『嬉し泣き涙』

矢田誠一

第1話

  今日、10年ぶりくらいに絵が売れた。

  お金を出してくれた人が居た。

  俺の絵を持ってった人は、

  沢山居るが、

  お金を出してくれた人は、

  久しぶりだ。

  今、派遣業と障害年金で、飯食って、

  そして足らない時、お袋に貰って、

  生計立ててた。

  絵は、金も、時間も、技術もセンスもいる。

  派遣業してて時間ねえ。

  車買って貰いはしたが、

  維持費は、自分。

  自転車で40歳まで過ごしてた。

  ほぼほぼ。

  嫁の前の嫁の腹の子が流れ、

  そいつ、タバコも酒ものんでた癖に、

  俺が車の持ってねえからって言って、

  子が流れた後、

  出てった。

  女恐くなったよ。

  自分から好きって言っておいて、

  風向き変わると出てく女が恐い。

  車買ったよ。

  仕事再開して、6、7年になるかなあ・・・

  もう、絵描く暇無いけど、一年に何作品か

  作って、美展出してる。

  最近は、賞も決まらない。

  そんな俺に、久々に、お金を出してくれた

  社長。

  自画像を描かせて貰った。

  社長のしんどさが伝わって来る。

  社長のお金使うと・・・

  もう、母親に言えば、毎日の様に怒られる。

  そりゃあ、出てった女よりは、

  良いが、

  絵やって、

  小説書いて、

  派遣社員やって、

  毎日がづたぼろ。

  早く、

  生まれて早く夢追えば、

  こんな事にならなかったかなあ・・って、

  毎日思う。

  俺の絵の道を諦めさせた母親を恨んだ。

  苦しい時は。

  コロナ禍、

  露店が出せない。

  インターネットじゃ、

  まだ、絵は売れない。

  そんな中、

  社長が出してくれたお金。

  泣いたよ。

  久しぶりに。

  嬉し涙で。

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『嬉し泣き涙』 矢田誠一 @yattyann

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