第5話

翌日、オレはサトルに昨日のことを話した。

「おまえ、バカじゃん。せっかくのチャンスを」

サトルがあきれ顔で言う。

「バカなのはオレがいちばんわかってる。これでも落ち込んでるんだ」

「おまえらしいといえばらしいが。一応言っておくが、キャンパス内で探して、そのミニタオル返そうとか考えるなよ」

「なんで?!」

「町かどで偶然、同じ場所で雨宿りしただけの『名前も知らない見知らぬ人』から、急にキャンパス内でミニタオル返されたら、それこそストーカーを疑われるだろう」

「うう」

オレは頭をかかえた。

「ま、頑張れや。それより卒論どうなってるんだ?」

「急に現実に戻さないでくれよ。卒論は資料は読み終えて、今から下書きといったところ。サトルは?」

「俺は下書き終わって、教授に第一チェックしてもらってるとこ」

「さすがだな」

それからしばらくは卒論とバイトに忙しく、彼女の居住地区を通り過ぎる時間も、ほとんど作れなくなっていた。

ただ彼女への想いは、相変わらず持ち続けていた。

 

年末が迫ってきたある日、サトルがオレの下宿にやってきた。

「おい。いい話を聞いたぞ」

「なんの?」

「あのコだよ。この正月に友達と一緒に、○×神社に初もうでに行くらしい」

「ほんとか?というより、そんな情報どこから?」

「俺のカノジョよ」

「カノジョって、どのコ?」

「どのコとは人聞きが悪い。最初におまえがあのコを見かけたときに、一緒に女の子たちがいただろう?あの中の子よ。ポニーテールの子」

「サトルが、一番美人って言ってた子か?」

「そう。言っておくが、アイツからコクってきたんだからな」

「おまえにゃ勝てないな。で、初詣だって?」

「ああ。あのとき一緒にいた4人な、同じ学部で仲良くなって遊びに行くのも、いつも一緒らしい。で、そのいつものメンバーで、初詣に行こうという計画らしい」

「初詣って夜中だろう?そんな時間に、女の子4人で?そんなこと親が許すのか?」

「なんのかんの言っても、結構親が厳しいらしくて、さすがに夜中には往かないんだって」

「そうか…くわしい時間は、決まってないんだな」

「アイツらの間では決まっているとは思うが、一緒に行かない俺が聞くのは変だろ?」

「そうかもしれないが。サトルは彼女とは初詣行かないのか?」

「まずは女性たちだけで行ってもらって、そのあと俺と初詣デートする予定になってる」

「さすがだよ。だけど、時間がわからないんじゃ、まちぶせするしかないというわけか」

「そういうこと。今度こそ、チャンスをフイにするなよ。健闘を祈る」

サトルは俺の肩をポンと一つたたくと帰っていった。

 

 

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