第8話 リンジーの婚約が決まりました
しばらくしてリンジーからお茶会の誘いがあった。
私は我が家の馬車に乗りメイラック家へ行く。
「アンジェラ〜待っていたわ」
リンジーが飛び出してくる。
「本日はお招きいただきましてありがとうございます」
私はカーテシーをする。
「もう、そんな他人行儀な挨拶はいいのよ。ガゼボに行きましょう」
リンジーは私の手を引っ張る。
お茶会と言ってと招かれたのは私だけのようだった。ガゼボに置かれたテーブルの上には前世の世界で見たことのあるアフタヌーンティーの3段重ねのティースタンドにはサンドイッチやスコーン、ケーキなどが乗っている。メイドが紅茶を淹れてくれ、ふたりのお茶会が始まった。
リンジーは何が言いたそうにモジモジしている。
「今日、お茶会を開催したのは何かお話があるのでしょう?」
私はリンジーに話かけた。
「そうなの、実は私、カインロッド殿下から婚約者になって欲しいと打診されたの」
リンジーは困ったような顔をしている。カインロッド殿下か。「真実の愛」ではリンジーの恋人だった。話通りだな。
「お茶会でお話をしたの?」
「ええ、お花摘みに行った帰りに声をかけられたの。アンジェラはカインロッド殿下とは話してなかった?」
「ええ、私は最初の挨拶だけだったわ」
「そう、私だけ話をして婚約者にと打診されたなんて、なんだかアンジェラに申し訳ない気がするわ」
リンジーは本当に申し訳なさそうな顔をして私を見ている。
「そんなこと全然大丈夫よ。私は王家の方には何の興味もありませんし、それを言うなら、私もランドルフ殿下と話し込んでしまって、リンジーが殿下と話す時間を奪ってしまったかもしれないわ」
私がそう言うとリンジーは少し気が楽になったようだ。
「後から他の令嬢に聞いたのだけど、カインロッド殿下は結構色々な令嬢とお話をしていたけれど、ランドルフ殿下はどなたともお話をしていらっしゃらなかったみたいよ。元々無口で社交の場に出るのもお嫌いのようですし、あのお茶会も出て来られたので皆驚いたようなの」
そうなのか。社交嫌いであんまり姿を現さない? 「真実の愛」のランドルフ殿下とは何か違うな。
「ひょっとしてアンジェラと話すために現れたのかも?」
はぁ? リンジーの言葉に私は眉根を寄せた。
ランドルフ殿下とは「真実の愛」では結婚したが、ふたりは周りを不幸にした。しかも、「真実の愛」のランドルフ殿下は人間としてあり得ないほど嫌なやつだ。今はなんだか違う人のようだが、学園に入るくらいの年齢になると嫌なやつになるのだろう。
「無い無い。まぁ、ランドルフ殿下は亡くなったおじさまと親しくされていたようなので、そのせいかもしれませんわね」
私は貴族令嬢らしく嘘笑いをしておいた。
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