第2話
「いやぁー、
「本当ですか!
「あー翼ちゃん可愛いなぁ! 朝姫さんなんて他人行儀じゃなくて、お姉ちゃんって呼んでいいんだよ! てかてか、むしろ呼んで!」
「そ、それじゃあ……アサ姉でいいなのだ?」
「アサ姉……うん! いいねぇそれ! イェーイ!」
「イェーイ! なのだ!」
ど、どうしてこうなった……いや、そもそも何が起きているんだよ……
「ちょっと匠馬。このカオス過ぎる状況なんとかしてよ」
困り果てた視線で、助けを求めるように言ってくる。
『無茶言わんでくれ……( ب_ب )』
「だよねぇ……」
歌夜とはぁ……と、ため息をついて2人で頭を抱えながら台所に突っ伏した。
「おーい、歌夜に匠馬ー! 酒が足りないぞー!」
「お姉ちゃん飲み過ぎだって……」
「うっさいなぁ。それが1日働いてきた人への態度かぁー? いいから早く持ってきてー」
「もぉ分かったわよ」
歌夜はやれやれといった感じで、冷蔵庫から缶ビールを取り出して朝姫さんに持っていく。
朝姫さんは缶ビールを受け取ると、カシュっと栓を空けると一気に煽る。
「っかー! これよこれ! やっぱ、お酒は人類の万能薬だねぇ。お酒以外の飲み物なんて、この世から消え失せればいいのに。翼ちゃんもそう思うよね?」
「激しく同意するのだ!」
いやいや、同意しちゃダメだろ。何言ってんだよこの子。
しかしまぁ……本当に参っちまうぜ。まさか、こんなことになるなんてなぁ。
なんでこんな事態になったかというと、俺と歌夜が夕飯の買い出しに行くところまで遡る。
――――――
――――
――
『そういや、晩飯は何にするか決まってんのか?』
「今日は豚のしょうが焼きよ。お昼にお姉ちゃんから連絡きた」
『了解だヾ(`・ω´・)ゞ』
となると、目的地はいつものスーパーで決まりだな。
スーパー・ジャーマンスープレックス。元プロレスラーが経営する超激安スーパーだ。
いやぁこのスーパーまじで安いんだよなぁ。豚肉2キロ500円とかお惣菜1パック200円などなどで、主婦の強い味方だ。
「見つけたのだ!」
「それでさ匠馬。タレは辛い方がいい? それとも今日は甘くしとく?」
『うーん。辛い方で』
「了解ー」
「って、無視しないでほしいのだ!」
ん? もしかして俺たちのことか?
そう思って振り返ると、そこには今朝助けた女の子がいた。
「ん? 知り合い?」
『今朝の女の子だ』
「あーこの子が。それで何の用?」
「用があるのは、あなたじゃなくて真田匠馬君のほうなのだ。だから、あなたは黙っててほしいのだ」
「はぁ? あんた喧嘩売ってんの?」
眉間に皺を寄せて、詰め寄って行く歌夜の襟首を掴んで止める。
「何すんのよっ」
『落ち着けよ(´・ω・)っ。喧嘩してどうすんだよ』
「う……ごめん」
『んで? 俺に何か用か?』
「今日はありがとうなのだ。助かったのだ。だからお礼をさせてほしいのだ」
『あのことは気にすんなって言ったろ。だからお礼はいらない』
「そうはいかないのだ! てか、なんでさっきからスマホのメモアプリで会話してるのだ? 話しにくいのだ」
あぁ……やっぱそうなるよな。
どうすっかな。別に隠してるわけじゃねぇけど、よく知らねぇやつに話すのはちょっと嫌だしなぁ。
「ごめん。悪いけど、それについては聞かないであげて」
「だーかーらー! ボクは真田君と話しているの。だから邪魔しないでほしいのだ」
「うるさい!」
「っ!」
「とにかく、その話題だけはやめて」
「あ、うぅ……」
ったく……どうすんだよこの空気。いやまぁ、確かに助かったけどさ。
『すまんがそういうことだ』
「わ、分かったのだ……」
『いや、気にすんな(´∀`)。それより、君の名前を聞いてもいいか?』
「あ、そういえば名乗ってなかったのだ。ボクの名前は、
『翼ちゃんだね。よろしく。俺の名前は、ってもう知ってるのか。んじゃ、代わりにこいつの名前は
「ちょっと何勝手に教えてんのよ!」
『別にいいだろ。とりあえず、歌夜は人に突っかかり過ぎなんだよ。そんなんだから友達出来ないんだぜʅ(๑ ᷄ω ᷅ )ʃ』
「余計なお世話よ!」
痛てぇ……また脳天チョップ食らった。しかも、今回は結構強めだっだぞ。ったく……これ以上頭が悪くなったらどうすんだよ。ただでさえ、赤点ギリギリなのに。
「まぁいいわ。とりあえず、私達はこれから夕飯の買い出しがあるから、そろそろいいかしら?」
「因みに今日の献立はなんなのだ?」
「豚のしょうが焼きだけど」
「それなら、ボクにおまかせなのだ! 今日のお礼でボクが夕飯を作ってあげるのだ」
「は? 何で?」
「だから、今言ったのだ。今日のお礼なのだ。こう見えて、料理は結構得意なのだ」
こらこら、そんなに胸を張ってはいけないぞ。そのやたらと、主張が強いおっぱいに目がいってしまうから。
「ん? ちょっと待つのだ。何で2人で夕飯の買い出しなんてしてるのだ?」
あ、やべ。
俺と歌夜が同じ家で暮らしていることは、学校では秘密だ。流石に、同い年の男女が1つ屋根の下で暮らして居るってのは、いくら従妹同士とはいえ色々と問題があるからな。
さて、なんて誤魔化したらいいものかな。
「私と匠馬は同じ家で暮らしているのよ」
「ふぇ!? 」
え!? なんで普通に言っちゃってるのお前!?
