クール委員長を抱きたい02

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週間ランキングTOP100に載ったらしいです。

推してくれてありがとうございます。

今後も粉骨砕身、身を粉にして、骨の髄まで粉々になるように頑張りますので、どうか応援よろしくお願いします。

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 フリーハグ2日目。

 あの俺の醜態を収めた写真が出回ったことで、屋上でフリーハグをしていることが多くの生徒に知れ渡っていた。


 その証拠に今日も野次馬がわんさか集まっている。

 ざっと10人はいるか?

 そんでもって、俺の写真を肖像権無視して裏チャに上げたギャルまでいやがる。


「おいさっさと始めろよー」

「お前ら2人でもいいから始めろー。動画撮ってやるからー」


 ゲスい笑いが沸き起こる。

 なんだよ、たった1日で屋上が最悪の空間になってやがる。


「まずいなぁ……」

「ゆの?」


 ゆのが苦虫を噛んだような顔を見せる。


「同調が起こってる。このままだと誰もフリーハグに来れない」

「同調?」

「うん。心理現象の一つで、今ここにいる人間にはフリーハグが『恥ずかしい』『異常』というバイアスが働いている。海外では挨拶だからある程度の理解があるけど、日本じゃこうなることが多いの。このままだと、フリーハグを求めてる人がここに来れなくなっちゃう」

「なんだって⁈」


 それは死活問題だ。

 せっかく玉木先輩がまた来るって言ってくれたのに、これじゃ……。

 玉木、先輩……ッ(をもう一度抱いて、脳内再現度をもっと正確なものにしたい)。


「……俺、ちょっくら言いに行ってくる」

「やめなよ! そんなことしたら、いよいよぼっちだよ!」

「今もぼっちなんだよ!」


 てかフリーハグ始めた時点でぼっち確定だし、トドメ刺されてんだよ。

 俺は首に下げていたフリーハグの看板を外す。


 やるしかねぇんだ! 俺のためにも、玉木先輩のためにも! …………ついでにゆののためにも。


 俺が野次馬を追い払おうとしたその時、屋上のドアが荒々しく開け放たれた。


「はーいみんなお疲れー」


 生徒会の腕章を左腕に付け、その金色の髪を靡かせながら、軽やかな足取りでこちらに近づいてくる人物。

 その黄金色の覇気に圧倒された野次馬が次々と俺たちに向けていたカメラを仕舞い、その場に跪く。


「あたしは第43期生徒会長、玉木若葉だ。ここは心理学実験同好会の貴重な研究の場であり、その研究を邪魔をするのは生徒会が許さない。さらに、先日それを侮辱するような投稿が、とあるチャットルームにて散見された。これを投稿した者、手をあげなさい」


 ギャル2人組が恐る恐る手をあげた。


「とりあえず学生証出しなよ」


 玉木先輩は、ギャルが財布から出した学生証を奪い取る。


「へぇ、君たち1年生なんだ。1年生とはいえ

 もう3ヶ月経つわけだし、この虹高であたしに逆らうとどうなるか……分かるよね?」

「は、はい! ごめんなさい!」


 あれだけイキってたギャルコンビが玉木先輩に土下座する。

 これがこの虹高で最恐と謳われたヤンキー生徒会長の権力。

 顔は可愛いのにやってることはカッケェ……。

 こりゃギャップ萌えするって。


「じゃあさー、とりまあんたらカメラ構えなよ」

「え、え?」


 ギャルコンビが涙目になりながら顔を上げる。


「今からあたしが佐野くんとフリーハグするから、それをネタにして裏チャに上げろって言ってんの」

「へ……」

「さっさと構えろっ」


 ギャルが震える手でスマホを取り出すと、カメラを向ける。


「玉木先輩……あなたは一体何を考えて」

「なーんも、考えてないよ。ただ、フリーハグをしに来ただけ」


 玉木先輩は両手を開き、優しく俺の背中に手を回す。


「あの、動画撮られてますけど」

「撮ってんの」


 当ててんの、みたいに言われましても。

 玉木先輩は昨日以上に俺の胸板に顔を埋めている。

 その所為で、玉木先輩の鼻がちょうど俺の乳頭に擦れるので、股間のムズムズが止まらない。


「……すぃーッ。いい、匂い」

「何か言いました?」

「別に? 何も言ってないけど」


 玉木先輩はやけに満足そうな顔をしながら腕の中にいる俺を解放し、自身はギャルの持つスマホのカメラの前に歩み寄る。


「これで心理学実験同好会のフリーハグ実験は生徒会公認のものになりました。今後、心理学実験同好会を邪魔する行為は、生徒会への反逆と見做す。分かったね?」


 怖いけど、玉木先輩が来てくれなかったら俺たちは実験を中止せざるを得なかった。

 野次馬が全員屋上から出て行くと、玉木先輩が再び俺の方を向いた。


「大丈夫? 変なことされてない?」

「だ、大丈夫っす。玉木先輩、助けてくれて、ありがとうございます!」

「……ううん。あたしの仕事はみんなを守護ることだから」


 玉木先輩カッケェー。


「ほらっ、ゆのもお礼言えって」

「玉木先輩」


 ゆのが玉木先輩の前に歩み寄る。


「今回の件は、感謝します。ですが、なんで私たちを庇ってくれたんですか? 本来、生徒会からしたら私たちみたいな心理学者は異端なはず」

「おい、ちゃっかり俺も心理学者(笑)に加えるな」

「あーもう孔太くん黙ってて。なんでですか、玉木先輩!」

「……」


 玉木先輩は鋭い目つきで俺を睨んだ。

 あ、あれ? 俺、何かしたか?


「また、来るから」


 玉木先輩はまたその一言だけ残して行ってしまった。

 玉木若葉、何から何まで不思議な人だ。

 生徒会長なのにヤンキー気質な理由も、教師以上の権力を持っている理由も、俺たちは知らない。


「ゆの、フリーハグ再開しようぜ」

「なーに? あんな生徒会長に気に入られたからって調子乗ってんの?」

「まぁな。ぼっちで陰キャの俺が生徒会長のお気に入り……うはぁ、今晩のおかずも豪勢だぜ。グヘヘェ……」

「サイテー」


 でも……なんであの時、玉木先輩は俺を睨んだ?

 俺は何か失礼なことをしてしまったのだろうか……。


「あ、孔太くん! また誰か来たみたい」

「……ん?」


 な、んで、あんたがここに。

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