第19話

「よっ、お待たせ」

「そんな待ってねぇから大丈夫だ。それより、見られてないよな?」

「その辺は抜かりなしだぜ」


 昼休み。俺と正鷹は屋上に来ていた。

 ここは、本来は立ち入り禁止だ。鍵もかかっていて普通だったら入ることが出来ない。

 だけど、俺と正鷹だけは入ることが出来る。その訳は、屋上の鍵を作ったからだ。

 前に避難訓練の時に2人で職員室に忍び込んで、屋上の鍵を拝借してスペアを作ったのだ。


「いやぁ、しかし屋上に来るのも随分と久しぶりだな」

「だなぁ」


 少し前に、ちょいグレの奴らが屋上に向かう階段のところで、タバコ吸っていたせいで来れなかったんだよな。まぁ、すぐに先生達に見つかって停学くらったらしいけど、おかげでしばらくの間、先生の見回りが強化された。

 ったく、本当に迷惑極まりないぜ。


「とりあえず、飯食おうぜ。話は食いながら話す」

「了解だ」


 俺は持ってきた弁当を広げて食い始める。なんと、今日は珍しいことに歌夜の手作りだ。普段は作るのがめんどくさいという理由で、2人ともコンビニか学食で済ませている。だから、出かける前に弁当を持たされた時は結構驚いた。


「んで? 恋愛相談ってのは?」

「あぁ実はな。俺、好きな人が出来たんだよ」

「いや、恋愛相談って言うくらいなんだから、んなことは分かってるよ。俺が知りたいのは、誰を好きになったのかだ」

七星姫野ななほし ひめの先輩」

「は!? 七星姫野先輩って、あのか?」

「あぁ」


 マジかよ……その人だったら、俺でも知ってる有名人だ。

 多分、学校で1番モテるくらいのスーパー美人だ。成績優秀で女子テニス部のエースだ。おまけに財閥の一人娘で超お金持ち。性格も良くて、誰に対しても優しく接することから、付いたあだ名が、女神ミューズ


「お前、正気か? いくらなんでも、高嶺の花過ぎだろ」

「んなことは、分かってるよ。でも、好きになっちまったんだから仕方ねぇだろ」

「いやまぁ……そうだけどよ」


 にしても、よりによって七星先輩か。こりゃまたすげぇ人を好きになったもんだな。

 確か、ファンクラブがあって下手に手を出しちゃいけないみたいな、暗黙のルールがあったはずだよな。噂では、ルールを破ったら会員全員にリンチにあうって聞いたことがあるぞ。


「とにかくさ、難しいっての十分分かってるけど、協力してくれよ」

「まぁ、協力するのは問題ねぇよ」

「おぉ! サンキュー匠馬!」

「にしても、お前が七星先輩みたいなタイプに興味持つなんて意外だな。どういう風の吹き回しだよ?」


 正鷹はなんというのかな? みんなが好きになる人、アイドル的な人はあんまり好まない。どちらかと言うと、地味系の目立たない人が好みだ。


「いや、そうなんだけどさ。実はな、七星先輩の意外な一面を見ちゃって、それで惚れちまったんだよ」

「意外な一面? 何だよ?」

「夏休み中の部活終わりにさ、暇だったからカモメ屋に行ったんだよ」

「ほう」


 カモメ屋とは、学校近くにある寂れたゲーセンだ。置いてあるのは、古い格ゲーだけの店だ。

 だから寄り付くのは、そういうのが好きな奴らだけで、うちの学校の人で行ってるのはほとんど居ない。


「んで、そこに七星先輩が居たんだよな」

「マジで?」

「マジマジ。しかも1人でさ」

「へぇ。んで? そこのどこに惚れる要素があるんだ?」

「いやさ、その日はちょうどイベントやっててさ、それに七星先輩が参加してたんだよ。んで、なんと脅威の30人抜きしてたんだよ」

「は!? 30人抜きって本当か?」

「あぁ」


 あそこに通ってる人は、ほぼ全員ガチプレイヤーばかりだぞ。しかも、どいつもこいつも神業みたいやテクニックを持ってるから、1人抜きするだけでも奇跡に近い。


「やっばいだろ? しかも、普段からは想像出来ないくらいの暴言を吐きながら、オラオラ言いながら次々と勝ち抜いていくんだ。そのギャップがたまらなくてさ、一瞬で惚れたね」

