第13話 王太子にダンスを教わりました
次の授業は礼儀作法の時間だった。
今学期は学園で夏にサマーパーテイーが開かれるので、礼儀作法の時間を使って、それまでに1曲踊れるようになる事を目指すようだ。
「どうしよう、エルダ。私、踊ったことなんて全然無いんだけど」
私はダンス室に入る前にエルダにすがりついていた。
「大丈夫よ。先生もいきなり踊れとは言わないわよ」
「でも、殆どの人がお貴族様だから、踊ったことがあるでしょう。無いの私くらいじゃない?」
「商人の娘のメリーがいるんじゃないかしら」
「男連中は5人位、平民出身者がいるわよ」
私はエルダとイングリッドに慰められたけど、それはぬか喜びだったのが直ぐに判明した。
「はい、今学期は学期の終わりにサマーパーティーがあるので、ダンスの練習を主にします。それで、このクラスは貴族の方も多いから最初に聞きますが、全く踊ったことのない人は何人いますか」
こう聞かれたら私は手を挙げるしか無い。おずおずと手を挙げると・・・・他に手が上がらない。
「えっ。私、一人だけ?」
私は唖然とした。
「判りました。シャーリーさんだけが踊ったことがないのですね。ではまず、見本を見せていただきましょうか。では、殿下とオールソンさん。お願いできますか」
「はい」
二人は前に出た。何か、エルダはあんまり乗り気じゃないみたいなんだけど、何故? 私は踊る事が出来たら絶対に殿下と踊りたいのに! 練習したら殿下と踊れるようになるんだろうか?
魔道具の音楽が鳴り出して、二人が踊りだす。もう、二人はすごく上手かった。息もぴったりだった。それに踊るのが優雅なこと。踊った事の無い私にも、それが伝わってきた。
私は見麗しい二人の踊るさまを思う存分堪能した。
二人は踊り終えた時に、ピタリと止まってくれた。
「凄ーーーい」
私は思いっきり拍手をしていた。皆私に釣られたように拍手する。
私はゲームの一シーンを見たように堪能していた。相手はヒロインの聖女じゃないけれど、エルダはモブにもなれない私と違って、ヒロインを張れるほどに整った顔立ちをしているのだ。二人の踊る姿は本当に美しかった。
もう本当に眼福だったのだ。
「もう本当に素晴らしかったわ。エルダ、本当に殿下と息もぴったりって感じだし」
「そうよね。本当にお似合いだったわ」
私とイングリッドが褒めそやす。
「ちょっとそこ二人。違うでしょ。私はまだまだよ。殿下と息なんて全然あっていなかったし」
帰ってきたエルダは私達に文句を言った。
「えええ! そうかな?」
私には良く判らなかった。
「そうよ。アン。あれが息ぴったりに見えるならまだまだよ」
「それは私は踊ったことが無いから良く判らないけれど」
「はいはい、皆さん静粛に」
ルンド先生が手をたたく。皆話すのを止めて先生を見た。
「まあオールソンさんが言うように、まだ改良の余地はありますが、あれだけ踊れれば、良いでしょう! シャーリーさんは今のオールソンさんを目指してね」
「はあ」
私は到底出来るとは思えなかった。
「返事は『はい』よ」
「はいっ」
私は慌てて言い直した。
「じゃあ、皆、アンさん以外はペアを組んで。一度踊ってみましょう!」
「先生、なんならその間、私がアンさんにステップ教えてましょうか?」
「えっ」
私はフィル様の言葉に固まってしまった
「そんな、畏れ多いです」
「そうね。お願いできる」
「判りました」
私の言葉は無視された。フィル様がなんか不敵な笑みを浮かべてくれた。
「さあ、アンさん。人参の時は色々お世話になったからね、今度は俺がお返しをする番だよね」
ヒェぇぇぇ、何かフィル様の目が怖いんだけど。
でも、私なんかがフィル様に教えて頂いて良いんだろうか? 何か周りのみんなの目が怖いんだけど。それにフィル様に少しは慣れたと言っても、実際にこんなに間近で見るととても緊張するんだけど。
「じゃあ、アンさん。まずダンスの基本形からいくよ」
「はい」
なんかメチャクチャフィル様が近いんだけど。
「じゃあまず俺の左手に君の右手を添えて」
「えっ」
憧れのフィル様の手を触るの? そんなの無理。
「さ、早く。恥ずかしがっていてはダンスは出来ないよ」
「は、はい」
私の気持ちなんて関係なしに、フィル様が指示を飛ばしてくる。
私は右手をフィル様の手に添えた。
嘘ーーー! 憧れのフィル様の手に触れた。私は天にも昇る気持ちだった。
でも、それだけじゃなかった。
「そんなに離れていたら、踊れないから、もっと近づいて」
「えっ」
手を添えるだけでも、死にかけなのに、そんなの絶対に無理ーーーーー。
「さ、早く」
強引に抱き寄せられるような感じで、前に出された。
嘘ーーーー、フィル様に、抱かれている! 私は真っ赤になってしまった。
もう死んでも良い!
何しろ夢にまで見た生フィル様に抱かれているのだ。こんなことになるなんて思ってもいなかった。モブですらない平民の少女Aに過ぎない私が、なんと王太子殿下に抱かれるように踊りの練習をしているのだ。
それからが大変だった。それでなくても憧れのフィル様が近いのだ。と言うか、服越しに体が触れるし、手は握り合っているし、もう片方のフィル様の手は肩にかかっているし、もうパニック状態だった。それで、ステップを踏むなんて無理なのだ。
それだけでも、死にそうなのに。これからステップを踏むなんて、そんなの無理。
でも、フィル様はそんな私にも容赦なく、次々に指示を出してきたのだ。
私はもう、恥ずかしいなんて思っている余裕もなくて、フィル様の指示の下ひたすら練習させられたのだった・・・・。
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