耀輝の実力
交替して
四肢はむしろ華奢にみえるし、膂力もさきほどの武藝者のほうがよほど強そうであった。
さほどの闘気も感じられぬし、内力も特段優れているようには思えなかった。
だが、
――もう一人は俺より強いぞ。
偉丈夫の残した言葉は、疎かには聞いていない。
筋力より内力の強い種類の武藝者と思われるので、おそらく得意なのは剣であろうと予想した耀輝であったが、意に反し、この武藝者も剣を抜こうとしない。
「おまえも抜かぬのか?」
「俺をみると、みなそう思うらしい。剣に頼らねば闘えぬとな」
そう答え、ゆっくりと構えに入った。
いきなり闘気が膨れ上がり、
「なに?」
相手の闘気の膨張ぶりに一瞬息を呑んだ
武藝者の闘気はとどまることを知らず、果てしなく膨らみ続けている。
それは、さきほどの武藝者の闘気を遙かに上回るものであった。
(どうやら、直感は正しかったらしい)
初対面で感じたように、この武藝者は手の内をみせぬため、敢えて内力を抑えていたようだ。
自身の闘気を自在に制御しているというだけでも、相当な修行を経た達人に違いなかった。
「おもしろい!」
――笑ってやがる。
と、折れた肋骨のあたりを抑えながら、偉丈夫の武藝者が呟いた。
――これだけの闘気をぶつけられれば、並の使い手なら闘志を挫かれるはず。
すると、突如、敵の闘気が周囲を包んで一気に膨れ上がり、その急激な波動に対応しそこねた
素早く打ち込まれた武藝者の一撃を躱しきれず、右の肩口に強烈な衝撃を受け、後方へ弾き飛ばされると、あやうく転倒しかけた。
空中で姿勢を立て直し、辛うじて地べたに転がる無様は回避したものの、右肩に受けた痛みと痺れは、なお消えなかった。
それも当然で、これほど強烈な一撃を入れられた記憶は久しくなかった。
「あの武人は、おまえたちの主であったな」と、右肩を抑えて
「あたりまえだ」と、武藝者が答えた。「われらなど、あの方には触れることすらできぬ」
「そうか。それほどか」と、
周囲の空気が一変し、武藝者の顔色が変わった。
負けじと闘気を高めるも、
「まさか、これほどとは……!」
「行くぞっ!」
「おまえを倒し、主とやらを引きずり出してやる!」
武藝者は最初の一撃を入れた後、防戦一方となった。
当初はかろうじて防いでいたものの、
次々と闘気の衝撃波をくらい、ついには両脚が宙に浮き上がった。
目に見えぬ拳が無数に命中し、武藝者はやがて意識を失った。
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