潺も海の狭間に消える
鬱。
私がそういうと、何故かどうも軽く聞こえる。実際、そこまで鬱ってわけでもない。ただ、どちらかと言えばというジャンルの中に入るだけ。
毎日が月曜日。楽しいことなんて何もないけど、別に嫌なことだってない。ただ単純に生きているだけの人生で、だからこそつまらない。
かといって私から何か行動を起こそうなんて気持ちも微塵と湧いてこないし、日常生活に変化が訪れる兆しも特にない。このまま数十年間生きて、死ぬんだろうなあ。だけど、別にそれが悲しくもないし、怖くもない。私が恐れているものは、毎日毎日部屋の外で声をかけてくる家族の方々だけ。
きちんと学校には通っているのに、何が問題なのだか。話を聞いていないからわからないや。まともに聞く気もさらさらない。家族の方々に感謝していることなんて、一日一食のご飯を出してくれていることだけ。明らかに無駄な事なのに、どうして毎日毎日続けてくれるんだろ。
私は極力家族の方々に迷惑をかけないように、部屋の電気も常に消している。これはある意味家族の方々に対しての当てつけなんだけど、気づいてくれないんだよねえ。
あー、今日もそろそろ家族の方々の演説の時間が近づいてきてる。寝起きの私に話しかけてほしくないんだけど、話しかけたくもないからなんにもできない。仕方がないから私は布団の中にダイビング。深く深くに沈んだら、声なんて届かない深海に潜れる。
耳をふさいだらなおよし。これが私の朝の日常。これを五分くらい続けたら、家族の方々も諦めて下の階に帰っていく。そうしたら私は学校に行く支度をして、そそくさと登校。
この五分の間が、実は私は好き。
なぜ好きかというと……なんでだろ。
あれ?なんで?自分の気持ちなのに。なんで私はこうやって布団の中に潜って耳をふさいでいる時間が好きなんだろ。あれ?
そもそも、私は何でこんなことをしているんだっけ。
「あれ……?」
頭がこんがらがる。右と左が混じったような感覚。
なんでだろうなんでだろうと考えても、様々なものが邪魔をする。その邪魔をしているものが何かすら私にはわからない。
いや、最初はわかる。邪魔しているのは私の記憶。私の記憶が何かを妨害しているのだけど、その記憶が何かという事は、わからない。
頭の中で渦が巻いている。私の記憶がどんどんと流れて行って、最終的に消え去っている。色が、形が、音が、どんどんどんどん消えていく。脳みそをストローで吸われているみたい、記憶の範囲が狭まっていく。何が消えたかもわからない、何も残らない虚無だけが私の脳に残っている。
「あああ……」
空っぽになった。
カラーン、コローンと、私の頭の中で音がしている。
「ふわぁ……」
今何時だろ。
あ、時計は壊れてるんだっけ。とりあえず起きようかな。
と思って。ベッドから起きる。なんだか寒いなあ。ドアが開いてる?
「お、おい。大丈夫か?サクラ……」
「え?」
……うーんと。
「……どちら様ですか?」
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