「いや、惚れるポイントがおかしくね?」


 でもまぁ、あの七星先輩がねぇ。正鷹が嘘ついてるとは思わねぇけど、確かに意外だな。

 うん、ちょっと興味出てきたな。


「でさ、今日もイベントあるから一緒に行かね? もしかしたら七星先輩が参加するかもしれないし」

「別にいいけど、お前部活は?」

「大会で負けたからな。今日と明日は休みだ」

「そっか。なら行ってみるか。仮に居なくても、久々に俺もあそこのゲームやりたいわ」

「んじゃ、決まりだな」

「おう」

「さて、そろそろ戻るか?」

「んだな。こっから出ていくとこ見られると、色々とまずいし」


 ――――――

 ――――

 ――


 教室に戻った俺は、5限が始まるまで自分の席でスマホをいじっていると、歌夜からメッセージが飛んできた。


『昼、どこに行ってたの?』

『正鷹と飯食いに行ってた』

『あっそ。弁当どうだった?』

『美味かったぞ( -`ω-)b』

『そっか、よかった。明日も作るから楽しみにしててね』

『あぁ、ありがとな(ㅅ´꒳` )』


 チラリと歌夜の方を見ると、だらしなくニヤニヤしながら、スマホを眺めていた。

 やれやれ……随分と可愛らしくなっちまったな。

 こりゃ俺もちゃんと考えないとだな。


『今日一緒に帰らない?』

『悪い。今日は正鷹と約束があるんだ』

『分かった。遅くなるの?』

『多分そんなに遅くはならないと思う。まぁ晩飯までには帰る』

『了解』


 キーンコーンカーン


 お、昼休みが終わったな。

 さて、めんどくせぇけど午後の授業も頑張りますかな。


 ――――――

 ――――

 ――


「おーい、匠馬! 悪い待たせたな」

「んにゃ、そこまで待ってねぇから大丈夫だぞ」

「そかそか。んじゃ行こうぜ」

「おう」


 日直で遅れた正鷹を校門前で20分ほど待って、合流した俺達は、今日の目的地であるカモメ屋に向かった。


「そういや、今日は何のイベントなんだ?」

「あれ? 言ってなかったか?」

「聞いてないな」

「シカロボ2だよ」

「嘘だろ? 神ゲーじゃねぇか」


 シカロボ2。シカをモチーフにした人型ロボット同士が戦う格ゲーだ。人気もかなり高くて、今じゃ6まで出ている。その中でも、2はとにかく人気が高くて、シカロボの知名度を上げたと言っても過言では無い。


