緑林の戦い
寨を独力で脱出した
人質に逃げられたにしては、寨は静かで、その夜は襲撃の気配もなかった。
次の日から戦は新たな局面を迎え、
だが、
進軍の太鼓が地を震わせ、干戈の響きが蒼天を貫いて、やがて雲を運び、風雨を呼んだ。
兵力では圧倒的な
突然の豪雨で周囲は水浸しになり、火攻めを封じられた
打ち続く敗報に、
銅鑼の音に追われ、敵に背を向け退却する
風雨の音に混じって、寨の上から唸るような勝鬨が聞こえた。
「聞け、
「
「誰だそりゃ?」
寨近くに陣取った
「せっかく俺が逃がしてやったのに、かように逃げ隠れるのみとはな。そんなに俺が怖いか。また囚われるのが恥ずかしいか。惨めだなあ、
「はて、
と、
しかし、背後に控えていた
「
「あれはわしのことじゃ」と、
降りしきる雨の中、
「今日の勝利は天が我らに味方したもの。明日は俺も討って出るゆえ、今度こそ雌雄を決しようではないか。逃げれば、たかが山賊の頭を相手に逃げ回る腰抜けと、末代までの笑いものとなろう!よいか、構えて逃げるでないぞ!」
そう言い放ち、
実に
寨に囚われている間、
「
「しかし、今日は我が軍には雨の不運があったにせよ、奴の指揮ぶりにもなかなかのものがござった」
「わかっておる」と、
「お待ちくだされ」と、
「だが、他に策があるのか?」
「策と言うほどのものではござりませぬが、考えはございます」
「我らに説明できるか、いま、ここで?」
「さて、それは。いまはまだ、我ら六将を信じていただきたいとしか。ただ一つ言えるのは、我ら六名は、敵地より御大将の奪還を目的として派遣された別働隊。標的が岳賦に変わっただけと申せましょう」
概ねそのような主旨を述べた
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