクリアできたんだから佐野くんにもできるよねー(煽り)」
イラッ。
これでも中学までゲームとパソコンばっか弄って生きてきたんだ。(自●を覚えてからはあまりゲームをやらなくなるという、妙に生々しい男子高校生のリアル)
「俺を舐めてもらっちゃあ困りますよ玉木先輩。こんなレトロゲームすぐ出来らぁっ!」
——と、意気込んでいた俺だったが。
「赤字経営、ゴキブリ騒ぎに火事盗難。佐野くん、このビル完全に無法地帯になってるけど……」
呆然とコントローラーを握る俺。
委員長はテレビ画面を心配そうに見つめる。
葬式みたいな顔をする俺たち2人とは対照的に、玉木先輩は終始腹を抱えて笑っていた。
「あはっ、この短時間で赤字になるとかっ、佐野くんある意味才能あるじゃんっ」
「嬉しくねーですよ」
「こりゃ、教え甲斐があるねっ」
また明日も来るように、と念を押され、俺は軽く頷き肩を落としながら生徒会室を出た。
「さ、佐野くん、そんなに落ち込まないでくださいよ……」
一緒に教室へ戻る道中、委員長は優しくフォローを入れてくれた。
「委員長、ゲーマーってのはプライドが高い生き物なんだよ」
「へ、へぇ……。でも佐野くんはゲーマー? とやらじゃないよね。見たところあまりゲームがお上手では無いようだし(無自覚煽り)」
「やめてくれ委員長、その術は俺に効く」
委員長にナチュラル煽りをされてメンタルボコボコにされる俺。
そんな俺が午後からの授業に集中できるはずもなく……。
結局6限の国語で放心状態に陥ってしまい、放課後の屋上でお説教タイムが始まった。
✳︎✳︎
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