第2話 本当に転生したの?

「まさか、跡を継がないといけなくなるとは思わなかったな。気楽な男爵でよかったのに」


 父がボソボソ呟いている。父はもともとは侯爵家の次男。跡取りの嫡男がいた為、侯爵家が持っている男爵の爵位を貰い、商会をしながら母と姉と私の4人家族と使用人達とで気楽に暮らしていた。

 亡くなった父の兄はまだ結婚しておらず、跡を継ぐ者が誰もいなかったため、父が後を継ぐ事になった。


 うちは男爵と言っても、侯爵家の分家、その上、父は商才に恵まれていたので商会は大成功していてお金もあった為、下位貴族でありながら、上位貴族のような生活をしていたので、屋敷もそのままで、私達の生活は特に何も変わらなかったが、父は責任の重さが違うとげんなりした顔をしている。


「ミレーヌ、早く食べなさい。そろそろ先生が来られるわよ」

「はーい。お母様」


 お姉さまは今日は先生が来る日か。大変だな。


「アンジェラ! あなたもよ。マナーの先生がくるのよ。早く食べて用意しなさい」

「はーい」


 私も返事をした。今日はマナーの先生の日だったか。


 えっ? アンジェラ? 私アンジェラだったっけ? えっ? ちょっと待って、アンジェラ? アンジェラって?


 私はその場で気を失った。


 気を失っている間に私は前世の記憶を取り戻していた。


 確かに薫とデートしている時に逆走してきたトラックと正面衝突して亡くなったんだ。


 あっ、そうだ。神様と会ったな。


 そうそう、神様は「真実の愛」の世界に転生させるって言っていた。


 アンジェラって、私はあのアンジェラに転生したの?


 ちょっと待ってよ。それは無いわ〜。


 あの時神様の後に出てきた美女はアンジェラだったのか?


 けど、悪女には見えなかったな。


 本当のアンジェラは悪役じゃないのか?


 それにしてもなんでアンジェラなの。嫌だ嫌だ。ちょっと待てよ。確か私には姉がいた。ミレーヌお姉さま。

 あっ、「真実の愛」ではアンジェラはミレーヌが亡くなってから侯爵家の養女になった。この世界の「真実の愛」でははじめから妹? しかも男爵令嬢から侯爵令嬢になる過程が全く違う。


 これがアンジェラらしき美女が言っていた、「神様が話をあなたの都合のいいようにしてくれる」ってことか? 私は頭が混乱していた。


 前世の梨沙の記憶と小説「真実の愛」の記憶、そしてこの世界でアンジェラとして生まれてからの7年の記憶を擦り合わせて混ざり合わせるまで3日間、私は意識不明になっていたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る