21 意外に役立つバイトタイム
【ステータス】
●カナタ・コトヨ 男
●生命力 55/55
●生命装甲 300/300
●個人魔力 402/402(+300)
●スキル:魔眼lv03(霊視・魔力喰い・遠視)/個人情報閲覧/総合制御lv03/運動能力強化lv03/仮想生命装甲lv03/魔力最大値増加lv03/生活魔法lv05/空間魔法lv01
●蓄積魔力値:1437
五時間目を保健室で過ごし、アリスの助言通りにスキルを配置した結果、こういうことになった。
「まぁ、カナタはまず色々と慣れねばならんからな」
ということだった。
色々と気になったが、まず気になったのが生活魔法、そして空間魔法だ。
生活魔法は生活に使える程度の規模の小さな魔法のことなのだけれど、着火や照明などがある。
一番気になったのが保存。パックのお肉とかなら魔法一回で一日は状態を維持できるのだそうだ。
冷蔵庫のない我が家には必須の魔法だよね。
そして空間魔法。Lv01を手に入れるのに1000も貯蓄魔力値を消費したけれど、これはあのアイテムボックスなのだ。
空間のサイズはそれほどでもないけど、それでもあるととても便利。
しかもスキルレベルを上げると、空間が広がるだけじゃなくて、時間凍結とかもできるようになるっていう。
いまの僕にとっては一番に手に入れないといけないスキルだ。
ちなみに、個人情報閲覧というのは自分のステータスを見るためのスキル。
決して、他人の秘密を覗き見るためのものじゃない。
五時間目が終わる直前に戻ると、体育教師にもう一度走るように言われた。
今度はスキルを切って普通に走る。
もちろん普通の記録。
体育教師はほっとしたような残念なような微妙な笑みで解放してくれた。
あのままスキルを使っていたらどうなったんだろう?
考えないようにしよう。
六時間目は普通に授業を受けた。
そして放課後。
「今日はバイトだから」
「ん、わかった」
部屋に戻る前にコンビニで夕ご飯を買おうってなったんだけど、アリスはやっぱり菓子パンを選ぶ。
あんパンに挑戦だそうだ。
「あの夜のパフェが懐かしい」
「バイト代が入ったらね」
「あの金塊があれば」
「未成年が大金を手に入れるのは大変だよ」
いや、未成年じゃなくても大変なんだろうけど。
ああ、そう考えると、あの金塊のことは警察から父親に話が行くかもしれない。
なにか連絡してくるかな?
そう考えると気分が暗くなってしまう。
「どうかしたか?」
「なんでもないよ」
エコバックに晩御飯を入れてコンビニを出ると、人目を避けてアイテムボックスに入れるのを試してみる。
するっとエコバックが目の前から消えた。
重さも感じない。
「うわぁ、これは便利だ」
「ふふふ、カナタも魔法文化の虜となるがいい」
悪者っぽく笑うアリスと一緒に部屋に帰り、僕はバイトに向かう準備をする。
「アリスは留守番しててね」
「なんでだ? 我も行くぞ」
「でも」
「二人で働けば給金も二倍になろう」
「いや、でも急には雇ってもらえない……」
と、言いかけて僕は彼女が当たり前のように高校に通っている事実を思い出した。
「不可能ではなかろ?」
「だね」
「でもそれなら、もうちょっと大人しい格好にならないと」
さすがにゴス服で食料品店のバイトは無理だと思う。
「ふむ、どういうのがいい?」
「ええとね」
そういうわけで、スマホで開いた通販サイトで大急ぎで参考になりそうなものを探した。
結局、辿り着いたのは黒のパンツと無地のシャツという恰好。
彼女はそれでにさっと着替える。
魔法便利。いつかは僕もあれが使えるようになるのだろうか?
