エピソード2 翌日の通勤ラッシュ

「あ!おはようございます。今日も相変わらず混んでますね。身動きを取るのもやっとで」


「そうですね、車内の方が熱いです。夏も終わりに近づいていますから、朝と夕方は外の方が涼しいですよね」


「あぁ~・・・、あ、いえ。今日は起きるのが遅かったのかな~、って貴方の頭を見ながら思いまして。「なんで?」と言われますと、その、寝癖がついていたものですから」


「はい、右後頭部の・・・そこです。・・・さすがに手で押さえただけだと元に戻ってしまいますね。リュックの中に髪の毛を整えるジェルや櫛が入っているのですが、さすがにここでは・・・」


「そうですね。車内にいる間押さえておくだけでも少しは違うと思います」


「ん?このバックですか?中には水着が入ってます。今日今年最後の水泳の授業があるので」


「「羨ましい」?N高にプールは・・・あ、ないんですね。私はそちらの方が羨ましいです」


「実は私、泳ぐのがあまり得意ではなくて。クロールで25メートルを泳ぎ切るのが精一杯なんです。それが2本、3本と続くと体力がもたなくて。だから水泳の授業がなければいいのにって思うんです」


「「プールの授業のない学校を選べばよかったのに」って言われるとそうなんですよね。高校選ぶときによく見ておけばよかったと少し後悔しています」


「テストの内容ですか?クロールが25メートルと50メートル。平泳ぎが25メートルの3種目です。途中で足をついてもいいのですが、評価はゴールまでのタイムで決まっているみたいで・・・。去年はこれが足を引っ張ってしまって、体育の評価が悪かったんですよね。あははぁっ」


「「冷たい水の中に入れるだけマシ」ですか?貴方の学校の方ではこの時期はなにをしているのですか?」


「マラソンの練習?・・・校内マラソンがあるんですか?ちなみに距離は・・・。5キロ!女子も同じ距離走るのですか!?」


「私からするとどちらも地獄です。マラソンなんて走ったら最後尾を1人お腹抱えて走っているのが容易に想像できますよ。ちなみにその校内マラソンは学年別に走るのですか」


「あ、3学年同時スタートで男女だけ別れているんですね。それはいつ行われるのですか?・・・再来週の金曜日、そうなんですね」


「あ、いえ。もし平日ではないのなら、貴方の走る姿を応援しに行きたいなと考えたのですが。平日なら仕方ないですよね。私も学校休んで行くわけにはいきませんから」


「少し先ですが、マラソン頑張ってください。・・・はい、私も今日のテスト頑張ってっ」


「・・・ご、ごめんなさい、電車が揺れてもたれ掛かるような体勢になってしまって。すぐに退きますね」


「・・・駅、着いちゃいますね。なんだかいつもより早かった気がします。貴方と話していたからですかね?」


「・・・もう少しお話をしていたかったです。昨晩のようにアプリでメッセージを送り合うことは家に居てもできます。貴方の好きな物や趣味など教えてもらうことも・・・」


「だけど私は、直接貴方に会ってこうして顔を見ながらお話したいです。だから・・・明日もこうして会ってくれますか」


「本当ですか!?嬉しいです。・・・放課後の予定がなければ今日の帰りもお話出来たんですけどね。少し残念です・・・ドア、開いちゃいましたね。はい、また明日」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

電車内で他校の生徒が告白してきたのだが! 加藤 忍 @shimokawa8810

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