第4話 朝 齊藤京子

ひどい夢を見た。内容もぼんやりと覚えている。「あぁ、またこの夢か。」そんなことを思いながら遊びに行くために準備をする。現在時刻7時。ここから約束した場所までそこそこ距離がある。何より久しぶりにみんなと集まって遊ぶのだ。いい加減な格好をして会いたくない。


寝ぼけながらも洗面所に向かい顔を洗って髪を溶かす。愛も変わらず私の髪は癖っ毛だ。この髪を整えるのにいつも一苦労している。


・・・・・・・


セットまで終わらせて朝ごはんを食べる。と言っても朝ごはんは基本食べないのでコーヒーを一杯飲んで済ませている。


私は今年大学生になった。今は一人暮らしをしている。父は実家に戻り祖父母と暮らしている。高校までは学校近くのアパートで住んでいたのだが、私が一人暮らしをするにあたってアパートから退居したというわけだ。地元で仕事も見つけていたのでお金の問題は特にないらしい。祖父もまだまだ現役と言って仕事を辞めないらしい。孫ながらそろそろ体を労ってゆるりと老後生活を送ってもらいたいものだ。


生活が一変してからだいぶ経つが、この生活になってからこそ父には頭が上がらない。慣れない家事も一緒に頑張ってこなそうとしてくれていたし、思春期の娘に気を遣ってくれていたのだと思う。


ピロピロ♪


携帯が鳴る。メッセージアプリの通知だろう。確認すると思った通りだった。送り先は……父親からだ。


 「おはよう。」


 『おはよ』


 「今日は何か予定があるのか?」


 『友達と遊びに行ってくる』


 「そうか。気をつけて」


 『ありがと』


 「それはそうと、次はいつこっちに帰ってこれるんだ?」


 『わからない、長期休みとバイトがない時が重ならないと帰れって来れない』


 「わかったら教えてくれ。おじいちゃんもおばあちゃんも会いたがってるから。」


 『りょーかい』


おじいちゃんおばあちゃんが会いたがってる。か。確かに全く会いに行っていなかったからそう言われるのも無理もないか。今年の長期休暇は帰ることにしよう。


そろそろ家を出ないと遅刻してしまう。私は家全体の電気を消したのを確認した後目的地へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る