「でも、いつそんなの入ったんだよ? あれって、手に入れるのはほぼ不可能って言われてただろ」

「そうなんだよ。俺も驚いてさ、店長に聞いたら匿名で2台だけ寄付されたんだと」

「へぇ、あんなボロ屋にお宝を寄付するなんて、変わったやつもいるもんだな」

「おいおい、そんなこと言うなよ。店長泣くぞ」

「泣かしとけばいいんだよ。あの廃人ゲーマーなんて」

「ははっ、ひっでぇな」


 カモメ屋の店長は、元プロゲーマーだ。何でも、そこそこ名前が売れてたらしい。

 ただ、そのプレイスタイルは超が付くほどのストイックで、子供相手でも一切の手加減をせず容赦なくボコる。


「あ、因みに今回はシカロボの第2回イベントだぞ」

「そうなのか?」

「あぁ、んで第1回の優勝者が七星先輩だ」

「なるほどな。てか、第1回のイベントがあったのって夏休み中だろ? 2回目早くねぇか?」

「イベント自体が好評ってのがあったけど、第1回で店長が七星先輩にボコられたからな。悔しかったんじゃね?」

「あぁ……」


 なるほどねぇ。それは確かに納得だわ。


「っと、着いたな」

「めっちゃ人いるな。もう始まってんじゃね?」

「多分な。でも、飛び入りもオッケーだから大丈夫だろ」

「そっか。そんじゃ入ろうぜ」


 店の中に入ると、予想通り既にイベントは始まっていた。

 ゲーム機の周りには、かなりの人が群がっていて、誰が対戦しているのかここからじゃよく見えないな。


「あれ? 正鷹と匠馬じゃねぇか」

「あ、店長。どうもっす」


 相変わらず、すげぇ見た目してるな。ごっつい体つきでアフロ頭のおっさん、カモメ屋の店長である後藤さんだ。


「何だ? お前らも参加しに来たのか?」

「まぁそんなところっす。飛び入り出来ますよね?」

「あぁ構わねぇよ。てか、むしろしてくれると助かる。誰でもいいから、あの子を止めてほしいんだよ」

「もしかして」

「あぁ、第1回の優勝者だ。現在14連勝中だ」


 あー何となく分かったわ。絶対に七星先輩のことだな。しかし、14連勝ってマジですげぇな。


「店長は出ないんすか?」

「もうとっくに負けてるよ。ん? てか、匠馬。お前、声が出せないんじゃなかったか?」

「色々あって、出せるようになったんすよ」

「ふーん。そか、よかったな」

「うっす」


 おぉ、初めてこんな軽い感じな対応されたな。

 ちょっと新鮮で、これはこれで悪くないな。


「おおぉぉー!」

「すげぇ! また勝ったぞ!」


「どうやら、15人抜きしたみたいっすね」

「はぁ……あいつでもダメだっか」

「ん? 知り合いっすか?」

「あぁ、昔の仲間だ」


 店長の昔の仲間ってことは、元プロゲーマーかな?


「クソ! こうなったら、頼みの綱はお前らだ! 何がなんでも勝ってきてくれ!」

「随分と必死っすね」

「当たり前だ! これはカモメ屋の面子に関わる問題だ。だから頼むぞ、四天王!」

「店長……その呼び方恥ずかしいから止めて下さいよ……」


 恥ずかしいことに、俺と正鷹はこのゲーセンでは四天王って呼ばれている。よく通っていた時にイベントで勝ちまくっていたら、いつの間にかそう呼ばれていたんだよなぁ。


「まぁ細かいことは気にするな! とりあえず、参加してくれるんだよな?」

「まぁそのために来ましたからね。正鷹も出るだろ?」

「あぁもちろんだ」

「決まりだな! おーし! お前ら道を開けろ! カモメ屋のピンチに四天王の2人が駆けつけてくれたぞ!」


 だから、恥ずかしいっての……


「うおぉー! 帝王・匠馬とゴット正鷹だ!」

「こりゃ面白いことになりそうだぜー!」


 大歓声をあげながら、ギャラリー達が道を開けていく。


「へぇ……四天王の帝王とゴットか。ようやく骨のありそうなのが出てきたわね」


 そう言って、ゲーム機に座っていた1人の女性が立ち上がり、俺達の方へ顔を向けた。

 分かっていたけど、やっぱり七星先輩だ。

 クリーム色のストレートロング。ぱっちりとした大きな目に整った顔立ち。そして、どこか気品が漂う立ち振る舞いをしている。ぱっと見ただけでも分かるくらい、育ちの良さが出ている。


「まぁとりあえず、早く座りなさいよ。この私様が叩きのめしてあげるわ」


 うわぁ……ものすげぇ言い方だな。私様なんて言ってるやつ初めて見たぞ。これが、あの七星先輩かよ。学校とでは大違いだな。

 てか、七星先輩、俺達が同じ学校だって気がついてない? 一応、制服着ているんだけどな。


「どうしたの? 早くしなさいよ」

「なぁ匠馬?」

「あぁ分かってるよ」


 とりあえず、今はあれだ。

 このLLな態度を叩きのめしてやりたい。何か普通にムカつくわ。


「どっちからやる?」

「俺からやる。正鷹は見とけ」

「よし、頼んだぞ。匠馬!」

「任せとけ」


 そう言って、俺は向かいの席に座った。そして直ぐにゲームが始まり、機体選択の画面になる。

 俺が選んだ機体は、クロシカS-1だ。この機体は、攻撃力こそは低いが射撃と近接格闘をバランス良くこなせるオールラウンダータイプだ。とにかく扱いやすく安定して強い。俺が最も得意とする機体だ。


