第9話

 山爺(やまじじい)の家に入ると君子がいた。

 とりあえず捜し出せたことに、勇人は少し胸を撫で下ろした。

「君子の娘に頼まれて、君子を捜していたと。君子を連れて行くのか?」

「いや、そうとも限らない。捜して欲しいと依頼を承ったが、見つかったら連れ戻してほしいとは、言われていない」

「ん、どう言うことだ?」

「言葉通りの意味ですが。あなた方の話によっては、このままで良いのではと思っています」

「……」

 山爺と君子は、お互いに顔見合せた。

「あなた方を見ていると、どちらかが一緒に居ることを強制したわけではないみたいなので」

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