腕試し(其の八)
どうやら、後頭部への一撃で脳震盪を起こしたらしい。
「よかった、大丈夫なようだ」
「しかし、あの一撃を食らって脳震盪だけとは、さすがは禁軍総大将殿。鍛え方が違う」
「のう
確かに
だが、あの時、
そこへ、渾身の一撃が偶々入ったにすぎぬ。
――俺にはわかる!
と、
あの白熱した緊張の刹那に、彼は何に気をとられたのか。
あの油断さえなければ、勝負はまだ続いていたはずであった。
「
「あれ……とは? 何のことだ?」
支えていた
「そうキツい声を出さんでくれ。頭に響く」
「俺の最後の一撃、あなたなら躱せたはず。なぜ避けなかった?」
「避けなかったのではない。避けられなかったのだ」
「嘘だ!」と、声を張った。
「だから言うておるであろう、そう大声を出さんでくれ。まだ衝撃が残っているのだ」
「納得できぬ」と、
「これ
「哀れむだと? あんたは人に哀れまれるような身の上なのか? 手加減などせぬ、この結果がすべてだ。あんたが俺より強かった、ただそれだけのこと。あんたの強靱な肉体と圧倒的な内力は、常人のそれではない。禁軍の訓練でもおそらく身につかぬであろう。あれをどこで身につけたのか、俺のほうが知りたいくらいだ」
「すまぬが、俺は見てのとおりしばらく動けぬ。一足先に閣下へ報せてもらえぬか」
「そんなに応えたか、
「さすがは閣下、俺もこれほどとは思わなかった。よくぞ見出したものよ」
「あの方の武人を見る目は大したものだ。しかし、今後のこともあり、
「ならば、代わりに邸の者を遣わしてくれ」と、
「だが、
冗談とも本気ともつかぬ口調で
「御免被る。
――こんなものか。
と、
あの時、この男は確かに集中を欠いていた。
あんな負け方をして何も感じぬのか。
言うにことかいて
というのも、あの地獄の森で、
超級魔獣最強の龍族、蛮龍を素手で倒したという光武将軍
残念ながら失神していてその瞬間を目にすることはできなかったが、
そして、禁軍大統領の
総大将の
もしや
様々の思考が飛び交い、
何か巨大な渦に取り込まれようとしている気がしてならぬ。
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