「ふん。面白みのない機体を選ぶわね」

「ほっといて下さい」

「あっそ」


 さて、七星先輩は何を選ぶんだ? 射撃が得意なアカシカZか、それとも機動力重視のシカペガサスかな?

 まぁ、どれが来ても負ける気はしねぇけどな。


「なっ!?」


 一角シカだと!?

 嘘だろ? そんな超高難度の機体を使うなんて。

 一角シカは、全機体の中で1番の攻撃力と機動力を持っている最強機体の一体だ。ただ、体力の低さとコマンド入力の難しさに加えて、コンボを繋げにくいっていうデメリットを持っている。

 だから、プロゲーマーでもお手上げするクソ機体だ。そんな機体を使ってくるなんて、俺のことバカにしてるのか?

 くそ、これはますます負けらんねぇな。


「さぁて、血祭りにしてあげるわ」

「どうぞご自由に。やれるものならね」

「上等じゃない」


 準備時間のカウントがゼロになり、対戦が始まった。

 俺はまず距離を取り、遠距離からビームライフルで牽制の射撃をする。


「ふんっ、そんなの当たるわけないじゃない!」


 七星先輩は射撃をしっかりと回避して、横ステップを踏みながら距離を縮めてくる。

 定石通りだな。だけど、動きが単調過ぎるんだよ!

 バックステップ、横ステップとフェイントを織り交ぜながら後ろを取る。よし、こっから2段格闘から横ステップ踏んでの前派生格闘で決まりだ!


「甘いね!」

「なっ!」


 ファントムステップだと! 横ステップとバックステップをほぼ同時にすることで出来る、超高等テクニックじゃねぇか。

 やばい、今度は俺が後ろを取られた。


「オラァ! これでおしまいよ!」


 横派生格闘からの2段格闘で打ち上げられての掴み技。完璧な必勝コンボだ。


「ち!」


 あっという間にHPはゼロになり、一機目が落とされる。すぐに俺の2機目が来て、戦闘が再開される。

 シカロボは、相手の機体を先に3機落とした方が勝ちだ。だから、俺の残機は残り2機だ。


「ははっ! 大したことないわね!」

「言ってろ!」


 くそが、結構やるじゃねぇかよ! だったらもう、遠慮することはねぇな!

 射撃で牽制しながらのブーストダッシュで、一気に距離を詰める。


「バーカ! そんなの当たるわけないでしょ!」

「バカはお前だ! さっきのでオーバーヒートで動きが遅くなってんだよ!」

「しまった!」


 特殊射撃から横ステップ踏んでの下格闘のコンボ。今ので相手の残りHPは1割まで削った。


「くそっ!」

「逃がすかよ!」


 体制を立て直して、空中に逃げようとするところに、飛び格闘で追撃。あっちの方がスピードが早いけど、距離が近いから躱せねぇ。しっかりと、攻撃を当てて七星先輩の一機目を落とす。


「ちくしょう! 死ね!」


 すぐに七星先輩の2機目が来る。

 今度は七星先輩がブーストダッシュで、距離を詰めて来た。

 俺は後ろに逃げて距離を取る。相手は典型的な格闘機だ。わざわざ付き合ってやる必要はない。


「逃がすわけないでしょ! ボケェ!」

「なっ!? 死体蹴りしてきやがった!」


 シカロボは、フィールドに倒された機体がそのまま残る。その機体を盾として使ったり、攻撃の手段として使うことが出来る。ただ、それはマナー違反だ。出来てもやらないのが、暗黙の了解となっている。それなのに堂々と使ってきやがった。

 蹴り飛ばされた機体が、俺に命中して動きが止まった。その隙を付いて、一気に距離を詰められる。


「死ねぇ! オラオラオラァ!」

「くそ!」


 無防備な状態のまま、ラッシュを叩き込まれてHPがゼロになり落とされた。


「おい、匠馬! このままじゃやべぇぞ!」

「うるせぇ! んなこと分かってる! 少し黙ってろ!」


 このクソッタレが! 頭にきたぞ。絶対にぶっ潰してやる!

