第10話 別れ
リンジーどカインロッド殿下の婚約式は王宮でおこなわれた。
第2王子と言ってもお母様のご実家は公爵家。側妃ではあるがご実家が子爵家(伯爵家の養女ではあるが)の王妃様より力はある。リンジーの家は力のある侯爵家なので、カインロッド殿下が次期国王になるだろうと貴族達は思っていた。
王宮で婚約式が行われるということはそういう事だろうとささやかれていた。
「おめでとうございます。今日はお招きいただきましてありがとうございます」
私はリンジーとカインロッド殿下に挨拶をしカーテシーをした。
「アンジェラ、ありがとう。今日はたくさん食べていってね」
「アンジェラ嬢、ありがとう。また、兄上と話をしてやってほしい。先日の茶会で伯爵の話ができたと兄上は喜んでいたよ」
兄上? カインロッド殿下の兄上ということはランドルフ殿下? だけだよね。なんで私と? 余程伯父様が好きななか? それとも小説どおり、私とランドルフ殿下をくっつけようとしているのか? もしかすると私経由でミレーヌお姉様を自分のものにしようとするのだろうか? 私は色々考えてしまった。
国王陛下は最初に挨拶だけして消えてしまった。どうやらカインロッド殿下にもランドルフ殿下にも王妃様にも側妃様にも興味がなく新しい愛妾のところに行ったようだ。
このあたりの設定も小説とは違う。今日はリンジーは忙しいのでぱくぱく仲間はいない。私はひとりで美味しいご馳走をぱくぱく食べていた。
ふと見ると王妃様と側妃様、父と母が何やら親密な感じで話をしている。そこにリンジーの両親も参加してきた。6人は顔見知りだったのだろうか?
年齢は近いし、皆貴族だ。顔見知りであってもおかしくはないが何かひっかかる。モブの大人達は何の話をしているのだろう?
「アンジェラ嬢」
そう呼ばれ振り返るとそこにはランディ殿下がいた。
「お姿が見えないので今日はいらっしゃらないのかと思いましたわ」
「苦手なんだ、社交の場は。アンジェラ嬢が来ているかと思い覗いてみた」
「まぁ、うれしいですわ」
私はランディ殿下の言葉に貴族令嬢らしく作り笑顔で微笑んだ。
「私はラックノーラン国に留学することになったんだ。もうこの国には戻らないかもしれない」
ランディ殿下は少し寂しそうな顔をしている。なんで戻らないんだろう? やはり王太子はカインロッド殿下なのだろうか。
「フレデリック……君の伯父上が留学を勧めてくれた」
伯父様が?
「伯父はラックノーラン国に知り合いでもいたのでしょうか?」
「わからない。ただ、亡くなる少し前に行くように話をしてくれた。向こうでは魔法と剣と経営を学ぶ。今まではフレデリックが教えてくれていたのだがもっと専門的に学べと言われてしまった。虫の知らせだったのだろうか? 逝く前にラックノーラン国で私が学べるようにしてくれていたようだ」
「伯父様が……。ランドルフ殿下がいなくなると王妃様も淋しくなりますわね」
私はなんの気無しにそう言った。
「母上には義母上がいるから大丈夫だ」
義母上? あっ側妃様か。
「王妃様と側妃様は仲が良いのですね」
「ああ。姉妹のように仲がいい。私も母上の事は心配だが、この留学はフレデリックが私に用意してくれたものだ。それをやり遂げることがフレデリックの供養になるような気がするのだ」
伯父様はランディ殿下に何をやり遂げろと言ったのだろうか?
「君はフレデリックによく似ているな」
「伯父様にですか?」
「ああ。髪が同じプラチナブロンドだ」
「これはレキソール家の色ですわ。父もそうです。私は髪は父の色、瞳は母の色を受け継いでいます」
「そうだな。私は髪は母上、瞳は父上だろうか?」
ランドルフ殿下はそう言うと悲しそうにふっと笑った。
「アンジェラ嬢、また会おう。それまで元気でな」
「はい。ランディ殿下もお元気で」
ランドルフ殿下は私に別れを告げ消えた。
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