老将・黄頴
緑林の地で大将不在の
元は
世代の異なる二人にも、互いに認め合う部分があったのであろう。
とはいえ、
陣の様子を見れば、兵の士気や将の力量はおよそ把握することができる。
いつまで待機せねばならぬか判然としない中、平常心を保ち続けるのは難しい。
大抵は、戦場のピリピリした緊張感に耐えきれず、抜け駆けをする将や、脱走する兵が現れたりするものだが、
寨近くの間道や洞窟、沼といった地形はもとより、樹木の種類まで網羅された詳細な地図で、
都より新たな指令が下されぬ限り、
兵を休ませるには好都合だが、彼らには、なお戦争中である事実を忘れてもらっては困る。
そのための方便として、
「見事だ」と、
「いえ。戦場の地形、天候等を知るは将たる者の嗜み。当然のこととは存ずるが、お役立ていただけますれば、これに優る喜びはございません」
「王子様は誠に優れた部下をおもちだ。兵達の自信に満ちた様子といい、これなら連戦連勝というのも肯ける」
「誉れ高き
それから、傍らの小箱を引き寄せると、中から巻物を取り出して、
「これもぜひお役立て願いたい」
「何かな」
「ありがたい」と、
「いずれこのような時も来ようかと。役立てていただければ、準備の甲斐があったというものです」
「感謝するぞ、
日が落ちて、周囲が闇に包まれる頃、本陣近くに黒い衣装に身を包んだ救出部隊の五名が整列し、同じく黒装束を身につけた
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