第15話 第2部 私が守る
*お話は20年位前に遡ります・第2部のスタートです。第2部は基本はミランダ視点になります*
「きゃ〜!!」
卒業式の後の夜会でお花を摘みに行ったきり、シンシアの姿が見えなくなった。探していた私達の耳に悲鳴が聞こえてきた。
思わず、悲鳴が聞こえた方に駆け寄った私達は無惨にドレスを引き裂かれ、血だらけになっているシンシアの姿を発見した。
シンシアの上に重なるように頭から血を流して倒れているのは王太子殿下だった。どうやらお花を摘みに行った帰り廊下にいるシンシアをみつけた王太子が手籠にしようと開いていた部屋に引っ張り込んだようだ。
王太子は前々からシンシアに気があった。抵抗したシンシアは王太子にドレスを引き裂かれ、そして殴られたのだろう、顔は腫れ上がり、傷だらけだった。王太子殿下から逃げようと部屋にあった花瓶で王太子殿下を殴ってしまったようだった。
王太子殿下はトラウザーズを膝の辺りまで下ろし、シンシアの純血を奪う寸前で意識を失ったようだ。だが、私達以外にその場に駆けつけた側近は事後だと捉えたようだった。
「助けて……」
シンシアは小さな声が聞こえ、我に返った私は意識の無い王太子殿下を突き飛ばし、シンシアを抱きしめた。
私と一緒にいた私の恋人の第2王子のレオン殿下は自分の着ていた上着をシンシアに着せて、抱き上げ、「この場のことは他言無用。漏れることがあれば命は無いと思え」と言い、私に眼で合図した。
私とレオン殿下、そして仲間達は一緒に医務室に向かった。
シンシアは安心したのか意識を失っている。
「ミランダ! 着替えを持ってきたわ」
ソフィアが走ってきた。
「私のだから少し大きいけど我慢してね。誰かと被ったら着替えようと替えを持ってきていて良かったわ」
ソフィアはふくよかでおっとりして見えるが、いつも用意周到で備えあれば憂いなしと言っていて抜かりがない。
私達は治療が済んだシンシアを着替えさせた。シンシアの怪我は殴られたせいでできた打撲とあとは擦り傷、切傷、そして捻挫だった。
「王太子はどうなったんだ?」
「知るか! あんな奴死ねばいいんだ」
「そんなことになったらシンシアはどうなる」
レオン殿下と一緒にきた仲間のジェフとアーサーが話している。
今はとにかくシンシアを保護しなければ。
控えている我が家の馬車を呼び、シンシアを私の屋敷に運んだ。
私は筆頭公爵の令嬢だ。シンシアを守れるはず。
カインロッド殿下は王太子殿下と王家の様子を探りに王宮に戻った。
私とレオン殿下、そして子爵令嬢のシンシア、侯爵令息のジェフ様がとアーサー様、伯爵令嬢のソフィアとライザの5人は学園の同級生で1年の時から仲が良かった。
王太子殿下は前々から美しいシンシアにちょっかいをかけていたが、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
王宮に戻っていたレオン殿下の話によると、王太子殿下の傷は大した事はなく、脳震盪を起こして意識を無くしていただけだったらしい。
ただあの時の記憶が曖昧で自分はシンシアと結ばれたと思い込んでいるようだ。そして、責任をとり、シンシアと結婚すると言っていると言っているそうだ。
「あいつは馬鹿だが、国王も王妃もあいつには甘い」
異母弟のレオン殿下は苦虫を噛み潰しているような顔をしている。
「とにかくフレデリック様が戻るまでは我が家で守るわ」
シンシアの母は私の乳母でシンシアとは生まれた時から双子のように一緒にいる。私にとってシンシアはとても大事な存在だった。
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