 俺の最後の機体が来て戦闘再開。

 さっきみたいに、下手に距離を取るとまた死体蹴りされかねない。だったら、ここはあえて近接戦に持ち込んでやる。

 ブーストダッシュと横ステップを織り交ぜながら、変則的に近づく。


「そっちから向かって来てくれるなんて、好都合よ! オラァ!」


 バックステップを踏んでからの特殊格闘が繰り出されるが、そんなのは想定内だ。


「嘘っ!?」

「悪いけど、俺もファントムステップ出来るんだよ!」


 ファントムステップで背後に回り込んで、下格闘から前派生格闘、そしてオマケの特殊射撃のコンボだ!


「こんのっ! 調子に乗るな!」


 前派生格闘が決まる寸前で、ファントムステップでコンボを躱される。そして、ブーストダッシュで逃げられる。

 だけど、残念だったな。それも想定内だぜ!


「ちょ!?」


 俺が今コンボを決めたところは、さっき七星先輩の一機目を落としたところだ。つまり、そこにはあれがある。


「死体蹴りなんて卑怯よ!」

「うるせぇ!」


 目には目を死体蹴りには死体蹴りだ。先にやったのはそっちなんだ。文句は言わせねぇよ!

 死体蹴りをくらって、動きが止まったところに前派生格闘を決め込んで落とす。


「おっしゃ! 2機目撃破だ!」

「ぶっ潰す!」


 お互いこれで最後の機体だ。ここまで来たら絶対に負けらんねぇ。

 俺と七星先輩は、ほぼ同時にブーストダッシュで突撃。

 ち、同じように突っ込んで来たか。だったら、この後の展開は横ステップによる背後の取り合いだ。一瞬でも入力が遅れた方の負けだ。


「中々やるわね!」

「そっちこそな!」


 ち、埒が明かねぇな。仕方ねぇ、一か八かで仕掛けてみるか。

 もう何回目かの横ステップの後に、ファントムステップをする。これで、相手のタイミングを崩す。


「やばっ!」


 よし、取った!

 急な動きの変化に惑わされてくれたおかげで、背後を取ることが出来た。

 このチャンスを逃す訳にはいかねぇ! 俺はすぐに必勝コンボを入力する。

 2段格闘から横ステップ、そして前派生格闘。これで決まりだ!


「ふふっ、なーんてね」

「なっ!?」


 初めの攻撃が決まる瞬間、俺の機体は宙に浮かされていた。


「残念。惜しかったわね」


 や、やられた……返し角だ。

 返し角とは、カウンター技だ。条件は相手に背後を取られている時にのみ使える。ただ、タイミングがシビアで、狙って使える人なんてほとんどいない。俺ですら、10回やって1回成功すればいい方だ。

 それを狙ってやりやがった。


「トドメよ! オラァー!」


 宙に浮かされ、無防備な俺の機体に容赦なくコンボを決められHPがゼロになる。これで3機目。俺の負けだ……


「た、匠馬……」

「すまねぇ……負けちまった……」

「ふぅ……あなた、かなりやるわね。流石、四天王って呼ばれているだけあるわね。正直、焦ったわ。でも、私の勝ちね」

「あぁ……完敗だよ」

「さて、次の相手はあんたでいいのかしら?」


 七星先輩は、ニヤリと笑いながら正鷹にといかける。


「あぁ、今度は俺が相手だ」

「上等よ」

「匠馬、後は任せとけ」

「頼んだぞ。正鷹」

「おうよ!」


 大丈夫だ。正鷹は俺より強い。きっと七星先輩を打ち負かしてくれるはずだ。負けんじゃねぇぞ!

 あれ? そういえば、何か忘れている気がするな……まぁ、いいか。

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