武人の正体
「その辺で勘弁してやってくれ」と、また武人の声がして、
「どこだ? 隠れていないで出てこいっ! あんたの
「さっきから俺はここにいる。おぬしが気づかぬだけだ」
「なんだと?」
「上をみろ」という声に、空を見上げてみると、本堂の屋根からさらに十尺ほど上空から、武人の姿が悠然と見下ろしていた。
「舞空術か」
武人は静かに地面へ降り立つと、気絶している武藝者に闘気を注入して、意識を呼び戻した。
「申し訳ございません。閣下の仰る通りでした……」
意識を取り戻した武藝者と肋を折られた武藝者が並んで包拳し、丁寧に一礼した。
「やはり、われらでは到底……」
武人は鷹揚に肯いて、
「納得したか、
「はっ!」と、声をかけられた偉丈夫が、包拳したまま肯く。
「
「はっ!」と、もう一人も慇懃に肯いた。
武人に挑もうといきり立っていた
確かに、あの格好でここへ来ようものなら、強盗どもが群がって、道中は死体の山を築かざるを得まい。
彼らの衣装こそ
――この者たちの
「あんたら只者じゃないな。何者だ?」
「左大将の
「き……!」と、
さすがに、三人のみすぼらしい格好からは想像がつかなかった。
ましてや、ついいましがた倒した相手が、その左右大将だというのは、あまりに突拍子もない状況である。
いかに天才を自負する
にわかには信じられなかった。
しかも、武人はその
禁軍大将の上となれば、つまり……!
「まさか、そんな……では、その方は?」
二人の禁軍大将は、
左大将の
「そうだ。おそらく、おまえの思っている通りのお方だ」
右大将の
「このお方こそ、名高き禁軍大統領、すなわち天覇将軍
「知らぬこととはいえ、重ね重ね御無礼の段、平にお許しくださいませ」
謝罪の言葉を述べながら、その声はさすがに震えていた。
よりによって、街中でかの天覇将軍に辻斬りまがいの腕試しを挑んだのである。
罰せられて当然の所業であった。
まともに顔を上げることもできず、項垂れている
「面を上げられよ、
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