アーシェンと遼雲
金糸のような髪、大理石の如く滑らかな肌、葡萄酒の色をした目。
どれをとっても大陸由来のそれではなく、では、どこからやってきたのかと問われれば、その点についても定説はなかった。
アーシェンと名乗る不思議な術式を駆使するその異邦人は、自身の身の上を何一つ語らなかった。
語りたくとも語れなかったのである。
過去の記憶はいっさいなく、魔獣の群れから身を護るため、生来有していたその人智を超えた強い魔力を、本能に従い駆使していたにすぎなかった。
結果的には、それが追いつめられた人族を救い、後に
一方で、
戦乱の世に生を享けた者の常として、両親、家族構成等不明であるし、幼少期をどのように過ごしたかなどもわかっていない。
屈強な兵が束になっても歯が立たない魔獣を、
その剣術は神技と称賛され、
生来の魔力が、
「幼い時分、遊び場にしていた洞窟で拾ったのだ」
「貴殿の武具には、何か得体の知れぬ意思を感じる」と、アーシェンは言った。「偶然拾ったつもりであろうが、剣も鎧も、貴殿に拾われるべくそこにあったのだ」
アーシェンの指摘は、同席した者たちを困惑させたが、
そんな風にして、二人が表舞台へ登場したことにより、魔族の猛威に為す術なく蹂躙されていた人族の間にも、希望が生まれ、それまで奪い合いや殺し合いに明け暮れ、団結することなど知らなかった人族が、初めて一つにまとまり始めたのであった。
二人のもとへは、大陸全土からこぞって兵士が参集したが、顔ぶれは実に多彩であった。
外見はもちろん、思想も、慣習も、文化も、価値観も違う雑多な人々が、各々独自に造り上げた武器を手に集まり、軍勢は大海のようにうねって、その壮観が集った兵たちに改めて大陸の広大さを知らしめるのであった。
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