「お揃いだな」
「そうね」
無難な僕の格好になってもアリスの美少女度はまったく損なわれない。
美少女ってすごいね。
食料品店に到着してさてどうなるかと思ったけど、すでに何回か来てるみたいな態度でアリスは受け入れられた。
それからは二人で商品棚に商品を補充していく。
運動能力強化を使うとジュースとかの重い商品を運ぶのがすごく楽になった。
試しに魔眼の遠視を使うと自分のいない場所も見て回れて、どこの商品が売れて少なくなっているかがすぐにわかった。
帰る頃には店舗内の商品棚をパンパンにすることができた。
「いやぁ、ご苦労様」
終わり時間になってバックルームに戻ると、店長が機嫌よく僕たちに声をかけてジュースと割引弁当を奢ってくれた。
アリスが甘いものが良いと言うと、店長は苦笑しながら割引のケーキと交換してくれる。
他の店員さんやパートさんもそうだけど、すでにアリスを店のマスコットとして甘やかすモードに入っている。
「そういえば琴夜君って、美名城さんの連絡先って知ってる?」
「え? いいえ」
「だよねぇ」
「どうかしたんですか?」
「連絡なしで休んでいるんだよ。念のために電話してみても通じないし。真面目そうだと思ったんだけどなぁ」
「はぁ」
背筋が寒くなったけど、この場ではなんとか表情を保った。
「見かけたら連絡くれって伝えといて、それじゃあお疲れ様」
「お先失礼します」
「ではな」
明日の朝パンを買って帰る。僕はルヴァンバターロール。アリスはイチゴスペシャル。……紙パックの野菜ジュースも買う。
わずか二日でアリスの偏食を何とか食い止めねばならぬという使命感が完成してしまってる。
「それにしても遥さんはどうしたのかな?」
「ふむ」
僕も数日バイトを一緒にしただけだけど、無断でバイトを休むような人だとは思えない。
やっぱり、あの時になにかあったのではないか?
心配になる。
「探すか?」
「できる?」
「その体制は作ったからな。有用性を示しておかなければな」
そうか。
「だから貯蓄魔力値を残してたんだね」
「まぁな」
「さすがはアリスだね」
「もっと褒めるがいいぞ」
「それで、どれがいいの」
「まずは魔眼のレベルを上げて魔法強化を手に入れろ」
「わかった」
ええと……あ、これか。
魔眼がlv04になって追加能力として魔法強化を選択する。
「それから基礎魔法を獲得して、次に魔法応用を手に入れろ」
「わかった」
言われた通りの順で基礎魔法lv01と魔法応用lv01を手に入れる。
消費魔力値は400と100と100で600。
「では、生活魔法の失せもの探しを魔法応用で魔眼の遠視にかけ合わせろ」
「うん? ん~……ああ、こういうことか」
アリスに言われたことをなんとか実行する。
生活魔法の効果は小さい。失せもの探しの魔法も六畳間分ぐらいの空間でしか効果は及ばない。
だけど、遠くを見る魔眼・遠視と併用することでその効果は遠距離に及ぶ。
及ぶはず……なんだけど……。
「う~ん?」
「どうした?」
「なにも感じないけど?」
「なに?」
「いやほんとに」
「そうか」
「どういうこと?」
「お前の感知できる距離よりも外にいるか、それとも……」
「それとも?」
「死んでいるか、だな」
アリスが不吉なことを言う。
だけど、帰るまでにいろいろしてみた結果、僕の魔眼・遠視は市内を見るくらいがせいぜいだということが判明して、少しだけ気分が落ち着いた。
「僕が探せないっていう可能性もあるよね?」
「まぁな」
アリスの返事は乗り気じゃない。
前に冗談で浮気がどうと言っていたけど、もしかしたら本気で疑われているのかもしれない。
「アリス」
「なんだ?」
「僕が遥さんを心配するのは、バイトの先輩で、もしかしたら僕自身がその現場にいたからかもしれないから、だよ?」
「……む」
「浮気とかじゃないからね」
「わかっておるわ!」
ムキになって答えるアリスは飛びつくように僕の腕に絡みついてきた。
「バイト代が入ったら、絶対の最初に店のパフェだからな!」
「はいはい」
アリスの照れたふくれっ面で心配する気持ちが癒える。
……まだ僕の気のせいかもと言えるはずだ。
ただ僕が臆病なだけだろうか?
さっさと警察に届けておくべきだろうか?
だけどまだ、本当に行方不明と決まったわけではないし。
うーん、僕が優柔不断なのかな?
そんな心配をしながら部屋に戻り、もらった弁当を食べてから風呂に入り、僕たちは寝た。
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