19 ステータスはあります


 というわけでお昼休憩。

 今日も購買でパンと野菜ジュース。人気だと噂のカツサンドのゲットに成功。

 アリスはチョコチップメロンパン。

 食べている場所は昨日と同じベンチだ。


 ていうか、アリスが甘味一択過ぎて食堂に行くって選択肢がないね。


「カナタがなにかしたのは見ていたぞ」


 四時間目の話をするとアリスはそう答えた。


「だが、なにが起きたのかはわからん」

「ええ……」

「だから、我にこの世界のことで答えを求めるな」


 それは正論なんだけど……。


「でも、魔眼をくれたのはアリスだし」


 さっきのことは、絶対に昨夜のことが関係しているわけだし。


「あの黒いののことはわからんが、魔眼がどうなっているかはわかるぞ」

「そうなの?」

「自分で確かめろ」

「どうやって?」

「ステータスと念じてみろ」


 おおう。まさかそれができちゃうのか。

 どきどきしながらステータスと心の中で呟く。


 目の前に光の板が現れた。


【ステータス】

●カナタ・コトヨ 男

●生命力 55/55

●個人魔力 102/102

●スキル:魔眼lv02(霊視・魔力喰い)/個人情報閲覧

●蓄積魔力値:5087


「…………」


 じょ、情報が少ない。


「チート人生には程遠いなぁ」

「ちーと?」

「ええとね……高能力であらゆる問題を圧倒的に解決して楽して暮らそうみたいな?」

「カナタはそうしたいのか?」

「そりゃ……辛いことなんてない方がいいよね」

「ふうむ……」

「あ、でもとりあえずはいまのままでいいよ!」


 嫌な予感がして慌ててそう言った。

 成長してるって感じるのも楽しいよね。


 っていうか、なんかアリスがしそうな気がしたから機先を制しておく。

 いまでも十分常識が変化してるんだから。


「アリスには今でも十分に助かってるから」

「そうか?」

「そうそう」

「ふむ。ならよいが」


 納得して幸せそうにチョコチップメロンパンを齧る。

 その姿は小動物みたいに可愛いのに。

 いままでしてもらったことよりもっとすごいことができる気がするんだよね。


 だって、昨日の異世界体験での森って、アリスが作ったとか言ってたしね。


「教室でのことって、魔力喰いが関係してるのかな?」

「そうだろうな。霊視で見て、魔力喰いで処分したのだろう」


 そんなことよりもと、アリスが顔を近づかせて来る。

 あれ? これって僕以外にも見えてる?


「蓄積魔力値の近くになにかないか?」

「え? あ、スキル購入?」

「そうそれだ」


 購入とはまた俗っぽい。

 ていうか、ゲームっぽい。


「え? そっちの世界って本当にこんなのあるの?」


 異世界小説であったりするけど、まさか本当に。


「まさか」


 僕の疑問をアリスが笑う。


「これはカナタに合わせて我が用意したものだ」

「え?」

「スウィッチにあったゲームを参考にしてな。おかげで夜更かししてしまった」

「…………」


 だから寝起きが悪かったのかと納得した。

 したけど。

 勤勉なのはどっちなのかと言いたい。


「ええと、ありがとう」

「夫のためだ」

「おおう」

「嬉しかろう」

「……うん」


 にこりと微笑まれると……照れる。


「機能の説明に戻るが、そのスキル購入で貯蓄魔力値を消費することでスキルを手に入れたり強化したりすることができる。覚えられるスキルの数はカナタ次第だが、手に入れられるスキルの種類や強化の限界は我が基準となっている」


 アリスが基準?


「つまり魔王になれるってこと?」

「その頂はなかなか高いぞ?」

「ソウデスネ」


 今度はにやりと笑われた。

 本日の春の日差しが豪雪地帯の冷気に呑まれるぐらいにすごい迫力でした。


「それはともかく、スキル購入を使ってみたらどうだ?」

「いま?」

「カナタは魔力に順応しているわけではないからな。体を鍛えるような自然な成長はしばらく望めまい。だからこそこのシステムを用意したのだからな」

「うーん」

「とりあえず、お試しで一つやってみるのはどうだ?」


 そこまで言うならとスキル購入をポチっとする。


「うわっ」


 新たなウィンドウが現れたのだけど、それはとても大きい。目の前全てが情報で覆われてしまった。


「なにこの数」

「魔王に至る道。その初級編というところだな」

「これで⁉」

「これでだ」


 さすがは魔王。さすまお。


「うーん、じゃあどれにしよう」

「変化を理解したいならこれなんてどうだ?」

「これ?」


 アリスが示したのは運動能力強化というスキルだ。

 その辺りには他にも仮想生命装甲とか魔力最大値増加、身体強度強化とか肉体を鍛える系がずらっと並んでいる。


「その名の通り運動能力を向上させるスキルだ。それと、こういう能力を強化するスキルを取る場合は、この総合制御というスキルを同じレベルに保っておくようにな。そうでないと大変なことになる」

「わかった」


言われた通りに総合制御と運動能力強化を購入。

 一つ購入で貯蓄魔力値を100消費した。

 ぽこんと、僕のステータスに総合制御lv01と運動能力強化lv01が追加された。


「スキルレベルを上げるには次のレベル数×レベル1時の消費貯蓄魔力値が必要になる。いくつか例外もあるが、それだけ強力だと思えばいい」

「わかった。じゃあ……」


 と、僕はそのまま総合制御と運動能力強化をlv03まで上げてみた。

 これで合計1200の貯蓄魔力値を消費したことになる。


【ステータス】

●カナタ・コトヨ 男

●生命力 55/55

●個人魔力 102/102

●スキル:魔眼lv02(霊視・魔力喰い)/個人情報閲覧/総合制御lv03/運動能力強化lv03

●蓄積魔力値:3887


 うん、ちゃんとステータスに反映されている。


「あれ? アリスどうしたの?」

「いきなり思い切るな」

「え?」

「まぁ、そのための総合制御だ。次の授業で成果を試してみると良い」

「え?」


 次の授業は体育だ。





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