第61話 宿屋で…騒動 9

 大分長い時間、廊下で俺たちが揉めてるからか、なんとなく他の泊まり客がチラチラと自分泊まる部屋から顔を出して覗いてるので、これを利用させて貰う事にする。


「すみませんぇ~ん」と、大声で俺たちを覗いて居る人たちに声を掛け"お願い"をする事にした。


「お、おい。"あんた"何する気だい!」 


 今度は"おい"と、"あんた"なんだな…。

 なら、その女をチラリと見てニタリと笑ってやる。


「何方かすみませんが、ここに警備隊の騎士様を呼んで来てくれませんか?お礼はちゃんと致しますので」


 と声を掛けると、そこに一人の客が、自分の部屋から出て来ると俺に声を掛けてくる。


「おい、アンちゃん」


 その人はスキンヘッドの体格の良い男性で、外見は怖いが身成は良い。冒険者って風にも見えないから商人かな?

 でもこの人…外見で損するタイプなのかな。


「えっと…貴方が行ってくれるのですか?」

フフフ釣れた(笑)


「おう行って遣ってもいいが…。でもよ、アンちゃん? 俺らが警備呼んだらよ、なにくれるんだ?」


「そうですねぇ~? 商人なら回復薬2本、冒険者なら銀貨5枚でいかがですか?」


「おい、そんなに貰えるのか?」


「ええ、ですから早く呼んでくれませんか?」


「だがよぉ、呼ぶのは良いがなわけがわからんと呼べねぇだろ?そこの女将と男は、お前に何かしたのかよ」


「それはですねぇ~、実は、宿代のボッタクリと空き巣です。貴方は大丈夫ですか?」


 被害に遭ってないの?


「俺か?俺は1泊銀貨6枚払ったぞ? 空き巣は知らんがな」


「ほぅ…。なら、宿代の釣りは?」


「え? 釣りなんて出ないだろ?」


 そんなことを、男と話してると急に女が割り込んでくる。

 分が悪く為ったんだろうなぁ~。


「ち、ちょっとお客さん!このガキ話をいちいち聞かないでおくれよ、このガキはねぇ~?前っから、あたしに難くせ付けて来ててね?うちの商売をいちいち、邪魔してくるんだよぉ~。全くこの悪餓鬼が!早く出てお行きよ!」


 俺に怒鳴ると、逆に客の腕にいやらしくしなだれ掛かる女将……キモ!

 つうか、出ていけだと!?


「はぁ? 俺がこの宿の常連?冗談も休み休み言ってくれない?オバサン。俺がこの宿に来たのは初めてだし。しかも、この町は初めて来てるんだけど?それに、オバサンとは昨日が初対面だ!その俺が、どうしてあんたと顔見知りなんだよ!オバサン!」


 全く分かりやすい嘘まで付きやがって!


「っ!だ、誰が…オバサンだい!それに、あんたは……」 


「おい!アンちゃん。今の女将の話は本なのか?」


 あ、被せられちゃったね?

 で、おっさんからの確認か…面倒だなぁ。

 女の話を鵜呑みにして、おっさんの鼻の下が伸びてるし。


 た、単純な人だこの人!


《主、失礼ですよ?単純馬鹿なんて、言い過ぎです》


『俺そこまで、言ってないけど……?』


 女の方を見ると目が合う、女が俺にニヤニヤして舌をだした。


 男が女に騙される様って、こんなもんなんだな。(チョロ)


「ふぅ…パトリックさん?これが、この女の正体だけど? 見てたよね?警護の騎士呼ぶからな!」


「あぁ、申し訳ないです。多く取った宿代はお返しします(やっぱり追い出しとくんだった)」


 ん?小声でなにか呟いてる。


「どうやって? どうせこの女と娘とで、金は使い込んでると思うよ?それに…そこのおっちゃん、騙されるなよ?あんたもボラれてるんだぞ!ここの宿は一泊、銀貨5枚と大銅貨5枚だそうだぞ?」


「はぁ~なんだと!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る