第59話 宿屋で…騒動 7

「で、その宿屋のご主人さんが何の用ですか?」


 宿屋の主人に訳を聞いたとたんに、後ろに居た女がシャシャリ出てきた。


「あんた」


 その言葉を聞いたとたんに、〔ブチツ〕とっ切れた。


「は? ちょっと待て」


「あ"ぁ何だい?」


「客に向かって"あんた"だと? お宅さぁ、さっきから可笑しいよな?」


「なにがだい!」


「その態度だよ!"あんた"ってなんだ?ふざけんなよ?」


「はぁ?"あんた"は、"あんた"だろ」ふん!


ムッかぁ~!!


「こっちは客だぞ?なんだ!その態度は。そこの、宿屋のご主人とやら!仮にも女将を名乗らせてる従業員に、こんな態度取らせて宿屋を任せてんの?仮でも女将なんだろ?ちゃんと教育しろよ」


「お、女将…いや、違う。それに、こんなに雑な接客をしてたなんて知らなかった」


「知らないで済むかよ! 店主、何でこの女の態度が可笑しいと、今の今で思わないんだよ。何処の宿屋に、従業員が客に向かって【あんた!】と言う奴が居るんだよ!」


「そ、それは……」


「あんたら客商売遣ってるんだから、分かんないの?客から鉄貨一枚でも払って貰ったら、どんな格好してても客ダロがよ! 下手に出るならまだしも、何で上から物が言えるんだよ! 従業員の不手際なら、責任者が平謝りするのが本当だろうがよ!客商売舐めんじゃねぇよ!」


《主!落ち着いて》


『ナビさん煩いよ!ちょっと待ってて』


「す……すまん呆気に取られてた。すまん」


「馬鹿なの? で、一体何の用ですかね!俺はもう、ここを出てくんだから関係ないけど?」


「ば、馬鹿? じゃお客さんあんた、中庭でなにしてたんだ?」


「はぁ、其処の女に使って良いかと聞いて、ちゃんと許可は貰ってるけど?それがなに? しっかしさぁ、【じゃお客さん? あんた?】本当、金払っててこの対応。最低だな!こんな宿泊まるんじゃ無かったよ。飯は不味いわ!まともに接客出来ないときて。挙げ句に客が出掛けてる間に、勝手に部屋に入って部屋の中を物色しやがって。本当に良い宿だなおい!何度も言うがな舐めるのも大概にしろよ!」


「俺の飯が不味い? 最低だと?そんな酷い事どうして言えるんだ! それに、部屋を娘が物色してる?そんな証拠無いだろ!」


「なに逆切れしてるんだよ!あんたらから、酷い対応を受けてるのは俺なんだけど? なに言ってんの?目の前で見てるだろ?客の俺に対してその女が、【あんた】と言って怒鳴るのをさ! 宿のご主人様とやら、俺とあんたの立場が逆ならどうするよ?」


「う!それは………済まない」


「さっきから、切れるか"済まない"の一言しか言えないの? 本当に分かってる? ならちゃんと謝れよ!俺は金を払ってる客だよな? 中庭もそこの女に許可取ったよな俺は! その女将とやら許可は取ったよな?本当に馬鹿なの? あ~そうか元々、盗賊上がりだもんな? 意味がわっかんないのかなぁ?ハハハ!(馬鹿が!)」


 "盗賊"の言葉を聞いたとたんに女将の顔色が変わった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る