25 約束する


「ああ、びっくりした」


 目覚めて自分が元の部屋にいることを確認し、僕は盛大に息を吐いた。

 まさかあんな激しい戦いの目にすることになるとは思わなかった。


「大迫力過ぎるよ」

「そこまでではないだろう」


 隣のアリスがむくりと置き、あくびをする。


「あの程度で驚くのは地元民として納得できん。今度はもっと激しい戦いのある場所へ招待してやろう」

「絶対しなくていいからね」

「む……」


 笑顔で威圧しておく。

 時計を見ると、いつも目を覚ます時間より三十分も早い。

 二度寝……をするには目が冴えてしまった。


「それなら、ステータスの確認でもしたらどうだ?」

「う~ん」


 ぴとりと引っ付いてくるアリスの感触を引き剥がせなくて、言うことに従う。



【ステータス】

●カナタ・コトヨ 男

●生命力 55/55

●生命装甲 300/300

●個人魔力 402/402(+300)

●スキル:魔眼lv03(霊視・魔力喰い・遠視)/個人情報閲覧/総合制御lv03/運動能力強化lv03/仮想生命装甲lv03/魔力最大値増加lv03/生活魔法lv05/空間魔法lv01/基礎魔法lv01/魔法応用lv01

●蓄積魔力値:13444

●加護:勇武の神ガバ(恐怖耐性lv02)



貯蓄魔力が前回よりもたくさん入っているし、なによりもその下に追加された新しい項目に驚いた。


「うわ、ほんとに加護がある」

「ふむ。勇武の神ガバか」

「知ってる?」

「たしか、ギルガン神派の一柱だったと思う」

「え? これ大丈夫なの? 僕、なにかした方がいい?」

「大丈夫だ。これはあくまでもあのサイクロプスを助けた感謝の印。加護の代償はあちらが支払う」

「そう……」


 それならいい……のかな?


「さて、では次はなんの魔法を手に入れる?」

「え? そんなの決まってるよ」

「なに?」


 空間魔法一択です。


「目指せ時間凍結。最強の冷蔵庫だね」

「……時間凍結したいならlv10にはせねばな」

「わかった」

「待て、それだけだとだめだぞ。総合制御と基本魔法も同じように上げなければ、使いこなせなくて大変なことになる。基礎は大事だ」

「なら、取りやすい方から取っていこうかな」


 というわけで、まずは総合制御をlv10にする。

 それから基礎魔法をlv10。

 それで空間魔法をlv02にする。


【ステータス】

●カナタ・コトヨ 男

●生命力 55/55

●生命装甲 300/300

●個人魔力 402/402(+300)

●スキル:魔眼lv03(霊視・魔力喰い・遠視)/個人情報閲覧/総合制御lv10/運動能力強化lv03/仮想生命装甲lv03/魔力最大値増加lv03/生活魔法lv05/空間魔法lv02/基礎魔法lv10/魔法応用lv01

●蓄積魔力値:1244

●加護:勇武の神ガバ(恐怖耐性lv02)


 こういうことになった。


「思い切るな」

「基礎は大事なんでしょ?」

「それはそうだがな」


 レベルが一つ上がった空間魔法は広さが六畳間ぐらいになった。

 荷物を置いておく倉庫ができたと思えば心強い。

 冷蔵庫を変えるようになるのが早いか、時間凍結に至るのが早いか……このままだと時間凍結の方が早そうだ。


「ところで、基礎魔法でなにか魔法って使えないの?」

「基礎魔法は魔力の運用方法に関することばかりだからな。これ単体では魔法は使えない」

「そっか」

「その代わり、基礎魔法が高いほど、魔力の消費量が減ったり、効果が上がったりするものだ」

「なるほどね」


 それは大事だ。


「総合制御は魔法やスキルによって変化する感覚の狂いを調整するものだが、長期間維持する魔法の制御の補助も兼ねてくれる。だから必要なのだ」


 アリスの講義が終わった頃にちょうど目覚まし時計が鳴った。




 朝食を済ませて二人で学校に行く。

 掛井君と仲良くなったことがきっかけとなり、アリスも彼と話すようになった。

 そうなったおかげか、次の休憩時間にはアリスの周りにちょっとした人の群れができていた。


 アリスは特に困った様子もなくそれを受け入れている。

 うーん、ちょっと寂しい。


「彼方」


 人に埋もれたアリスを見ていると一色に話しかけられた。


「今日ってバイト?」

「いや、今日は休み」


 今日は金曜日。


「母さんが帰って来てるんだけど」

「ああ、おばさん元気?」

「うん。それで、彼方をご飯に呼びたいって」

「ああ……」


 そういう招待は久しぶりだ。

 僕の母と一色の母は結婚前からの仲良しで、どれぐらいかというと家を隣同士にしたぐらいの仲良しだ。

 だから、小さい頃から一色の家にはお邪魔していたし、もっと小さい頃はどちらが母親かわからなくなるぐらいに可愛がってもらっていた。

 だからご飯の誘いをしてもらうのも特別なことでもない。


「でも……」

「わかってる」


 僕がちらりとアリスを見ると、一色が頷いた。


「彼女も連れてきていいって」

「そうなんだ……」


 うーん、でもなぁ。


「焼肉にするって」

「是非ともお邪魔させていただきます」


 即答してしまった。




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