第4話 小説「真実の愛」の世界とはかなり違うんだけど

 私はどうやら、「真実の愛」の主人公のアンジェラ・レキソールに転生してしまったらしい。


 このスルピレッド王国のレキソール侯爵家の次女のようだ。

 最近までレキソール男爵家の次女だったが家門の都合で侯爵令嬢になった。今は7歳だ。


 父は商会をいくつも経営しているやり手の男爵だったのだが、侯爵家の嫡男であった兄が急死し、仕方なく侯爵家を継ぐことになった。

 兄弟はふたりしかいなかった為、侯爵家に呼び戻されたらしい。


 母は元は伯爵令嬢でふくよかでのんびりおっとりした優しい母性溢れる人である。


 そして姉のミレーヌはものすごい美人で才女。まだ9歳なのに求婚がやまない。

 今までは男爵令嬢だったのでそれはそれは色んな身分の方から縁談が来ていたが、上位貴族の侯爵令嬢となった今は縁談は半分くらいになったようだ。


 

 前世で読んでいた小説「真実の愛」ではミレーヌが死んでから、アンジェラは王命で無理矢理レキソール家の形ばかりの養女になったので、アンジェラはレキソール侯爵家の人達とは接点が無かったはずだ。

 しかし、私が転生した「真実の愛」の世界では、レキソール侯爵夫妻の実子でミレーヌお姉さまとは血の繋がった姉妹になっていた。


 ミレーヌお姉さまは才色兼備で女神のように美しい。

 それに比べて私は平凡だ。もちろん小説の中のアンジェラのように贅沢でも苛烈でもなく、野心もない。ただの普通の子供なのだ。


「真実の愛」の中ではお姉さまは侯爵子息のレナード様と婚約していたが、今はまだレナード様には会っていないようだ。


 私に出来るのはお姉さまと王太子のランドルフ殿下を合わせないようにすることだ。


「真実の愛」の中ではお姉さまが王太子に目をつけられるのは学園に入る前なのでまだもう少し間がある。

 でも、話はかなり変わっているので、いつ王太子に見染められるかわからない。気を引き締めねば。


 私はお姉さまを守らなくちゃならない。


 お姉さま! 私はお姉さまを守るよ。


 私は前世の梨沙の記憶はしっかりある。小説の「真実の愛」の記憶もしっかりある。

 私が王妃になるのなら、賢王妃になってやる。王太子のランディに好き勝手はさせない。


それにしても、いったい薫は誰に転生してるのだろう? 前世の記憶はあるのだろうか? 今のところはまだ薫らしき人には会ってない。

 

この世界の薫は男でも女でもなんでもいいので、どうか私の味方ですようにと私は祈っていた。


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