第21話 乗り込んでやったわ

しばらくして、私は側妃として城に上がった。


「私は王妃宮に住みたいですわ」

「しかし、ミランダ様は側妃ですし……」


 側近が口を挟む。


「私が、実質的な王妃でしょう? 私が王妃宮にいて当たり前ですわ」


 ちょっと高圧的に言ってやった。


「いいだろう。シンシアをどこか適当なところに移せばいい」

「とんでもないですわ。王太子妃はともかくランドルフ殿下は大事な嫡男。このままここに残します。王太子妃も身体が弱いですし、このままここに置いておく方が、王太子殿下のイメージがよろしいのではなくて? 王太子妃のことは私にお任せ下さいませ」

「そうだな。ではお前に任す。まぁ、私はもうシンシアのところに渡る気はない。生かそうが殺そうがどうでもよい」


 王太子も側近も馬鹿じゃないのか? 私とシンシアの関係を知らないのか? 知っていたら、私を側妃に迎えようとは思わないだろう。


 そんな事でよく国王になるつもりだな。私は作り笑顔でその場を去った。


「王太子妃様、この度、側妃として城に上がることになりましたミランダと申します。同じ王妃宮に住むことになりました。よろしくお願いいたします」


 そう言ってカーテシーをするとシンシアは驚きの余り固まっていた。


「ミランダ、どうして? 側妃? まさか王太子殿下の」


 固まりからすこしほぐれたシンシアは手を口に当てて涙を流し始めた。私は側に行き肩を抱く。


「ばかね。私がただの側妃になる訳ないじゃない。もう、私が来たからは何も心配しなくていいのよ」

 顔を上げたシンシアは目をまん丸にしている。


「ミランダ様、お待ちしておりました」


 シンシアの側で控えていた侍女頭のマギーが言う。マギーは王妃様の影だ。全ての計画を知っている。


「よろしくね」

 私はマギーに微笑んだ。


「フレデリック様は?」


 シンシアの顔を見た。


「フレディ様はランディと庭にいるわ」

「あら、フレディ様、ランディと呼んでも大丈夫なの?」

「ここには王太子や国王の関係者は来ないし、防音魔法がかけてあるから大丈夫よ」


 シンシアは、「もう、病弱なふりは疲れちゃったわ」と言って笑った。


 私の部屋は王妃宮の中に作られた。側妃と王妃が同じ場所に住むなどはじめての事で使用人達は皆戸惑っている。

 私は、私の部屋にも防音魔法と盗聴された会話を書き換える魔法をかけている。


 そして、王妃様から隠し通路の存在を教えられた。

 私の部屋からは王妃様の部屋、シンシアの部屋、そしてレオンの部屋に隠し通路を使って行ける。


 私、レオン、王妃様、そしてシンシアとフレディ様は隠し通路の中にある密会部屋で度々会うことになる。


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