第23話 計画は動き出した

 シンシアが馬鹿王太子に攫われてから11年が過ぎていた。


 ランドルフは10歳、カインロッドは8歳になった。

 ソフィアとジェフ、ライザとアーサーは結婚し、それぞれに子供が生まれた。


「王妃様、側妃様、大変でございます。レキソール侯爵が辺境の地で事故に遭いお亡くなりになったようです」

 王妃宮のサロンでシンシアとお茶を飲んでいるところに連絡が入った。


「えっ? フレディが……」


 その場に、一緒にいたランドルフが絶句している。

 ランドルフはフレデリック様をとても慕っていた。


 フレデリック様は、数日前に辺境の地で問題が起こり、レキソール侯爵として赴いていた。


 弟のジェフが辺境の地に向かい、王都に戻ってきた時、フレデリック様はもうお骨になっていた。


 ジェフは兄のフレデリック様はが侯爵家を継いだ為に商会を立ち上げ、分家の男爵となり、手広く商売をしていたが、亡き兄の跡を継ぎレキソール侯爵になった。


「ランドルフ、フレデリック様があなたをラックノーラン国に留学させたがっていたの。供養だと思い、ラックノーラン国の学校に行ってくれないかしら」


 シンシアがランドルフの肩に手を置きながら話している。

 フレデリック様がいなくなって以来ランドルフは塞ぎ込んでいる。


「そうだお茶会をしましょう! ランドルフとカインロッドの為に可愛い女の子を沢山呼びましょう。レキソール侯爵家の令嬢も呼びましょう。フレデリック様のお話が聞けるかもよ」


ランドルフとフレデリック様の姪をここらあたりで一度会わせておきたい。

 私はお茶会を開くことにした。


 お茶会は10歳以下の婚約者のいない令嬢限定に集めてみた。

 貴族達はランドルフとカインロッドのお嫁さん探しのお茶会だと噂しているようだ。ゴテゴテに着飾らされた令嬢達が沢山いる。


 今日はシンシアは体調がすぐれないようだ。ずっと病弱なふりはしているが本当はいたって健康。ただ、月のものが重く、その時は貧血の症状が出てしまう。


「シンシア大丈夫? 辛いなら私ひとりでもなんとかなるわよ」

「大丈夫よ。今日はランディの未来の花嫁に会えるんですもの。でも、上手くいくかしら?」

シンシアは不安そうだ。

「まかせてよ。とにかく今日は少しでも話をさせましょう。フレデリック様がいなくなってからランドルフは元気がないけど、フレデリック様の身内が来てると言えば話したがるでしょう」

「そうね。ほんとの事を教えてあげられないのが辛いわ」

「もう少しの辛抱よ」


 ランドルフはまだ本当のことを知らない。


「カインロッドの未来のお嫁さんもくるんでしょ?」

「ええ、カインロッドにも本当の事はは何も言ってないけど、父親に似て策士だから、あの子を選ぶような気がするわ」

「まぁ、私から見るとあの方もミランダも策士だと思うけど」


 シンシアはふふふと笑った。


 確かに、あの人も私も間違いなく腹黒の策士だ。シンシアみたいな良い人ではない。


 爵位順に親に連れられて子供達が挨拶にくる。


「今日はお招き有難うございます。レキソール侯爵家次女のアンジェラでございます」

「あなたがレキソール家のご令嬢なのね。伯父様が亡くなられて淋しくなりましたわね」


 シンシアがアンジェラに話しかける。


「シンシア」


 私は一歩前に出た。


「アンジェラ嬢、今日は楽しんでね。第一王子のランディ殿下や第二王子のカインロッド殿下と色々お話してみてね」

 私はアンジェラにそう言い、母親のソフィアに目で合図する。


「ありがとうございます」


 アンジェラは挨拶を終え、会場の中に紛れていった。


「もう、シンシア、ちゃんとランディと話をしてって言わなきゃだめじゃない」

「ごめんなさい。あんまりフレディ様とよく似ていたもんだから」


 アンジェラはフレディ様と髪の色が同じだ。父親のジェフも同じ色だし、伯父と姪なので似ていてもおかしくない。


 顔は母親のソフィアに似ていて丸くて可愛い感じだ。


 私は少し離れたところでつまらなそうにしていたランドルフに声をかけた。


「ねぇ、ランディ、今日はレキソール侯爵家の令嬢がきてるわよ。フレデリック様の思い出話とかしてきたら?」

「侯爵の?」


 ランドルフは気になるみたいだ。これなら上手くひっかかってくれそうだな。


 シンシアに言わせれば腹黒策士な私はランドルフが上手くアンジェラに恋心を抱くようになればいいなと悪い顔で微笑んだ。


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