このことに関しては、桃花さんに黙ってろって言われてたじゃねぇか。
「も、もしかして2人はそういう関係だったりするのだ……?」
「変な勘違いしないで。家の事情で仕方なくってやつよ」
「あ、あぁーなるほどなのだ」
お、一応納得はしてくれたのか? てっきり、色々と言われると思ったんだけどな。
「とりあえず、気持ちはありがたいけど遠慮させてもらうわ」
「なんで歌夜に断られないといけないのだ」
「いきなり呼び捨てにするのね……」
「ボクは細かいことは気にしないのだ」
「はぁ……まぁいいか。とにかく、いきなりそんなこと言われても迷惑なの。だから、こいつのお礼は後日別のことでお願い。じゃそういうことだから。ほら、行くわよ匠馬」
歌夜はそう言って、俺の手を引いてスーパーの中へと入って行く。
『おい、いいのかよ?』
「何? 文句あるの?」
『いや、文句ってわけじゃねぇけど。あの断り方はちょっと可哀想じゃねぇか?』
「そんなの知らないわよ。それに、あの子をお姉ちゃんに会わせたら面倒なことになる気がするし……」
た、確かに……
何かよく分からねぇけど、あの2人を会わせるのは危険な気がする。
『納得した。ナイスプレーΣd=(・ω-`o)』
「分かってもらえてよかったわ。それじゃ、さっさと買い物終わらせましょう」
『了解だ(*`・ω・)ゞ』
「あのさ、何時も思うんだけど、いちいち顔文字使うの面倒くさくないの?」
『俺の心を表現するためには必要なことなんだよ(´ー`*)』
「あっそ」
『自分から聞いといて冷たくねぇか?( ー̀εー́ )』
「気のせいよ」
いやいや、全然そんな気はしないんだけどなぁ。うんまぁ……いいんだけどね? 俺は心が広いし寛大だし? 別にいいんだけどね?
――――――
――――
――
「たっだいまー! 皆のお姉ちゃん、
「お姉ちゃんうるさい」
『お帰りなさい朝姫さん』
この人は、歌夜のお姉さんでここの家主だ。
茜色のポニーテール。整った顔立ちで切れ目。そんでもってかなりの美人。まぁ歌夜をそのまま大人にしたような感じだ。ただ、歌夜と違う所があるとすれば歌夜と比べておっぱいが貧相であることだ。
失礼なことを言うと、歌夜が山だったら朝姫さんは壁だ。まぁこんなことを朝姫さんに言ったら、リアルに殺されかねないから絶対に言わないけど。
「それより2人共、これ見てよ刮目して!」
「今度は何したの……? 何かすごく嫌な予感しかしないんだけど……」
激しく同意する。
ご機嫌な状態で帰って来る時の朝姫さんは、必ずろくでもない面倒事を持ってくると決まってる。もはや、決して覆ることのない運命とでもいうかのようにな。
「まぁまぁそう警戒しないでよ。今回は大丈夫だから!」
「ど、どう思う? 匠馬……」
『それなりの覚悟が必要だと思う……』
「ははは……だよねぇ……」
「パンパカパーン! それじゃあ発表しまーす! 白井翼ちゃんでーす!」
「「……」」
「はあ!?」
はあ!?
「どうもなのだ!」
え? 何で? 何がどうなって、翼ちゃんが朝姫さんと一緒に居るの?
「お、お姉ちゃん……何でその子と一緒に居るの……?」
「あれ? もしかして2人共知り合い?」
「知り合いっていうか何というか……て言うか、まず何でその子と一緒に居るか説明してほしいんだけど」
「あぁ、何かね家の近くをうろついていたから、拾っちゃった可愛いから!」
「うっそぉ……」
うっそぉ……
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