第14話 顛末(アンジェラバージョン最終話)

*アンジェラバージョン最終話です。次話からは父母達世代の話になります。「真実の愛」を上書きしたのは誰だったのか? 引き続きお付き合いよろしくお願いします*



 それからしばらくして例の伯爵令嬢の噂は聞かなくなった。


 国王陛下は体調不良で療養しているらしい。なんだか私の知らないところで何かが起こっているようだ。



 私はとある噂の真相を聞きたくてリンジーの屋敷を訪ね、ふたりでお茶をしていた。


「ねえ、リンジー、マキリート伯爵が捕らえられたって本当?」

「うん、なんでも魔法を使って国王を傀儡して国を意のままにしようとしたらしいわ」

「国を意のままにするって、そんなの伯爵くらいでできるのかしら?」

「だから魔法で国王を操ろうとしたのでしょう。マキリート伯爵は学生の頃から国王の腰巾着のふりをした野心家だったらしいわ。娘に禁忌の魔法を覚えさせて王族に嫁がそうとしたみたい」


 確かにあの令嬢も最初はカインロッド殿下に魅了の魔法をかけようとしていた。殿下が魔法に掛からないから好色な国王に乗り換えたのか?


リンジーは呆れた顔をしている。


「国王に王命でランドルフ殿下の妃にしてほしいって言ったいたらしいわ。でもランドルフ殿下が隣国に行ってしまったので、今度はカインロッド殿下の妃になりたかったけど、私がいたから、魅了して妃になろうとしたみたい」


なんだか嫌な話だ。


「実はね、私はカインロッド殿下と婚約してから、何度も命を狙われてるのよ。私が婚約者に選ばれたのは無効化の魔法を持っているかららしいわ。悪意魔法も毒も無効化できるから、そう簡単に殺されないでしょ」


 リンジーはそう言って笑う。私はそんなことをとは全く知らなかった。

 そうと知って婚約者になるなんてリンジーって凄いわ。さすが侯爵令嬢。


 私なんて覚悟の無い男爵令嬢上がりだし、しかも平和な日本なんて国でのんびり生きていた記憶のある転生者だ。王子の婚約者になったら命を狙われるなんて今の今まで気が付かなかった。


「でもね、国王陛下の力でこの国を動かしていると思っている貴族は結構いるんじゃない? 私もカインロッド殿下と婚約して王家の内情を知るまでは国王が執務をしてると思っていたもの。国王がやることと言えば愛妾におねだりされて訳の分からない王命とか出したりするくらいだったみたいで王妃様や王弟殿下が後*始末してたわ」


リンジーは呆れた顔でため息をつく。


「そう言えば、国王は療養してるって話だけど、どうしているの?」


 国王がどうなったかちょっと気になった。


「うん、国王は魅了の魔法を深くかけられていたみたいで、解いたあと意識がもどらないみたいなの。これは内緒の話よ。まぁ、我が家の屋敷の中だから大丈夫だろうけどね」


 リンジーは王家の話を知り過ぎているようだ。私だから言うのだろうが、気をつけないと消されちゃうんじゃないのか? 私は少し心配になった。


 

 それからしばらくして、国王が亡くなったと発表があった。


 マキリート伯爵が国王を傀儡しようと娘を使い禁忌である魅了の魔法をかけ、発見した後解呪したが後遺症で亡くなったと言う話だった。

 マキリート伯爵と娘は国王やカインロッド殿下に禁忌魔法を掛けたことや、リンジーを暗殺しようと毒を盛ったことが解り、死罪となった。そしてマキリート伯爵家は取り潰された。


 そして次期国王と発表されたのはカインロッド殿下だった。


*次話からは時が20年前に遡ります。「真実の愛」を上書きしたのは誰だったのか? 親達の若い頃に何があったのか? それが現在にどう繋がれているのか? 引き続きお付き合いよろしくお願いします*

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