第6話

元旦当日。

天気は晴れ。

オレは、早朝からそわそわと落ち着かなかった。

あのコたちが、何時に初詣に行くのかわからない以上、現地で待つしかないのはわかっている。


ただし、あまり早くから行ってずっとうろうろしているのは、明らかに不審者と思われてしまう。

結果の吉凶はわからないが、行動の予測をしてみることにした。

 

サトルからの情報から考えると彼女たちは、ちゃんと明るくなってから初詣に行くのだろう。

そうしたらどんなに早くても、7時ごろはきっとまだ家にいる。

女性が外出の準備をするのにどのくらいの時間がかかるのか、彼女ナシの俺には想像もつかない。

仕方がないので、実家にいたころに母親が身支度にどのくらいの時間をかけていたかを遠い記憶から呼び起こして考えてみた。

外出準備、彼女たちの家から待ち合わせ場所(これは最寄り駅だとサトルが教えてくれた)までの移動時間、そこから神社までの移動時間。

そして、結論づけた。

(おそらく10時より前に行くことはないだろう)

そう結論づけたオレは、雑煮がわりのインスタントラーメンを鍋で煮て、卵をひとつ割りいれた。

そして、普段はしまいっぱなしの丼にうつして、気分だけでもと正月気分を味わった。

 

そうこうしているうちに、ちょうどいいころ合いになったので、ダウンジャケットを着て、マフラーを巻いて神社へと出かけた。

そこまで寒くはなかったけれど、読みが外れた場合に何時間待つことになるかわからなかったからだ。


神社はこのあたりでは大きめなうえに天気も良かったからか、初詣に来ている人は結構多い。

そのほとんどが家族連れで、たまに友人同士と思われるグループもいた。

ちらほらとだがカップルで来ている人達もいる。

オレはとりあえず手水舎で手を清め、いつでもお参りの列に並べるよう準備をしてから参道を見通せる、表からは少しかげになったsおこまでを見つけ、そこに陣取ることにした。

予想の10時を30分ほど過ぎたころ、

(来た!)

遠目にも華やかな少女たち4人。

その左端には、ボブヘアの彼女がいた。

急激に動悸が高まる。

(落ち着け、落ち着け、オレ!)

 

少女たちは賑やかにしゃべり、笑いあいながら鳥居をくぐって手を清め、お参りの列の最後尾にならんだ。

かくれているオレに気づいた様子は、ない。

そのころにはさらにお参りの人も多くなっていたので、オレは2人ほど間に入れて彼女のうしろの場所を確保した。

そして列が進むのを利用し、少しずつ彼女の真後ろに近づく。

よし!真後ろ確保!

そして後ろから押されてよろけたふりをして彼女にぶつかった。

よし!うまくいった!

 

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