アーシェンと魔陣兵
また、そのように馳せ参じた者たちの中には、どこから湧いて出たか由来のわからぬ者たちも少なからず混じっていた。
容貌は大陸人に相違ないのだが、未来を予見する力を持っていたり、雨を呼んだり、風を起こしたりすることができる上に、アーシェンによく似た能力を駆使して、弱い魔獣なら討伐してのけた。
大陸由来の人族にも、自分と同じような力を持つ者があると知ったアーシェンは、非常に歓び、彼らに目をかけて、魔獣殲滅のための
素養を秘めていると思われるその者たちに、自身の術を、生命に危険の及ばぬ範囲で伝え、術師の心得なども教え込んでいった。
そして、前線で戦う兵のため、彼らの武具に魔力を練り込むよう言い、実際そのようにさせた。
そのことは、兵の武器を強化して彼らの生命を守護するとともに、
目先の土地の奪い合いに血道を上げる人族が、アーシェンの目には非常に愚かしく映ったが、大陸人からすれば、アーシェンのほうが、いっそう理解し難い存在なのであった。
髪の色も、肌の色も、目の色も違い、衣装や小物も奇妙であったし、何より、鎧も着けず戦場に現われ、雲のようにプカプカ浮かんでいたかと思うと、嵐や雷をも凌ぐ不可思議な力をもって、魔獣の群れをたちどころに殲滅してみせる。
味方としてはこれほど心強い者もないが、もし、彼がかつての
仮に魔族を滅ぼせたとして、その後も味方でいるであろうか。
大陸人はみな、口には出さずとも、それを心から恐れ、憂えていた。
そんな風だから、人々の崇敬は、やはり自然と同じ大陸人である
後世の史家にとっても、
「防魔戦役史」における
アーシェンは自らを魔法使いと称し、件の能力を魔法と呼んだが、当時の大陸には、そのような能力者は存在せず、概念もなかった。
少なくとも、
異邦人の孤独。
魔法使いという異能の者としての孤独。
独り、アーシェンにはいつも重々しい空気がまとわりつき、滅亡から逃れる手助けをしているはずの当の者たちからすら、常にいつ裏返るかと疑惑の目を向けられて、わだかまる徒労感は筆舌に尽くし難いものであったろうが、それでいて、凄絶な魔力で、無数の魔獣を藻屑の如く薙ぎ払う自分の姿が、人々の目に
その気持ちは、両者の間に心理的な埋め難い溝を造り出し、互いの扉を固く閉ざさせることになるのだが、アーシェンは潔くそれを事実として認め、諦観をもって受け容れる他はなかった。
みな大陸人で、長が治めるそれなりに由緒ある者たちであって、出自すら詳らかでないアーシェンとは違ったが、同じ異能の者として、多少なり親近感を覚えたのも、あながち不自然なことではなかったであろう。
態度には出さぬものの、アーシェンの彼らへの接し方には、武人たちに対するそれとは違った温もりがあるように他の兵には見え、そのせいか、同じ大陸人にもかかわらず、彼らの
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