禁軍へ(其の四)
腕試しは私有地内の闘技場にて非公開で行なわれたため、本来なら結果は外部へ洩れぬはずであったが、禁軍側も
中でも、我が子の仇とて
国師がかばい立てるなら私兵を差し向けてでもと荒ぶっていた彼らには、一介の監察司に過ぎぬ
(――早まらなくてよかった)
とばかり、胸を撫で下ろしている取り巻きどもの言葉を通りすがりに憮然と聞き、たびたび怒鳴りつけたい衝動にかられた。
曰く、
――いやはや、危ういところでございましたな。
――まったくです。迂闊に私兵など動員していたら、大変な損害を被るところでした。
――
国師の威を怖れ、ついに我が子を見捨ててしまった
とはいえ、国師は頼れぬし、
国師への畏怖が勝って見捨ててしまった我が子が、黄泉の国から呪詛を向けてきている気がしてならぬ。
(――いまにみておれ。
一方、自身の勝利に仕組まれたような不自然さを感じていた
父母に話せば反対されるので、今回も
この機会を逃せば、もはや浮かぶ瀬もない身ではあったが、あの
――
「避けなかったのではない。避けられなかったのだ」
あの言葉は、あきらかな虚言であった。
確かに
巧みに躱され、命中しても芯を外されて、決定的な機会に繋がらなかった。
なのに、最後のあの瞬間だけ、なぜかフッと気を抜いた。
対戦相手の
経験したことのない高速決着で、自身の側に勝因があるとは到底思えず、あの一瞬に生じた
とはいえ、実際
――自信がなければ辞退するもよかろう。
――腕試しでも何でも受けて立ちましょう。
と、前のめりになったのは
実際に禁軍総大将を倒しながら、自身の都合で辞退するとなると、
――当たって砕けるしかあるまい。
そこにわずかな希望を託す以外、選択肢はないようであった。
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