委員長とラブコメしたい01
と、いう訳で街に来てみましたー。
……せっかく委員長と2人きりで買い物できると思ったのに、なんでロリ教師(26歳独身)までついてきてるんだ。
そして例のように俺の左手には安西先生の小さな右手が繋がれている。
俺は何度も離そうと試みたが、その度に安西先生は「あなたを離したら絶対R18コーナーに行くので」と言って無理矢理手を繋ぎ直してくる。
俺としては変な噂を流されたくないし、委員長に誤解されるのも嫌だから離してほしいのだが。
現に、さっきから委員長が冷たい目でこちらを見てくる。
断じてロリコンではない、わかってくれ委員長!
「そーいえば佐野くんのクラスは何をやるんですか?」
「メイド喫茶ですよ。ね、委員長?」
委員長は頷くと、鞄からメイド喫茶のチラシを取り出して先生に渡す。
そのチラシには、調子こいて手でハートを作るメイド服姿のゆのが中央に載せられていた。写真でも胸の大きさが目立つ。
……まったく、けしからん胸だ。
俺はさりげなく先生からそのチラシを奪うと懐に入れた。
「佐野くんはメイド姿にならないんです?」
「なる訳ないでしょ。男子校のノリじゃあるまいし」
「へー、つまんないですねー」
「逆に俺がメイド服着てたら面白いのかよ」
「つまんないです」
「もうめちゃくちゃだなこの人」
俺たちの会話を聞いて、委員長はまたクスッと笑った。
この掛け合いのどこが面白いのか俺にはまったく分からん。
「買い出しって何を買うんです? あと1週間あるので食材では無いですよね?」
「はい。今日は教室の飾り付けや、メイド服の装飾品を買うつもりです。ここの商店街は色々揃っているので」
虹高の近くにある商店街には行列の店からヘンテコな店まで多種多様な店が連なっており、店の豊富さから毎日のように地方局がロケをしているので、芸能人を見かけることも多い。
「まず雑貨屋に行って、その後に100均に寄って飾り付けを買うつもりです」
さすが委員長、要領がいいな。
委員長が先導し向かった先にあったのは木造りで落ち着いた雰囲気のある雑貨屋。
アンティークなものからファッション系の小物まで、木製の棚や机に綺麗に並べられており、老若男女に親しまれるような優しい空間が広がっていた。
店に入って、やっと安西先生の手が離れたと思ったら、先生は子供みたいに目を輝かしてあちこち動き回っている。
「先生、大人しくしてるって約束しましたよね」
「だってー。私、小さいものが好きだから」
「まぁ先生も小さいですもんね」って言うのは流石に意地悪だと思って飲み込んだ。
「南雲さんっ、買うものは決めてるんですか?」
「いえ、まだ」
「ならメイド服には、比較的こんな感じのモノクロのアクセがいいと思います。あと手首にはギャップとして明るい感じのシュシュがあるといいですね」
「なるほど」
なんか始まったぞ。
先生が商品を指しながら委員長にアドバイスをし、委員長が値段を見て買うかどうか吟味する。
それが数十分続いて、俺が持っていた買い物かごには順調に商品が入った。
「南雲さんは私と同じく美人さんなのでピンクピンクしてるのは似合わないと思います。なのでこれはどうですか? ちょっとシックですけど、キャピキャピしてなくて南雲さんにはお似合いです」
さらに先生は委員長のアクセを選んでいた。
「あ、ありがとうございます」
委員長も嬉しそうだ…………。
…………っておい。
おいおいおいこのロリ教師!!!
俺の役目全部奪ってやがるッ!!
2人で買い物しながら色々と選ぶラブコメでお馴染みのやつ!
最後にはその子に合ったアクセを選んであげて「一生大切にするねっ」てなるやつ!
全部奪われたんやが!?
こんな……こんなはずじゃ……畜生!!
(ロリ教師に)持って行かれた……!!
会計を済ませた時、俺はこのロリ教師を連れてきたことを死ぬほど後悔した。
「佐野くん! いい買い物ができて良かったですねー! いやぁ、私を連れてきて良かったんじゃないですかぁ?」
「……」
「どうでした? 私、大人っぽくアドバイスしてましたよね? 褒めてください!」
「……すっご〜い」
「そんなフレンズみたいな褒め方嬉しく無いです! もー、ちょっとは褒めてくれないと佐野くんのこともっと嫌いになりますよ!」
別に構わないのだが……。
先生がナチュラルに手を繋ごうとしてきたので俺はそれを躱す。
「俺のこと嫌いなら無理して繋がなくていいですよ先生」
「ふーん。じゃあ手持ち無沙汰なので私は南雲さんと手繋ぎますー」
「せ、先生。恥ずかしいです……」
「別にいいじゃないですかぁ。南雲さんは私の授業をしっかり聞いてくれる唯一のお方なので、好きですよっ」
「そんな……当たり前のことですから」
委員長と先生が手を繋いで前を歩き出した。
こ、このロリぃぃぃいいッッ。
宗教上の理由で百合の間に入ってはいけないと決めている(戒め)俺は、それをただ後ろから見ていることしかできなかった。
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