第4話 尋問 ☆
「さあ、尋問の始まりだ。星宮桜花」
桜花は尋問という不穏な言葉に一瞬目を細めるが、すぐにいつもの表情に戻った。
「私は潔白だからなにをしたって意味はないと思うけど」
「それを決めるのはお前じゃない。それに……」
不自然に言葉を切った百夜を不審に思う桜花だが、次の瞬間。
「……え!?」
桜花の心臓がドクリと不自然に鼓動し、体が内側から火照っていく感覚に襲われた。
「う、あっ……なに……?」
「効いてきたな」
「な……なに、を……」
「なにをしても意味はないと言ったな? だったら精々その言葉を証明して見せろ」
「は、あ……?」
桜花が何かを言う前に百夜の顔が近づき、首筋を撫でるように唇を這わせる。
「はぁ……あ、んっ……!」
生温かい舌の感触に無意識に身体が震え、湧き上がる未知の刺激から逃れるように桜花は体を捻る。しかし固定する手に力が入れられ、逃げ道を塞ぐように百夜の長い脚が桜花を左右から挟み込む。
「あれほど吠えていた威勢はどこへ行った? まだ何にもしていないだろう」
百夜の色気を帯びた吐息と音がやけに耳元で響いた。男性特有の低い声が桜花の鼓膜を揺らす。たったそれだけだというのに桜花は脳を侵食されているような心地になる。
全身がゾクゾクと震え、自分の身体の変化に違和感を感じた。こんな急激に感覚が鋭くなるなど絶対におかしい。
そこまで考えて桜花は親友に頼まれて書いた小説を思い出す。親友の欲望を詰め込まされ、書き上げたのは所謂官能小説と呼ばれるもので、その中に身体の感度を上げる薬があった。
その時の反応と今の自分の身体の変化が重なっていると考えた瞬間――。
「ひゃあぁぁ……!!!」
ぐちゃりという音と同時にぬめった感触が桜花の耳を襲う。考え事をしていた桜花にとってそれは耐え難く、自分も知らない甘く高い声が口から溢れた。
(なに、今の声……)
自分も知らない声に桜花は思わず目を見張る。その瞳には得体の知れないものへの僅かな恐怖が滲んでいた。
桜花に追い討ちをかけるように、百夜はわざとらしく音を立ててぬちゅぬちゅと耳をむしゃぶりながら、時々耳の縁を甘噛みし、柔らかい感触とは別のピリリとした刺激に桜花の身体が小刻みに震える。
「随分と感度がいいな。耳が弱いのか?」
「う、る……さ……ひゃうぅっ……!」
「図星か。耳だけでこれとは……これから先はどうなることやら」
「ふ、ふざけ……び、媚薬っ、使ったくせに……! この……へんた、い……!!!」
「媚薬のことは知っているんだな。やはりこういう知識はあるのかそれとも……ネズミどもに既に開発されているのか?」
「や……ぁぁぁ……!」
百夜は遠回しに言っているのだ。淫乱だと。屈辱に顔を歪ませるが、その度に言葉と舌で嬲られ、時折百夜の指が首筋を優しく撫でられて桜花は悶える。
その官能的な刺激に、桜花は身体を震わせ必死に否定しようとするが、それが逆に羞恥心を煽り、益々感度が上がっていく。
「い……やだぁ……あぁ、んん……」
「いや? その割にはお前のここは……膨れているみたいだが?」
「……え、あ……?」
いつの間に外されていたのか、前が肌け下着に隠された乳房が露わになっていた。異性に晒されている肌は体温の上昇によってほんのりと色づいているという事実に、桜花は己が卑猥に感じて逃げるように百夜から顔を背ける。
「どうしたそんなに赤くなって。やめてほしいなら素直に話せばいいだけだぞ」
「だ、から、私は……無実……」
その答えが気に入らなかったのか、百夜は一瞬目を細めた後、桜花の乳房をクシャリと掴む。男によって変形した膨らみは下着に遮られているにも関わらず、しっとりと百夜の手に吸いつく。
「……本当に強情な女だな。だったらその強情すら壊して事実しか話せなくなるまで身体に聞くだけだ」
桜花はその冷たい色気の帯びた声に背筋を凍らせる。これほど甘さを纏った残酷な言葉など桜花は知らない。しかし発情した身体はそれさえも快感として受け入れ、さらに桜花を追い詰める。
「ん、はあ……あぁんっっ!」
上から乳輪を撫でられ愛撫によって淫らに主張を始めていた頂点に指が触れた時、桜花の腰が否応なしに跳ね上がる。
布越しであるというのにこれほど反応しては直に触れた時どうなってしまうのか。
「気持ちよさそうだな……俺はまだ直接触ってはいないんだが…………」
――淫乱だ。
そう囁かれた気がして更に熱が高まる。逃げるどころか抵抗すら虚しくなっていた。
耳の縁から耳朶、首筋へと桜花の身体をなぞるように舌を這わせ、卑猥な音を立てながら鎖骨を舐める。その間、チラリと上目遣いで見やる百夜と極力視線を合わせないよう、桜花は必死に横を向いて堪える。
「ん……あ、はぁ……やぁ……ふ、ぅん……!」
不意に胸を揉みしだいていた百夜の手が背中に回され、ブラのホックが外された。
「……なっ!? な……なにを……!」
「これは邪魔だろう。それよりも……」
百夜はあっさりと言いながら正面の繋ぎも外し、そのまま桜花の身体からずるりとブラジャーを取り除き床に放った。
それと同時にたわわな胸の乳輪が外気に晒される。
「はぁっ……!」
媚薬によって高められた身体は僅かな温度の変化さえ感じ取り、桜花の脳に快感を伝える。
百夜は桜花の変化を見逃さず、そのまま触れるか触れないか程度にゆっくりと乳輪をなぞる。そのごく僅かな刺激からも快楽を得ようと身体が健気に動く。
「……お前、少し感じすぎじゃないのか? いくらなんでも反応が良すぎる」
「う、るさいっ……! このっ……変態野郎……!」
「変態……ねえ? そういうお前は……」
「ああっ……!」
ぷっくりと熟れた乳首を親指と人差し指で軽くつまんだ。すっかり充血した果実からは快楽を伝える稲妻が走り、桜花の脳を侵食する。
「ここをいじられて感じているだろうが」
「ひゃうぁっ……そ、それ……だめぇ……!」
百夜はコリコリと乳首を揺らし、頂点を引っ掻き、時々そっと息を吹きかける。それだけで強烈な快楽が身体を突き抜け、桜花に未知の世界を教えていた。
「ひ、どい……こ、こんな……の……ぅあ……!」
「ひどい? やめてほしければさっさと吐けばいいだけだ。それから誤解しないように言っておくが、俺はお前に一切の情はない。これはあくまでも尋問だからな。女相手にはこれ以上ないやり方だろう」
「……っ!」
あまりにも屈辱だった。その程度のこと、桜花だって理解している。そもそも桜花と百夜は今日が初対面なのだ。いくらメディアで見かけると言っても何かを期待しているわけでもましてや心を求めているわけでもない。
しかし、百夜の言葉は桜花の心を容赦なく抉った。だが傷つく以上に、猛烈な怒りが溢れ出す。
「……」
「どうした、いきなり黙って。流石にここまで言われれば観念するだろう。いい加減素直になれ。そうすればお前は解放されるんだぞ」
百夜は様子の変わった桜花を見やり、再度毒を吹き込もうと桜花の耳元に唇を寄せた――
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