開戦前夜
やがて、
そして、そばに立っている二人を見上げて言った。
「実を言うと、わしがかく帰還できたのは、あやつのおかげでもあるのだ」
「あやつ?
意表を衝かれ、
「わしはあやつに捕らえられ、また、あやつに解き放たれたのだ。どうだ、面白かろうが?」
言いつつ、
言葉とは別の何かが胸の底に澱んでいるようだ。
互いに笑えぬ冗談としか思えなかったが、
永安を目指す旅の果てに、
この王子には、いまも変わらぬ人材蒐集癖がある。
噂や風聞には動じぬが、自ら惚れ込んだ相手に対しては、味方にしようとひたすら情熱を傾ける。
それも、自前の勢力を拡大するためでなく、王である父、次代の王たる兄の世を盤石なものとするため、そのことが必要だと信じているのであった。
王族同士の覇権争いは常に熾烈を極め、このように我が身の栄華に目もくれず、無垢なる忠節を貫く一国の王子を、
そして、それこそが、
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