第20話 王命(レオンフィード視点)

 シンシアは元々は子爵令嬢だ。学生時代から優秀ではあり、卒業後は友達のライザの家、クラリー伯爵家の養女となり、フレデリックと正式に婚約し、レキソール侯爵家に嫁ぐはずだった。しかし、私の兄である王太子に攫われ、無理やり嫁がされた。戸籍上は身分合わせの為に父の側近の伯爵の養女になってはいるが、王妃教育など受けていない。無能な兄が国王になるためには国王の分も仕事ができる王妃がいる。私の父も同じように無能だった為、有能な母が国を守っている。父は無能な息子の為に能力のある側妃を探し始めた。


「父上、あんな女を王妃にしなければよかったよ。いつも体調が悪くて、役に立たない。離縁したいけど、子供がいるしな」

「まぁ、見目は美しいから飾りの王妃として置いておけばいい」


 廊下を歩いていると父と兄らしき話し声が聞こえてきた。胸糞悪い。


「お前そろそろ身分の高い令嬢を側妃にしたらどうだ。執務をやらせないとな」

「だったら、ヴァーナリアン公爵家の令嬢がいいな。あの気の強い女を跪かせてみたい。父上、王命を出してよ」

「わかったわかった。ヴァーナリアンに恩をうってやるよ。すぐに王命をだしてやるからな」


 私の握りしめた掌は血が滲んでいた。


 ミランダに知らせないと。何か手を打たないとだめだ。私は内密にヴァーナリアン家を訪れた。


「レオン、王命が来たわ」

「ミランダ逃げろ」


 私はミランダを逃がそうと決めたが、ミランダは不敵に笑っている。


「不敬と言われるかもしれないけど、私はあの王太子をギャフンと言わせたいの。我が家に謀叛の罪を着せて取り潰すとシンシアを脅したあの男を失脚させたいのよ」

「馬鹿な事を考えるな!」

「今の国王も王妃様でもっているようなもの。あいつが次期国王だとしたらこの国は終わるわ。悪事を働いてもみんな国王がもみ消す、国の事など何もかんがえていない。考えているのは自分のことだけ。あんな奴が王太子妃ではダメなのよ!」


 確かに兄が国王になったらこの国は滅ぶ。兄の側近は兄と似たようなものばかりでろくでもない。


 そうだこの手がある。私はミランダに思っている事を話してみた。

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